浸水被害1m以下が建築対応の一応の目安 より大きな浸水深に対し段階的対策が妥当
建築物の浸水対策の費用対効果を試算
地球規模での気候変動、温暖化の影響により、我が国においても台風や集中豪雨などにより、大きな洪水被害が発生する頻度がこれまでになく高まっている。まちづくりのレベルで、また、住宅・建物のレベルでどのような対策が必要なのか。国土技術政策総合研究所 住宅研究部の木内望 部長に聞いた。
──頻発する台風、豪雨などにより、どのような水害のリスクが高まっているのでしょうか。
地球温暖化の影響により台風や集中豪雨の頻度は増えていますが、水害統計調査において、長期トレンドで見れば、水害による浸水面積も、被災家屋の棟数も、大きく減少傾向にあります。理由は河川整備や下水道整備などの治水工事が進展したためです。
水害統計調査から「被災家屋棟数」の推移をみると、1990年代には5万棟/年を超える被害を生じた年が多くありましたが、2005年以降は4万棟/年以下の年が大半を占めるまで減少しています。川の水が堤防から溢れる、あるいはそれによって川の堤防が破堤した場合などに起こる外水被害については、観測史上最多の台風が上陸した2004年の被災家屋棟数が9万戸を超え突出していますが、それ以降は2018年まで概ね1万~3万棟/年の被害にとどまっています。2018年の平成30年7月豪雨(西日本豪雨)、2019年の令和元年東日本台風などによる被災家屋棟数の増加は、外水被害に加え、市街地内を流れる側溝や排水路、下水道などから水が溢れる内水被害ともにみられますが、この期間全体を通して極端なものとは映りません。ただ、全壊・流出または半壊といった大きな家屋被害がこの両年で増えています。床上1.0m以上の被害も加えて推移を見ると、外水被害・内水被害に占めるその割合が、2010年代の特に後半にかけて急激に増えていることがわかります。治水工事が進み、長期トレンドでは水害による被害を抑えられてはいますが、河川の堤防などの整備が進むことで、その周辺に住む人は増えていきます。想定を超える急激な雨の降り方などが影響し、堤防の一部が壊れ一気に水が溢れ出し、全壊・流出または半壊といった大きな家屋被害が増え、床上1.0m以上の被害の割合も増大しているのではないかと見ています。
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