【土砂災害】災害を機に進められる法整備 個人、事業者ごとの対策も急がれる

地震や豪雨で頻発するがけ崩れや地すべり

度重なる土砂災害に、政府は危険区域の設定などの法整備を進めてきた。一方で、土砂災害は発生したら十分な避難時間を確保できない。被害が発生しやすい地域においては個人、事業者レベルでの防災、減災への取り組みが求められる。

地震や豪雨が引き起こす被害のひとつが土砂災害だ。土砂災害は山やがけが崩れ、くずれた土砂が雨水や川の水と混じって流れ出ることで建物や人に被害を与えるものだ。山や谷の土・石・砂などが崩れ、水と混じって一気に流れ出る「土石流」、比較的緩い傾きの斜面が広範囲にわたって滑り落ちる「地すべり」、急な斜面が突然崩れ落ちる「がけ崩れ」などに分類することができる。地震や豪雨のたびに全国各地で発生し大きな被害を生んでいる。

静岡県熱海市では開発行為による盛土の崩落で大きな被害が発生した(写真:静岡県提供)

内閣府によると、関東地震では主に神奈川県などで多くの崩落が発生し、大洞山(静岡県駿東郡)の崩壊による白糸川沿いの岩屑なだれは、片浦村(現小田原市)の根府川集落を埋め、住民289名の命を奪った。

1999年には、中国地方に梅雨前線の影響による集中豪雨が襲い、広島県の広島市や呉市などで土石流やがけ崩れが発生した。県内では、合わせて139カ所で土石流が発生、186カ所で崖崩れが起き、全壊した家屋が69棟、半壊した家屋が74棟、死者は24人にのぼった。もともと平地が少ない広島市や呉市では、山裾から斜面に向かって宅地開発が行われており、被害の多くがそうした山沿いの新興住宅地で起きる都市型の土砂災害となった。

広島県は、地質的な特徴からも土砂災害が発生しやすく、14年にも大規模な災害が起きている。大雨の影響で8月19日に発生した土砂災害は、深夜に発災したことから多くの住民が逃げ遅れ73名の死者を出した。山裾を埋めるように広がる住宅地の直上で発生した土石流がエリアを呑み込み、住宅123棟が全壊、82棟が半壊した。最大の被害を出した安佐南区八木地区3丁目の渓流の下では、この土砂災害による死者の約半数、35名が亡くなっている。

記憶に新しいのが、21年7月に静岡県熱海市で大雨に伴い発生した土石流災害だ。伊豆山から推定10万㎥の土砂が、2㎞先の海まで流れ込み、住家被害は128棟、死者は26人に達した。この災害で注目を浴びたのが、不法な盛土の存在だ。土石流の起点に存在した、開発行為に基づく盛土の崩落が原因とみられたが、開発をした以前の所有者が建設残土を申請以上に盛土していたことが判明した。

災害を契機に法律を見直し
調査や区域の設定を求める


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