GX ZEHで需要が高まる「断熱等級6・7」(繊維系断熱材編)

断熱材各社が提案する上位等級成功の鍵

住宅の断熱性能向上が急速に進んでいる。脱炭素化の進展、省エネや健康といったニーズの高まりを背景に、住宅の断熱性能は断熱等級5(ZEH水準)が新たな「標準仕様」となりつつある。さらに、国が示す「GX志向型住宅」や、2027年度からスタートが予定されている新定義「GX ZEH」を見据え、その一歩先を行く「断熱等級6」、さらには最高水準である「断熱等級7」の住まいづくりが広がりを見せている。市場で圧倒的シェアを占めるグラスウール断熱材メーカー3社を中心に、ロックウール、セルローズファイバーなどの主要な繊維系断熱材メーカー各社の最新の動きを徹底解説し、26年現在の上位等級攻略に向けた提案戦略を解き明かす。


2026年の住宅断熱材市場を語る上で欠かせないのが、中東情勢の悪化がもたらした資材調達・価格への影響と、それに伴う販売動向の構造変化だ。

26年初頭に発生した中東情勢の緊迫化は、石油化学原料(ナフサ)の供給懸念を呼び、発泡系ボード断熱材の供給を一時的に滞らせた。この「ナフサショック」を受け、同年4〜5月にかけて工務店やビルダーの間で資材不足に対する強い焦りが生じ、特にグラスウール断熱材などには前倒し発注が集中、一時的な需要の急増が発生した。

その後、事態の沈静化に伴い、実需を反映しない先行分の反動による若干の落ち込みが生じ、現在は落ち着きを取り戻している。また、この情勢悪化は外張り用ポリエチレン防湿シートや梱包資材といった副資材、セルローズファイバー吹き込み用の不織布シート、湿式ボンドなどのコスト上昇や一時的な入手困難を引き起こした。

原材料・エネルギー、そして歴史的な円安に伴う輸送コストの高騰を受け、メーカー各社は相次いで値上げに踏み切っている。

グラスウール断熱材について主要メーカーの改定幅は、パラマウント硝子工業が26年6月1日出荷分より15%値上げ、マグ・イゾベールが26年7月1日出荷分より25%以上値上げを実施。旭ファイバーグラスが26年9月1日出荷分より15%以上値上げを実施する。さらにロックウールのJFEロックファイバーもロックウール製品全般で20%以上、価格改定を行った。しかし、発泡系ボード断熱材が40%前後の極めて大幅な値上げとなったことから、コストバランスを考慮し、床断熱などを発泡系からグラスウールへと切り替える「置換」の動きが一部のビルダーで見られた。

面積ベース減少を「高性能化・高密度化」でカバーする販売推移

住宅着工数の減少により、施工面積ベースの断熱材使用量は減少傾向にあるものの、製品ごとの高性能化・高密度化が進み、重量換算での出荷ベースは手堅い推移を見せている。

旭ファイバーグラスでは、戸建て住宅の着工減少に伴い、面積ベースの需要は減少傾向にある。一方で、高密度・高性能品への需要シフトが進んでいることから、重量ベースでは前年を上回る水準を維持している。また、中東情勢の悪化を受け、一時的な需要の前倒しや在庫積み増しが発生したことから、春先には出荷が大きく伸長した。ただし、ゴールデンウィーク明け以降はこうした影響も落ち着き、出荷は徐々に平常水準へと落ち着いた。年初来の累計では、前年を上回る堅調な水準で推移している。

マグ・イゾベールは、現在のボリュームゾーンは等級5対応商品(全出荷の6〜7割)。25年1月〜7月までの実績は微増を維持している。「昨年は着工件数が約10万戸近く減少したにもかかわらず、自社の出荷は微増を維持しており、これは等級5の伸びによるものと見ている」。

「等級5」の標準化と、差別化を図る「等級6」シフトへの課題

25年4月の省エネ基準適合義務化を受け、市場では「断熱等級5(ZEH水準)が最低限のスタンダード」という認識が工務店・ビルダー間に完全に定着した。

また、国は第7次エネルギー基本計画において2050年にストック平均でのZEH水準の省エネ性能の確保の目標を掲げ、30年度以降に新設される住宅はZEH水準確保を目指すとしている。

