2023.8.1

空き家対策モデル事業110件が採択

発生抑制・活用・除去に新たな提案相次ぐ

国土交通省が令和5年度「空家対策モデル事業」を採択した。空き家対策を加速させることが目的で、新たなビジネスモデルの構築、新たなライフスタイルに対応する活用など、前年度を大きく上回る計110件が選定された。

空家対策モデル事業」は、NPOや民間事業者などの創意工夫によるモデル性の高い空き家の活用などに係る調査・検討等や改修工事・除去工事等を支援する制度。その成果の全国展開を図り、空き家対策を加速させることが目的だ。

今年4月27日~6月2日に募集が行われ、計150件の応募のなかから、計110件が選定された。令和4年度事業の応募55件、採択48件を大きく上回るものであり、空き家問題が深刻度を増すと同時に、その発生抑制や利活用の取り組みが急速に広がりつつあることがうかがえる。

募集は3つのテーマのいずれかに該当する取り組みを求めた。「空き家に関する相談対応の充実や空き家の発生抑制に資する官民連携体制の構築等」は、相談窓口などの空き家対策の執行体制整備が必要な地域において、多様な主体による連携体制の構築、相談・普及啓発などの取り組み実施に係る提案を求めるもので、56件の応募があり44件が採択された。多様な主体と連携する提案、新たに法整備された空家等管理活用支援法人の指定を目指す提案などが高く評価されたという。

「空き家の活用等に資するスタートアップなど新たなビジネスモデルの構築等」は、異業種間の連携やデジタル技術の活用などにより、新たなビジネスモデルのスタートアップに係る取り組みを求めるもの。特にファイナンス・収益性の視点に対する工夫が行き届いた新たなビジネスモデル構築に係る提案が高く評価された。

また、「新たなライフスタイルや居住ニーズに対応した空家の活用等」は、移住や二拠点居住などの新たなライフスタイルや居住ニーズなどに対応した多様な用途への活用・流通促進に資する提案を求めた。移住を促すための創意工夫、また、新たなニーズに対応するための利活用手法の構築に係る提案が多かったという。

空き家ビジネスが新マーケットとして確立

空き家問題が深刻度を増すなか、その対策が急ピッチで進められている。先には改正空き家特措法が成立し、空き家の活用拡大、管理の確保、特定空家等の除却など、空き家対策が総合的に強化される。

空き家はビジネスになりにくいと指摘されてきた。地域に散在し、所有者が積極的に対策を考えない放置空家が多く、一戸一戸状態が異なりリフォームに手間がかかる、また、用途変更しようにも立地によっては法規制がネックとなることなどが理由だ。しかし、ストックビジネスの広がりといった市場環境の変化、空き家問題に対する国や自治体の対策の加速などを背景に状況は大きく変わってきた。

今回、「空家対策モデル事業」に前年度を大きく上回る応募があったことは、そうした変化を裏付けていよう。相次ぐ新ビジネスモデルの提案などは、空き家対策が一つのビジネス領域として確立しつつあることをうかがわせる。

