住宅市場は新しい世紀に入った 新常態に対応したビジネスを創造

ミサワホーム社長 磯貝匡志 氏

2021年、新たな年が始まった。
新型コロナの影響がいまだ大きな影を落とすが、一方では住まいへの関心と言う光もさす。
テレワーク対応の住宅も好調なミサワホームの磯貝匡志社長が、昨年を振り返りポストコロナの住宅不動産市場、ミサワホームの戦略などを語った。


ミサワホーム社長 磯貝匡志 氏

──ミサワホームの現況は。

磯貝 2019年度決算では増収増益となり、引き続き2020年度もいいムードでスタートしていたが、新型コロナ感染防止対策で営業の前線を縮小せざるを得なくなった。しかし、もともと7月の東京五輪を見据えて円滑な施工を準備していたため、上期実績としては収益で一昨年を超えることができた。
7月以降はコロナ禍でも受注が回復し、新築受注は前年越え、リフォームも2ケタの伸びを記録。コロナ禍で在宅時間が長くなり家で仕事をするようになったことが家への関心を高めたのではないかと思う。

新海監督の映画「天気の子」の中で、「アントロポセン」という言葉が出てくる。「人新世(じんしんせい)」という。アントロポセンは地質年代でいえば「現代」を指し、異常気象やコロナなども含めた人間の行いが自然の歴史を変えている転換期にある世紀といえるのではないか。
今回のコロナを機に、いま、人々の意識が大きく変わってきていると感じている。

──具体的な取り組みについては。

磯貝 ミサワホームでは変わるライフスタイルを「ニューノーマルライフ」と呼び、それに対応する住まい提案を開始した。
在宅ワークに関しては、業界に先駆け「ホームコモンズ設計」や「ミニラボ」といった住まい空間をいち早く提案してきておりノウハウがあったが、新たな提案も盛り込んだ新商品として木質系住宅「プライム スマート」を発売した。

テレワーク対応や感染症予防に加え、天井高が約3mの開放的なリビングの快適性と災害に強いレジリエンス性などの安心と備えを盛り込んでいる。7月から10月までで300棟近くの受注となり近年にない大ヒット住宅となった。この1月からは、高天井の開放的な空間を標準化させた企画型商品も新たに発売、分譲展示場として全国でお披露目していきたい。

また、嬉しかったのは建築家の西澤立衛さんとミサワとのコラボによる「森本邸」がグッドデザイン賞に選ばれたこと。ミサワの性能、デザインの良さと在宅ワークのノウハウを評価いただいての受賞であり、有名な建築雑誌の表紙も飾り反響も高かった。新たな需要への提案に手ごたえを感じる出来事でもあった。
コロナをきっかけに家への関心が高まり、在宅勤務も増えて戸建回帰の人が増えていることを感じる。森本邸ではミサワの在宅ワークの設計手法が生きている。家でできることやスペース、開放感など家への関心の高まりを契機にさらに成長軌道が描けると思っている。

賃貸住宅も好調だ。この10年ぐらいで資産構成を見直す時期になったことが背景にあるとみている。ただ、2012年にアベノミクスが始まり、株価は上昇してきたが、この先どうなるかは不透明。しっかりとした市場調査、事業計画にもとづく賃貸経営戦略が必要なことはいうまでもない。ミサワホームの代名詞でもある「蔵」収納を賃貸にも採用した「蔵のある賃貸」は、東京を中心に他のエリアにも需要が広がっている。また在宅ワークのスペースを設けたプランを追加したことで、ほかにはない差別化商品としてオーナーにも好評を得ている。

また、定期借地権付き分譲が再び注目されている。今後の経済状況が不透明で投資にも慎重にならざるをえないが、コロナ禍での賢い住まいを提案していきたい。定借分譲なら所有権分譲よりも割安な価格でマイホームが取得でき、地主には相続税の圧縮と、50年間の借地料が年金のように定期収入として入ってくる。保証料も入ってくるので、資金運用の原資にもすることができる。
住宅産業人としては、ウィズコロナ、ポストコロナでのさまざまな変化とその対応を、具体的な提案としてお客さまに提示することは、アントロポセンの時代の住まい方を提案できる機会にもなっている。住宅は新しい世紀に入ったのだと思う。

──ほかの事業については?