国土交通省がまとめた長期優良住宅の認定状況を見ると、令和7年度の一戸建ての認定戸数は15万5838戸となり、新築着工戸数の49.8%を占めた。前年度から10・5ポイントの大幅な伸びとなった。長期優良住宅は、外皮性能(断熱性能)に限って言えば、ZEH水準の断熱等級を備えていると言える。つまり現在、新築の木造戸建ての約5割が等級5以上の断熱性能を持つと推定される。

さらに、現行のZEHを超える省エネ性能を要件とした新しいZEHの定義の策定に向けた国の動きも加速している。ZEH水準が新築住宅の最低基準になりつつあるなか、さらに上を行く性能を持つ誘導的な住宅の姿を打ち出す必要があることから、経済産業省は現行のZEHを超える省エネ要件を満たした新たなZEHの定義として「GX ZEH」を示した。27年4月以降、GX ZEHの導入を予定している。これに伴い、現行定義での新規認証は27年度を期限に停止する。

GX ZEHは、① 住宅性能表示制度における断熱等性能等級6の基準を満たす、② 再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から35%以上の一次エネルギー消費量削減、③ 再生可能エネルギーを導入(容量不問)、④ 再生可能エネルギー等を加えて、基準一次エネルギー消費量から100%以上115%未満の一次エネルギー消費量削減――の4つの定量的要件をすべて満たす住宅とする。また、設備要件として、初期実行容量5kWh以上の蓄電池、HEMSなどの高度なエネルギーマネジメントの導入が必須となる。こうした中、他社との差別化を図るため「等級6」へのシフトを模索する動きが活発化しているが、現場にはクリアすべきいくつかの高い壁が存在する。

等級6シフトを阻むビルダーの4大課題

一つは、外皮計算(申請業務)の業務負荷激増だ。等級5までは、部位ごとの熱抵抗値をクリアすれば外皮計算を行わずに適合証明ができる「仕様基準ルート」が活用できた。しかし、等級6以上はすべての開口部比率や部位ごとの熱損失を詳細に計算する「計算ルート」による証明が必須となる。省エネ適合判定の義務化に伴う、評価機関のリードタイムの長期化は解消しつつあるが、この申請・計算にかかる事務負担は、設計・営業リソースの限られた地域ビルダーにとって課題となっている。

旭ファイバーグラスが等級6の市場開拓に向け発売した「アクリアTSα」。従来品に比べて柔軟性を向上し、長尺化を実現。施工性を高めた
マグ・イゾベールは、「等級6“+(プラス)”」の住まいづくりを独自に提唱するその中核をなす高性能グラスウール「イゾベール・コンフォートλ32」

また、「コスト上昇」と「減価償却」の課題も指摘されている。住宅価格そのものが高騰する中、施主側のイニシャルコスト(建築費)抑制志向が強く、無理に等級6に上げずに等級5に落ち着くケースが多い。一方で、等級5であっても太陽光発電や高効率設備を設置すれば、光熱費(ランニングコスト)を含めたトータルコストで等級6の方が安くなる「経済的逆転現象」が起きている。しかし、減価償却の観点から見ると、等級6は充填断熱のみでクリア可能であるのに対して、等級7は付加断熱が必須となり、償却期間が2倍以上になるケースがある。この「等級が上がるほど減価償却が長くなる」という矛盾が、施主への説明を難しくしている。

加えて、「複雑な地域区分の混在」という課題も出てきている。南北に長い県や山間部を持つ地方では、同一県内であっても地域区分(2地域〜6地域など)が細かく混在する。全国一律の仕様で対応できる大手ハウスメーカーとは異なり、地方ビルダーは地域ごとの最適仕様をその都度構築せねばならず、仕様統一やホームページ上での明確な訴求が難しい。

