“ドミサイド”の蛮行/山本理顕氏の「地域社会圏」
“ドミサイド”の蛮行
“ドミサイド”という言葉が盛んに言われるようになった。直接的にはイスラエル軍とハマス組織との戦争で、ガザ地区で人命とともに大量の住宅破壊、焼き打ちが行われていることから、ジェノサイド(集団殺害)と並んで、ラテン語で家の意の“ドムス”からの造語だ。だがドミサイドはガザ地区ばかりではない。ロシア―ウクライナ戦争、シリア内戦などでもそうだ。大量の住宅・施設破壊が行われている。破壊・焼き打ちされたガレキが広がる写真やTV画面を見るにつけ、戦争という愚行に怒りがこみあげてくる。
そして我々、日本人もこのドミサイドの経験をいくつも持つ。戦争では、太平洋戦争での米軍による広島、長崎での原爆投下による凄惨な街の姿や1945年3月10日の大空襲による東京など主要都市の破壊などがそうだが、さらにあえて言うなら災害大国としての被災の実相もドミサイドではないかと思う。100年前の関東大震災がそうだし、29年前の阪神淡路大震災、13年前の東日本大震災、そして今年元日の能登半島地震―等々、天災による住宅・建物破壊の残酷をどれだけ目の当たりにしてきたことか。天や地や海の神を恨みたくなろうというものだ。神も仏もないものか―と。
我々は、災害があるたびに、死者・行方不明者の数を数え、倒壊・半壊の数字にタメ息をつく。だが、ドミサイドの言葉が唱えられ、それを犯罪とする声が高まってきている今、天災についても詳細にコトを調べるとこれは人災ではないか、との責任追求の論も出てきそうな気がする。神も仏もいない、のではなく、神や仏様が、いつまで同じドミサイドの非業をお前たちは繰り返しているのか、との怒りの表明であるようにも思うのだ。ドミサイドの言葉を契機に、メディアでもこのところ住宅のあり方、地域の姿、そして住産業の責務について意見を交す場面もふえている。「住宅って何だろう」の問いかけさえも出る。
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