磯貝 ストック事業については、エリア特性に合わせたきめ細かい対応をしていくために、昨年10月、近畿、中部、関東エリアのリフォーム事業体制を見直した。今後は新築や不動産部門との連携を一層深めていきたい。

そこで注目しているのが、かつてミサワの新築を建てていただいたオーナー宅の全面改装だ。代替わりとなり、お子さまへ住み継ぐこともあれば、住み替えや相続、住んでいないご自宅があれば、賃貸や売却など様々なニーズが出てくる。どんなご要望にも応えられるように技術的な対応ができる人財の強化を図っており、ミサワの建物以外のリフォームにも対応することができる。

日本には5000万戸とすでに世帯以上の住宅がある。きちんと手入れをしていくことで、先人たちが残したストックを活用して新たな世紀の豊かさを継続していくことができると思う。また、空き家を壊して更地にするのではなく、リフォームや買取再販などさまざまなソリューションを提案していくことによりサステナブルでCO2削減にも貢献することができる。

マンションについても、一室まるごと改装する提案を強化していく。数年前に東京・青山にリフォームサロンを開設したが非常に業績がよく、こちらも積極的に取り組む。

1981年の新耐震基準から約40年がたち、中古住宅市場にも新耐震基準の建物が多くなってきた。手を加えれば100年でも持つ住宅ができる可能性はある。一次取得者で戸建のほか中古マンション、賃貸住宅を探す人が多く、住まい方が多様化している。ご夫婦で共働きであれば両方の通勤に便利な駅近が人気だ。コロナでもう一部屋ほしい、別の場所へ住み替えたいというニーズも顕在化してきている。そうした多様なニーズにもストックを活用しながら新たな豊かさを提案していきたい。

──まちづくりでも新たな取り組みを始めていますね。

磯貝 東京・飯田橋のタワーマンションは、都心立地の希少さから好調な引き合いがある。今年の春に完成予定で、新たなイメージシンボルとなる予定だ。神戸でも、病院と高層マンションの複合施設の企画が進んでおり、大阪では病院連携のマンションが進行中。2025年の三島駅前再開発が完了した頃には、総合的な開発事業を行うミサワホームの姿がくっきりと見えてくると思う。

トヨタ自動車とパナソニックが共同出資したプライム ライフ テクノロジーズ(PLT)が、発足してちょうど1年が経った。ポストコロナを見据えて、ハウスメーカー3社を中心に「毛利の3本の矢」のように、グループ各社が持つ強みを生かしながら、積極的に連携を図っていく。

新たな事例としては、自動車のショールームであったカーディーラーの土地活用。新しい建物の1〜2階をカーディーラーのショールームと事務所、3階以上に高齢者向け施設、住居となっている。これまでのショールームでは容積率をフルに使っていなかったところをCRE(企業不動産)戦略の一環として複合施設建設の計画を提案。カーディーラーも単に車だけを売る時代は終わり、地域に限らず、社会貢献にもつながる活用方法を提案できたと思っている。また、この事例では、コンサルティングと設計をミサワで、建設は松村組が担当し、PLTのグループ会社との協業の形としても、新たな取り組みができたと思う。

──海外事業の進捗は。

磯貝 ミサワホームにとって海外事業は3カ年中期経営計画の重点事業であり、事業拡大を進めてきた。豪州の戸建住宅建設会社ホームコープコンストラクションズ(HCC社)の子会社化を皮切りに、米国でもインプレッションホーム(IH社)を子会社化した。豪州、米国ともに契約数の新記録を更新中で、米国では昨年の契約数が1000棟を超えた。コロナ禍ではあっても、住まいに関わる人々に元気があることが救いであり希望だ。

また、中国・天津においては、介護住設商品の展示会を実施、天津市で日本人駐在員向けのサービスアパートメント改修工事を請け負うなど、アジアでの活動も本格化させている。

そして2022年にはミサワグループ全体の売上高の約1割を担うべくさらなる事業拡大を目指していく。

今年の標語は、心を新たに新しい領域にも勇気を持って臨んでいきたいとの決意を込めて「新しい成長」とした。ポストコロナの新しい時代にも、これまで蓄積してきた住宅メーカーならではの人財や、ハードとソフトの技術をうまく組み合わせることで新しいものが生まれてくるのだと思う。

(聞き手:村川由美)

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