グラスウール3社による等級6突破への製品アプローチ

断熱材メーカー各社は、これらビルダーの課題を解消するため、高性能かつ施工性に優れた新商品を相次いで市場へ投入している。

旭ファイバーグラスは、超細繊維の採用により、厚さ105㎜、密度36Kで熱伝導率0.032(W/m・K、以下省略)を達成した高性能充填用断熱材「アクリアα(アルファ)」を擁する。これは温暖地(5〜7地域)において、付加断熱(外張り)を必要とせず、柱間の充填断熱だけで等級6をクリアできる圧倒的な強みを持つ。
さらに同社は、等級6の本格普及に向けて、熱伝導率0・032のトップ性能を維持したまま、繊維径をさらに改良した低密度・軽量の新商品「アクリアTSα」(密度28K)を発売。これにより従来品に比べて重量を約22%軽量化することに成功した。また、密度が下がったことで柔軟性が向上し、従来の4.5尺(1370㎜)から2倍の長さとなる9尺(2740㎜)の長尺化を実現。「1枚でポンと柱間に収める」ことが可能になり、短尺品をつなぎ合わせる際の手間と断熱欠損のリスクを排除し、施工性を劇的に高めた。

マグ・イゾベールは、最高等級である「等級7」の実現にはコストや技術的難易度が非常に高く、過剰投資(オーバースペック)になりかねないと指摘する。そこで同社は、従来の延長線上で最もコストパフォーマンスが良い目標値(5〜7地域でUA値0.34〜0.40程度)として、独自に「等級6“+(プラス)”」を戦略的に提唱している。その中核をなすのが、24年4月に発売した、防湿層なしの裸品の高性能グラスウール「イゾベール・コンフォートλ32」(105㎜厚、熱伝導率0.032)だ。

また、同社は主力である袋入り24㎏品「イゾベール・スタンダード」の熱伝導率を、同一価格水準のまま0.035から0.034へ向上させるリニューアルを実施、26年10月に切り替え予定である。16K品から24K品への置き換えを加速させ、ビルダーがスムーズに「“等級6+”」へとステップアップできる体制を整えている。

寒冷地(北海道・東北)で高性能グラスウール「太陽SUN」シリーズによる圧倒的シェアを誇るパラマウント硝子工業は、寒冷地の実績を武器に温暖地(本州)での等級6・7市場開拓を推進する。温暖地の等級5レベルには袋入りのスタンダード商品「ハウスロンZERO」で対応可能であり、等級6以上になると、北海道で培った「裸品(防湿層なし)+防湿気密シート別張り」の仕様を普及させる提案を行っている。この棲み分けの根拠として、北海道の等級4に相当するUA値の基準が、温暖地(本州5・6・7地域)では等級6に相当するという点を挙げる。つまり、北海道で当たり前に行われている等級4レベルの仕様が、本州では等級6に相当するため、北海道の仕様を本州でも展開することを提案している。

同社は昨年、太陽SUNRのラインアップを大幅に拡充した。なかでも、屋根用の200㎜厚の「太陽SUNR(SRJ)」は、3~7地域の誘導仕様基準として発売。一方、最上位グレードの「太陽SUNR(SRG)」(38K、熱伝導率0.032)に105㎜厚の短尺品などを追加。これにより、53㎜厚品を厚さ方向に2枚充填する施工方法に加え、105㎜厚品を長さ方向に2枚充填する施工方法も選択できるようにした。また1~3地域の床の誘導仕様基準に適合する規格も同時に展開している。

パラマウント硝子工業が擁する最上位グレードの「太陽SUNR(SRG)」。寒冷地の実績を武器に温暖地(本州)での等級6・7市場開拓を推進する

高性能化が進むほど際立つ「気密性能(C値)」の重要性

住宅の断熱性能(UA値)が高まれば高まるほど、設計上の数値だけでなく、現場における「気密性能(C値)」の確保が極めて重要となる。

等級6・7レベルの超高断熱住宅では、壁体内やコンセントボックス、配線周り、下地部分などに万が一わずかな「隙間(断熱欠損)」が存在した場合、そこから室内の湿気が壁体内に一気に流入する。侵入した湿気は外気で冷やされた外壁近くで結露(内部結露)を起こし、木材の腐食やカビ、構造の劣化といった深刻な不具合を招く。断熱性能が高い住宅ほど、この局所的な断熱欠損による湿気被害のリスクは深刻化するため、完璧な気密施工が不可欠となる。

