大和ハウス工業、戸建て事業拡大に分譲強化、高級商品投入も
2027年に年間1万棟販売を目標
国内戸建住宅事業の立て直しのため新たな戦略を進めている。
一定の需要がある注文住宅の棟数を維持しつつ、分譲住宅の販売棟数を拡大し、2027年度に年間1万棟販売を目指す。
大和ハウス工業が国内戸建住宅事業の立て直しを図っている。米国での戸建住宅事業は、右肩上がりの状況が続く一方、国内での戸建住宅事業は市場の冷え込みを背景に厳しい状況が続く。23年度の国内住宅事業は請負3424棟、分譲1760棟、営業利益は36億円にとどまった。今後は国内での収益回復に向け、特に分譲住宅に力を入れ、25年度には請負3000棟、分譲4000棟。27年度には請負3000棟、分譲7000棟、計1万棟の販売棟数達成を目指す。永瀬俊哉 住宅事業本部長は「5年前までは販売棟数1万棟を維持していたが、この5年間で半減してしまった。大和ハウス単体の住宅事業は赤字が続いている。収益拡大に向け、特に分譲住宅事業を強化する。生産性を高めながらコストを抑え、今までビルダーを検討していた方々にも当社の商品を提案し、販売棟数の拡大を図っていきたい」と戦略を説明した。
生産性向上と高収益化に向け、特に強化するのが、分譲と規格・セミオーダー住宅だ。近年は、分譲住宅シフトを打ち出し、体制づくりに着手している。分譲設計に特化した「まちなみ設計」を全国の各事業所に配置。分譲設計の一元化を進め、地域によってばらつきのある分譲物件を効率的に対応する体制を整えた。この仕組みは社内の人員配置の効率化にもつながっている。社員1人あたりの売上高は、現在住宅部門が1番低いという。そのため、昨年1年間で住宅設計の人員約100人をマンション、非住宅など生産性の高い部門に移した。部門の人員を減らしながら、効率的に分譲設計のノウハウを集約する狙いだ。これに伴い、分譲住宅の施工はすべてグループ会社の大和ランテックに依頼する。施工を任せ、本社が販売に専念する仕組みを作ることで、品質向上と生産性向上を図る。この新たな体制を23年10月に九州、山口地区で開始。24年4月から東日本、同7月から西日本へと広げている。
分譲から木造住宅を強化
脱炭素化に向けて各社が木造商品に力を入れる中、同社も分譲事業の分野から木造住宅を強化していく考えだ。23年10月から木造分譲商品「Comfort Wood」の建設を推進。同商品の第1号分譲地である兵庫県姫路市の「セキュレア飾磨区城南町」全4棟は6月上旬から販売開始し、1週間ほどで2棟契約に至った。各地で木造分譲住宅の建設が進んでおり、24年4月時点で118棟が、9月には393棟になる見込み。各地の売れ行きをみながら、さらにシェアを広げていく方針だ。また、一部で飯田GH、オープンハウスグループなど、大手戸建分譲住宅メーカーに設計、施工を依頼するなど、様々な形でより合理的で、収益性の高い分譲事業のあり方を模索している。
分譲住宅と高額注文住宅のあいだも充実させる。7月から新たに規格商品・セミオーダー商品の住まいを「Smart Made Housing(スマートメイドハウジング)」としてリブランディングし、提供をスタートした。家づくりを効率的に行うことで、コストを節約し、統一単価を実現。良質でリーズナブルな住宅を提供する。間取り1300プラン、外壁13、インテリア10のパッケージから自由に選択できるようにした。分譲住宅と合わせて、住宅一次取得者へのアプローチを強化する。25年度、請負3000棟のうち、スマートメイドハウジングを7割まで高めていく計画だ。
富裕層向け商品充実で注文棟数維持
新たな富裕層向け商品「xevoΣ PREMIUM SMILE Edition(ジーヴォシグマプレミアム スマイルエディション)」と「PREMIUM GranWood SMILE Edition(プレミアムグランウッド スマイルエディション)」も発表した。創業70周年の記念商品で、従来のブランド鉄骨住宅xevoΣ PREMIUM、木造住宅PREMIUM GranWoodに同社の最新蓄電システム、全館空調&第1種熱交換型換気システムなど最新のフルスペック仕様を搭載した。富裕層向けの商品は変わらぬ需要があるため、その部分を充実させ、注文住宅の棟数を維持する狙いがある。
両商品とも販売価格は175万円~/坪(税込)。販売エリアは沖縄県を除く全国で、年間販売目標を各50棟、20棟とした。永瀬本部長は、最高級の注文戸建ブランド「MARE」に次ぐ「工場生産の商品としては最上位」のブランドと説明。顧客エリアは富裕層が一定数いる1都3県、中部、関西、福岡を想定している。21年4月に発表した都市部の富裕層向け最高級戸建住宅商品「MARE」は、発売以降売上が堅調だという。坪単価は200万円から、平均単価は約2・3億円という高額にもかかわらず、これまでの総契約棟数は85棟、総売上額は193億円にも上った。近年は、国内の富裕層に加え、円安を背景に海外の投資家が投資目的で購入する例も多いという。
また、住宅の施工中に現場監督が施主に写真をつけて工事の様子を毎日報告、連絡するサービスにも取り組む。15年ほど前から一部支店で始めていたこのサービスを改めて戸建住宅全体の標準とし、顧客の満足度向上、さらに紹介につなげる。
人員を効率的に配置して生産性を高め、分譲住宅規格・セミオーダー住宅の比率を高めることで、大和ハウス単体の住宅事業黒字化を目指す。
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