「新たなライフスタイルや居住ニーズに対応した空き家の活用等」の採択提案

特定非営利活動法人aisa
移住定住の促進と空き家対策の両立を目的に、空き家等を活用したシェアハウスや宿泊施設をつくることで、お試し移住体験やその後の中期滞在へとつなげる。
特非営利活動法人あきや・まちづくり・せいしん空き家化の予防、空き家所有者等に寄り添った住まい相談・適正管理、学生や子育て世帯の住まい・高齢者の居場所づくりを目的に、NPOや住民福祉協議会、民間事業者、専門家が連携し、相談会の開催や人材育成等を行う。
NPO法人あまみ空き家ラボ空き家の利活用促進と多様なしま暮らしの実現を目的に、奄美群島各所に立地する空き家を活用した様々なタイプの住まいや滞在型施設を「サブスクリプション」を活用してシェアリング、利用者がNPOとともに地域課題を解決する。
特定非営利活動法人イエカラ空き家の適正な管理保全と利活用推進を目的に、空き家管理サービス・マッチングサービスの運営、情報発信、ワークショップの開催などを行う。
一色小学校区元気なコミュニティ協議会移住促進による空き家の活用と団地再生や地域再生との相乗効果を図ることを目的に、住宅所有者、不動産事業者、地域の専門家、地域のキーパーソン等と連携して、お試し移住及びCMC事業を団地見学ツアーなどを実施。
揖斐川町空き家対策JV空き家の流通と面的・連鎖的な利活用を目的に、地銀・地元登記等専門家チーム・建築士・大学との連携により、重点地区に定めた中心市街地「三輪地区」での空き家調査、空き家情報のプラットフォームとなるウェブサイト制作およびローンチまでを行い情報発信とモデル物件の改修を行う。
特定非営利活動法人いんしゅう鹿野まちづくり協議会空き家の利活用と地域経済・コミュニティの活性化を目的に、地方都市・中山間地域で地域のエリアマネージメントに取組む中間支援団体を育み、行政と協力してまちづくり・空き家対策・移住支援を促進する。
株式会社エンジョイワークス移住者/多拠点居住者のライフスタイルにあった居住物件を増やすことを目的に、地域の空き家を地元不動産事業者を中心にリノベーションし販売する事業を、不動産特定共同事業(FTK)によるファンドを用いて行うことで加速。
かごしま空き家対策連携協議会豊かな島のコミュニティを引き継いでいくことを目的に、行政や地域住民・事業者、まちづくり支援機関等との連携により、空き家を活用した居住の場とマルチワークによる就業の場の提供を行う。
一般社団法人かながわ福祉居住推進機構近距離にある複数の空き家の一体的活用と移住の促進を目的に、自治体との連携によるプロジェクトの立ち上げと建物に必要な機能等の検討を行い、改修工事等を行う。
特定非営利活動法人木の家だいすきの会”負”動産化した空き家の活用を目的に、移住希望者向けに地域住民と交流でき、馴染めるかどうかという移住希望者の不安を解消できるお試し居住・地域交流施設を、クラウドファンディングを活用してDIO(Do It Ourselves)改修する。
特定非営利活動法人 教育研究所空き家の利活用促進と子どもの活動支援を目的に、子供食堂、学習支援、第三の居場所の3つの機能を持った施設を空き家改修により整備する。
特定非営利活動法人Goodstock空き家の需給マッチングにおけるミスマッチの解消や効果的な利活用促進を目的に、空き家バンク物件の賃貸利用促進について調査研究し、さらに塩漬けとなった複数の物件を地元工務店と協働でお試し移住住宅にする。
株式会社クマツグ空き家の利活用促進を目的に、家屋の1/3程度が空き家になってしまっている中山間地域において、地域のまちづくり会社が中心となり、古民家をリノベーションし訪問看護・遠隔診療の拠点を開発する計画を策定する。
株式会社kurosawa kawaraten空き家バンク物件の流通促進を目的に、写真を撮るだけで情報登録できるシステムの開発を行い、空家の流動化に繋げる。
現代集落 建築プロジェクト過疎地域における空き家対策と移住促進を目的に、集落内の空き家を改修し、滞在施設・チャレンジショップづくりを行う。
特定非営利活動法人 小諸町並み研究会「空き家を生かして地域を元気にするまちづくり」の機運を高め、共感してくれる人材や資金を呼び込むことを目的に、空き家の活かし方に悩んでいる所有者に対し、地域組織・専門家が連携して活用のサポートを行う。