裸品グラスウール+防湿気密シート別張りで気密・施工品質を向上

本州の温暖地では、依然としてフィルムに包まれた「袋入りグラスウール」の施工が約8割と圧倒的なボリュームを占めている。しかし、上位等級を確実かつ高品質にクリアするために、グラスウール各社は「裸品(袋なし)+防湿気密シート別張り」への移行を強力に後押ししている。

袋入り充填は、施工手離れが良く、一見、手軽で安価に思えるが、防湿フィルムの「耳」を柱面に確実にタッカー留めする必要があり、「職人の熟練度でムラが出やすい」「隙間の有無(施工不具合)が外から視認しにくい」といった課題が指摘されている。一方、裸品+別張り防湿気密シートには、「グラスウールが柱間にピタッと密着する」「透明なシートの上から、配線やコンセント周りの断熱欠損を目視で容易に確認できる」「施工品質と気密性能(C値)が極めて安定する」といったメリットがある。

パラマウント硝子工業は、「太陽SUNR」を強力に推す。この製品の最大の強みは、他社製品と比較して非常にコシが強く、「自立性」「張り・コシ」に優れている点にある。柱間に差し込むだけで断熱材が自立し、たわまないため、別張りシート工法に慣れていない温暖地の職人でも安定した施工が行える。この「施工精度の高さ」をフックにYouTubeなどで積極的に施工動画を配信し、工務店の認知を広げている。

マグ・イゾベールは植物由来の結合剤を採用しながらも、簡単にたわまないコシの強さを実現した「イゾベール・コンフォート」の提案を強化する。全面防湿シートとの組み合わせによる「隙間のない確実な気密」をビルダーに推奨している。

構造用面材の採用は「等級6以上の必須要件」

マグ・イゾベールは、断熱欠損を防ぎ施工精度を向上させるため、従来の「筋交い」による耐震工法から、外壁に耐震面材を張る「構造用面材」への移行を強く推奨している。

面材を採用することで、充填した断熱材が背後からしっかり支持されてたわまず、コンセントや配線周り、下地部分にも隙間のない正確な施工が可能になる。気密性能(C値)も劇的に取りやすくなるため、同社は「等級6以上では面材の採用は必須である」と断言している。

現在、北海道では構造用面材の採用率が90%を超えているのに対し、本州では50〜60%にとどまっており、この工法移行をいかに進めるかが、温暖地における気密性向上の鍵を握っている。

また、「断熱材市場においては、繊維系断熱材同士の競争だけでなく、現場施工型の断熱工法との比較検討が増えている。断熱性能の確保が当たり前になる中、グラスウールを適切に施工できる体制を整えることで、材工含めた施工に対してトータルコストで優位性がある」とも指摘する。

天井吹き込み(ブローイング)工法の活用が上位等級達成の「調整弁」となる

断熱等級6や7をクリアする際、多くの設計者を悩ませるのが「壁の厚み制限(柱幅105㎜や120㎜の物理的限界)」である。この限界を補い、UA値を劇的に引き上げるための「調整弁」として注目を集めているのが、懐に制限の少ない「天井(小屋裏)ブローイング(吹き込み)工法」だ。

壁とは異なり、小屋裏空間は構造上の制約が少なく、熱損失目標(UA値)に合わせて300㎜や最大400㎜厚など、吹き込む厚みを自在にコントロールできる。

小屋束や配線、配管が複雑に入り乱れる天井裏において、敷き込みマット工法では隙間なく施工することは極めて困難であり、軒先などの施工不良が起きやすい。ブローイングであれば、綿状の断熱材をマシンで吹き込むことができるため、あらゆる複雑な隙間をまんべんなく埋め尽くし、熱損失を最小限に抑えることができる。

