これからの消費者ニーズと住まいに求められるもの 真の「すまい as a Service」へ
前消費者庁長官、元国土交通省住宅局長 公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター 顧問 伊藤明子氏
前消費者庁長官、元国土交通省住宅局長
公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター 顧問
伊藤明子氏
1984年に建設省に入省、2017年7月、国土交通省で初となる女性局長として住宅局長に就任。2018年7月、内閣官房内閣審議官 まち・ひと・しごと創生本部事務局総括官補、2019年7月~2022年7月、消費者庁長官などを歴任。2022年10月から現職。
私は1984年に建設省に入省しました。2018年に住宅局を去り、地方創生の仕事をして、その後、3年間消費者庁に行き、そこを辞めてから1年くらいたっていますので、6年ぐらい住宅の仕事を離れているわけですが、外から見ていてこうあって欲しいということ、それから、やや住宅局のときにやりきれなかった部分もあります。この40年を振り返りながら気になっていること、消費者という目線で見たこれから一体何が起きてくるのか、住まいに何が求められるのか、それが今日の私の話です。
私たちが現在いるところ
ヒト・社会・住宅
まずは、私たちが現在いるところについて、「ヒト」、「社会」、「住宅」に分けて考えたいと思います。「ヒト」は、少子高齢化、人口減少、孤独孤立という問題が大きく、人口は2008年までは伸びていましたが、2020年から2040年の間に急激に減るという時代に生きているわけです。
しかし、住宅に関していうと、今のところそこまで大きな影響はないというのが実感なのかもしれません。2008年に人口は減少に転じましたが、世帯数は増えており、まだ追っかけていられる状態にあるということです。世帯構成をみると1980年は、核家族の割合が一番多く、三世代同居も結構ありました。しかし今や一番多いのはお一人様で38%です。要は世帯人数が減り非常に単身者が多い、だから世帯数が増えている。
もう一つ言うと、日本人は非常に長寿命化しています。女性の死亡年齢最頻値は93歳に集中している。一方、男性は個人差が大きいですが、88歳で亡くなる方が多い。人生100年時代ということをよく聞きますが、本当に100年になってきているということです。そして人生100年時代を半分で切ってみると、ちょうど今年か来年ぐらいが、50歳以上が全人口の半分以上になる。2060年くらいになると60%ぐらいになる。すでに人口の半分以上が50歳以上の時代になっているということの影響も考えていく必要があります。
もう一つ少子化の問題もあります。人口を維持するための出生率の基準である人口置換水準は2.07と言われますが希望出生率は1.8。2022年の合計特殊出生率は1.26でした。
労働力人口について総務省の国勢調査(※図1)をみると、総人口に占める生産年齢人口は、1970年の7212万人、68.9%から、2050年には5540万人、52.9%に減少する見込みです。生産年齢人口は減り次の若年人口も減っている。逆に高齢者人口が2050年には37%になるので、高齢者に頑張ってもらえるような社会でないといけないということになります。
女性活躍に関してはM字カーブは解消されつつありますが、結婚や出産を契機として非正規雇用となるいわゆるL字カーブが課題となっています。どのぐらいの人が働くか、人数だけではなくて、時間や、ライフステージのいつに働くか。働き方の変化に住宅はどう対応するのかということも考えていく必要がありそうです。
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