2023.8.31

関東大震災から100年 求められる自然災害への“強さ”

未曽有の大災害から一世紀 日本は自然災害に強くなったか

明治以降の日本において最大規模と言われる関東大震災。関東地震によって引き起こされた大規模火災や建物倒壊、また、土砂崩れや津波、さらにはインフラの断絶などで多くの人が命を落とし、家を失った。あれから100年、大地震や台風・豪雨、津波などさまざまな自然災害が多発する今、災害に強い住まいづくり・まちづくりが強く求められている。

1923年の9月、関東地震が発生した。相模湾北西部を震源とする巨大地震は190万人が被災、死者・行方不明者は推定10万5000人、建物被害は全壊10万9000棟、全焼約21万2000棟と、近代日本における最大規模の被害をもたらした。東京府の下町を中心に大規模な火災が発生し多くの人が亡くなったが、震源地の神奈川県では地震の揺れによる建物被害、液状化やがけ崩れなど大きな被害が発生、沿岸部では津波の被害も大きかった。さらに電信、電話、瓦斯といったインフラの断絶、電車など交通網も全面的にストップした。東京市内の約6割の家屋が罹災したことから集団避難地が160カ所に及び、建設された仮設住宅は101カ所、収容者数8万6500超であったという。

この関東大震災を踏まえ建物の耐震化や不燃化をはじめ、大規模な自然災害への対策が進められてきた。兵庫県南部地震(1995年)、東北地方太平洋沖地震(2011年)など多くの地震が発生、都度、さまざまな課題を社会に突き付け、その対策が進められてきた。例えば、兵庫県南部地震では木造住宅の倒壊による圧死が多かったことが特徴で住宅の耐震性があらためてクローズアップ、東北地方太平洋沖地震は死者の9割が溺死と津波の被害が大きくその対策が進んだほか、原子力発電所の被災というこれまでにない深刻な事態も引き起こした。

自然災害は地震だけではない。特に近年クローズアップされているのが気候変動による台風や集中豪雨などの被害だ。台風が大型化し、進路が変わったことでこれまで台風が珍しかった地域でも大きな被害が発生するようになっている。また、集中豪雨も頻繁に起こるようになり、内水氾濫の被害が多発している。今年も台風2号とそれに伴う前線の活発化による大雨により西日本から東日本にかけて大雨となり、1時間降水量が観測史上一位を更新した地点や、降り始めからの雨量が例年の2倍を超えた地点もあった。以降も7月上旬にかけて梅雨前線が活発化、全国各地で記録的な大雨となり、土砂災害や河川氾濫が相次いだ。

巨大地震や豪雨
自然災害の被害は拡大?

政府の地震調査委員会は、今後30年以内に首都直下型地震や南海トラフ地震が発生する確率は7~8割と予測している。広域で発生する南海トラフ地震では死者32万3000人、建物の全壊・焼失は238万棟余りとみられる。現在、国はその被害想定の見直しを進めているが、都市部への人口集中などを考えると被害が拡大する可能性もあろう。

また、先に環境省が行ったシミュレーションによると、関東甲信地方や東北地方を中心に広範囲で記録的な大雨となった「令和元年 東日本台風」が、もし地球温暖化が進行した+4℃の将来に発生したら、累積雨量は平均19.8%増、河川の最大流用は平均23%上昇するという。浸水被害の発生地域がさらに拡大することは間違いない。

こうした巨大地震や豪雨による災害は、揺れや浸水といった直接的な被害だけではない。火災や津波、土砂崩れなど、また、電気やガス、水道などの生活インフラの断絶をも引き起こす。さらにこうした災害が広域で起こる可能性さえあるのだ。

関東地震では、それぞれの地域で、さまざまな被害が発生し多くの命が失われた。その事実を思い出し、100年が経過するなかで、本当に日本は自然災害に強くなったのかを問い直したい。

耐震、耐火、耐浸水、耐雪など自然災害に強く、電気や水道が断たれても暮らし続けられる、そんな命と生活を守る家づくり・まちづくりが強く求められている。