旭ファイバーグラスは、温暖地向けに、袋入りグラスウールとして業界最厚となる250㎜厚の「アクリアα R71」を提案している。高断熱住宅の天井断熱において、1層敷きでの施工を可能とする点が特徴である。

旭ファイバーグラスが新開発したブローイング用グラスウール「アクリアスターブロー」。寒冷地での等級6・7の普及に向けて鍵を握る商品だ

一方、より高い断熱性能が求められる寒冷地や、複雑な形状の小屋裏には、2026年7月に発売した吹き込み用グラスウール「アクリアスターブロー」を提案する。「高性能アクリアα」と同じ繊維径を採用し、従来品の熱伝導率0.051W/(m・K)から0.047W/(m・K)へと性能を高めた。施工密度14㎏/㎥以上で、国内の天井向け吹き込みグラスウールとして最高水準の熱伝導率を実現している。

また、非常に軽量であることから、天井下地や構造体への荷重負担を大幅に軽減できる点も強みだ。
同社は、吹き込み施工における品質を確保するため、「認定工事店制度」を導入している。今後は、商品説明会などを通じて導入を検討する工事店の裾野を広げ、認定工事店網の拡大と製品の普及を進めていく考えだ。

天井用ブローイング材として、北海道で多くの採用実績を持つ王子製袋のセルローズファイバー断熱材「ダンパック」。一昨年、西日本・温暖地の等級6・7需要へのシフトを見据え、設備を北海道から名古屋に移設した
「ダンパック」は、壁ブローイング工法により最高55kg/㎥の高密度施工を実現し、沈下を防いで隙間なく断熱・防音性能を発揮する

セルローズファイバー「ダンパック」を展開する王子製袋は、小屋裏吹込みで嵩密度25㎏/㎥という圧倒的な高密度を誇り、優れた断熱性能に加え、卓越した遮音性能や夏期の遮熱性能(屋根からの熱侵入抑制)で高い評価を得ている。

同社は、成熟した北海道市場から西日本・温暖地の等級6・7需要へのシフトを見据え、一昨年、北海道岩見沢の生産設備を愛知県名古屋市(犬山工場)へ移設した。これにより、江戸川工場(関東圏カバー)と犬山工場(中京・西日本・九州カバー)の2拠点体制を確立。JIS認証を持つセルローズファイバーメーカー4社の中で2工場体制を持つのは2社のみであり、物流コストを抑制した安定供給体制と「災害時のリスク分散」によるビルダーの信頼を獲得している。

また、新聞紙発行量の激減(最盛期の3分の1に減少)という長期的な原料不足に対応するため、段ボール古紙100%のセルローズファイバーの新製品開発(JIS取得済み)を推進。振動試験による30年相当の沈降リスク検証を進める予定。持続可能な高付加価値断熱材としての早期実用化を目指している。

夏型結露のリスク増大と、その解決策「可変透湿シート」

近年の地球温暖化に伴う「夏の酷暑化」により、日本の住宅は冬の防露だけでなく、夏の「夏型結露(逆転結露)」対策が必須課題となっている。

夏に、屋外の高温多湿な空気が外壁を抜けて壁体内に浸入した際、室内がエアコンで冷やされていると、室内側の防湿層の表面温度が低下する。この温度低下した防湿フィルムや気密シートの壁体側表面に、外気からの水蒸気が触れることで、夏の壁内部で結露(逆転結露)が発生する。

冬用の防湿気密シート(固定された防湿性能)では、この夏の湿気を室内に逃がすことができず、壁の中に湿気が閉じ込められ、構造躯体を傷めるリスクとなることが指摘されている。

この課題を解決するのが、周囲の湿度に応じて透湿抵抗(湿気の通しやすさ)が変化する「可変透湿(調湿)シート」だ。

冬(低湿時)は、室内から壁内への水蒸気の侵入を防ぐ「防湿」の働きをし、冬型結露を防ぐ。夏(高湿時)は、エアコンによる冷房で壁内の相対湿度が高まると、シートの分子構造が変化して「透湿(湿気を通す)」の働きに切り替わり、壁内の余分な湿気を室内に逃がして夏型結露をシャットアウトする。