庄原市空き家解決専門家ネットワーク空き家の流通や利活用を推進を目的に、各種専門家、行政、商工会議所、社会福祉協議会、金融機関、民間業者が連携し、空き家を活用した創業や移住者の支援・民間版空き家バンクの運営を行う。
すまいテラスいな空き店舗の活用と移住促進を目的に、暮らしのよりどころとなる空間を創造し、地方中小都市における空き家再生モデルの構築を行う。
一般社団法人ゼロエミやまなし空き家の利活用を目的に、地域循環を目指す法人が主体となり、地方公共団体、移住支援事業者、建築士、中小企業診断士が連携し、移住や多拠点居住を望む人が空き家シェアリングするモデルを構築する。
株式会社銭湯ぐらし都市規模の異なる複数の地域における空き家の活用と事業モデルの展開可能性を示すことを目的に、空き物件と地域資源を組み合わせた空き家活用の普及啓蒙やマッチング支援等を行う。
株式会社多可町地域商社RAKU町内の空き家の流動的な活用を目的に、空き家活用店舗を利用した、空き家活用相談・移住希望相談の通念的な窓口運営体制の構築および農業インターンシップや観光体験を取り入れ、より広域的な移住希望者のニーズに対応する移住フルオーダーツアーのパッケージ化を行う。
宝塚市西谷地区まちづくり協議会空き家と荒廃・遊休農地という二つの地域課題の解決を図ることを目的に、地域住民組織やNPO、農業技術者、その他外部専門家等が連携して、「農ある暮らし」を求める移住希望者に対応した仕組みづくりを行う。
津屋崎空き家活用応援団地域型アートイベントによる地域活性化を目的に、のぞきあなアートプロジェクトと連携し、津屋崎千軒エリアに点在する複数の空き家を短期滞在型住宅またはアート創作拠点とする空き家活用スキームを構築する。
認定特定非営利活動法人 都市環境協会空き家の減少を目的に、自治体と連携の上、空き家空地対策協議会を構築し、空き家の除却を推進する隣地集約事業を行う。
長湯温泉アルベルゴ・ディフーゾ協会空き家の利活用促進を目的に、温泉による健康づくりのための長期滞在または移住定住を推進できるシステムと組織の構築と空き家を利活用するための改修工事を行う。
株式会社日本能率協会総合研究所移住促進と空き家解消の両立を目的として、自治体、地域のまちづくり会社等と連携し、関係人口創出を目的とした試行中の体験コンテンツ「とけたび」に、空き家利活用に関わる新たなコンテンツを組み込む。
彦根銀座街商業協同組合老朽化し危険空き家になりつつある彦根銀座防災街区(店舗併用住宅)をビンテージ建物として評価し、活用することを目的に、本業務で発掘する活用したい土地建物オーナーと協働し、安心して活用できる方策等の検討を行う。
株式会社まちづくり三原地域活性化に資するまちの担い手づくりのため、空き家を活用した創業・移住等の促進を目的とし、地域の自治組織や法務・建築等の専門家等と連携した空き家調査、活用相談会、活用希望者向け空き家ツアー等の事業を実施する。
ヤギサワベース空き家問題に対する意識啓発を目的に、将来の地域の担い手となる子供たちに、空き家問題に関する学びの機会を提供し、子供たちから刺激を受けた大人たちや地域が空き家に対する意識を高め行動を起こすための仕掛けを行う。
株式会社ユニソン空き家の利活用促進と地域関係人口増加を目的に、遊休施設や空き家をサーキュラー拠点に変革するとともにコミュニティ形成を図る。
特定非営利活動法人横浜市まちづくりセンター効率的な空き家活用の実現を目的に、研修会や見学会開催により、空き家の所有者・管理者と子育て支援者やグループ・団体等の効果的なマッチングを行う。
株式会社 リノバンク空き家所有者を動かすことを目的に、自治体と連携し、WEB上の簡単な入力で空き家の「流通相場」「流通可能性」「保有リスク」をチェック可能なサービスの提供を行う。
一般財団法人和歌山社会経済研究所海辺の空き家利活用促進を目的に、外国人旅行者をターゲットに、地域住民や学生とともに、1年目は多様な交流が生まれる「空き家活用まちづくり」プランを作成、2年目は作成したプランを基に地域のNPO団体等と空き家改修を進める。

出典:国土交通省の資料より抜粋