パラマウント硝子工業が展開する可変調湿気密シート「太陽SUNR調湿すかっとシートプレミアム」。裸品「太陽SUNR」とのセット施工を推奨している

パラマウント硝子工業は、酒井化学工業とコラボレーションし、可変調湿気密シート「太陽SUNR調湿すかっとシートプレミアム」を展開。裸品「太陽SUNR」とのセット施工を推奨している。近年、結露対策への関心が高まりつつあり、26年4月以降売れ行きが上昇している。

マグ・イゾベールの可変調湿気密シート「イゾベール・バリオ エクストラセーフ」。近年、夏の猛暑化が一段と進んでいる影響もあり、新規採用を伸ばしている

マグ・イゾベールは、ヨーロッパでの先進的な実績背景を強みに、いち早く日本へ可変調湿気密シート「イゾベール・バリオ エクストラセーフ」を投入。夏の猛暑化が厳しくなる20〜30年先を見据えた「裸品(イゾベール・コンフォート)+バリオ」のパッケージが安定して販売を伸ばしており、新規の工務店採用に大きく寄与している。

旭ファイバーグラスも可変透湿シートをラインアップしており、夏型結露対策への効果を期待している。一方、フラット35などへの適用を見据え、今後の普及・活用を促進するためにも、JIS取得をはじめとした早期の規格化を望んでいる。

等級7を見据えた「付加断熱」「日射遮蔽」と他メーカー・流通とのコラボ

最高ランクである「断熱等級7(HEAT20 G3レベル)」の達成を目指す場合、グラスウールなどの充填断熱のみでクリアしようとすれば、壁厚が200㎜〜300㎜以上必要となり、木造の構造躯体(柱幅105㎜・120㎜)の制限から物理的に難しい。

等級7の実現には、柱間の充填断熱に加え、外側に発泡系ボード断熱材を施工する「付加断熱」が実質的に必須となる。

例えば、壁120㎜グラスウール+外張り60㎜発泡系ボード+トリプルガラス樹脂サッシの組み合わせによって、ようやくUA値0.28(等級7レベル)のクリアが可能となる。

また、UA値を高める(断熱性能を上げる)だけでは、冬場の過熱や、夏期の日射侵入による室内のオーバーヒートが発生する。そのため、庇(ひさし)の設置、方位設計、日射遮蔽(ηAC・ηAH値など)や高性能サッシ、ドアを含めた「建物全体でのトータル設計(パッシブデザイン)」が不可欠であり、断熱材メーカー単体では等級7の成功を語ることはできない。

他建材メーカー・流通商社とのコラボレーションが成功の鍵

そのため、自社製品の枠を超えた「他メーカーや流通とのコラボレーション」が、上位等級を攻略する上での最重要戦略となっている。

グラスウール断熱材を主軸に、外張りの発泡系ボード断熱材、窓サッシ・ドア、気密部材・シート、外壁下地用構造面材などのメーカーとコラボレーションし、工務店へ「迷わないトータル提案」をするアプローチだ。

パラマウント硝子工業は、アキレス(硬質ウレタンフォーム断熱材)、日本住環境(気密部材)、ノダ(外壁面材)などとアライアンスを組み、コラボセミナーや施工研修を展開している。また「断熱等級7(HEAT20 G3レベル)」に挑戦するための推奨仕様表を準備し各エリアで提案中だ。

マグ・イゾベールは、「自社では提供できない他素材にも適材適所で推奨したい製品があるという、メーカーならではのジレンマを抱えている」というメーカーならではの課題を指摘する。この課題を打破するため、同社は伊藤忠建材、ジャパン建材、ジューテックなどの大手流通商社との連携を強化している。メーカーではなく、フラットに建材を扱える流通会社が主導権を握り、サッシ、他社製外張りボード、同社のグラスウール充填断熱を一括でトータルコーディネイトして提案する体制が、実務上最もスムーズかつ効果的な解決策であるとし、流通のバックアップに期待する。

旭ファイバーグラスは旭化成建材と共同で、高性能グラスウール「アクリア」と高性能フェノールフォーム「ネオマフォーム」を組み合わせ、HEAT20のG3水準に対応する断熱仕様例を作成した。両社は2023年7月、「アクリアとネオマでつくるG3の家」としてHEAT20住宅システム認証のG3認証を取得している。

また、G3住宅の普及に向けた「G3実棟プロジェクト」では、工務店・設計事務所の協力を得て、北海道(2地域)、山形(4地域)、香川(6地域)、宮崎(7地域)の4地域でG3住宅を建設。完成したモデル棟を活用したリアル・オンラインのセミナーや実例紹介も行っている。

断熱と吸音を両立
+αの性能で差別化

従来、断熱材を評価するモノサシは、外皮平均熱貫流率や熱抵抗値などの断熱性能のみであったが、優れた断熱性能は備えたうえで、プラスαの吸音性能との両立を図り、差別化を図る動きも目立ち始めている。

近年、リモートワークの定着やプライバシー重視の観点から、住宅の「室内防音・吸音」に対する施主のニーズが急激に高まっている。これを受け、単に断熱性能を高めるだけでなく、優れた吸音性能をプラスした「付加価値商品」で差別化を図るトレンドも台頭している。

住宅用断熱材として業界初となる吸音規格を取得したJFEロックファイバーのロックウール断熱材「ロクセラム サイレント」。写真は「ロクセラム サイレント36(サンロク)」

JFEロックファイバーは24年4月、業界初となる吸音規格JIS A 6301を取得した袋入りロックウール断熱材「ロクセラム サイレント」を発売。密度40㎏/㎥以上、熱伝導率0.037の温熱性能を持ちながら、優れた防音効果を発揮。外壁のみならず、音漏れが気になるトイレ周りの内壁や、1階・2階間の階床への充填など、戸建て住宅内での吸音・遮音ニーズを的確に捉え、計画通りに販売を伸ばしている。25年10月には、不要な厚みの選択肢を統廃合して選びやすい高密度ラインアップに再編した。

密度40以上、厚さ161㎜、熱伝導率0.037、天井用の熱抵抗値4・4と、壁用の厚さ100㎜・熱抵抗値2・7の2種類をラインアップした。

「ロクセラム サイレント」は、外壁のみならず、音漏れが気になるトイレ周りの内壁や、1階・2階間の階床などへも充填することができる

さらに26年4月に、ロクセラム サイレントのラインアップを拡充し、壁用の厚さ105㎜、熱伝導率0.036、熱抵抗値2.9という同社の断熱材として過去最高性能の製品をリリースした。これまでロックウール断熱材で熱伝導率0.036まで性能を高めることは難しいと言われていたが、上位の断熱等級6・7の登場を受けて開発に挑み成功した。

同社によると、等級4の顧客もまだまだ存在している一方、等級5へのシフトも着実に進んでいる状況だという。等級4〜5であれば熱伝導率0.038で十分対応可能であり、等級6対応には天井用161㎜の熱伝導率0.037が活用されている。また、等級7の壁には付加断熱が必要となるため、ボード系断熱材との組み合わせを推奨している。「高性能商品をゴリ押しするのではなく、顧客のニーズに合ったラインナップを揃えることを重視している」。

2027年度「GX ZEH」定義変更への期待と市場に与える影響

住宅の脱炭素化をさらに加速させるターニングポイントとして期待されるのが、27年度から本格スタートが予定されているZEHの新定義「GX ZEH」だ。

25年の省エネ基準適合義務化以降、木造住宅市場の約半数が等級5を達成したものの、多くのビルダーが「従来の延長で対応できる等級5」の段階で満足して留まっている。27年度に「GX ZEH」への移行が始まると、国の補助金や税制優遇措置、各種融資制度の基本要件が、従来のZEH水準(等級5)から、実質的に「GX ZEHレベル(断熱等級6レベル以上など)」へ引き上げられる見通しである。

これにより、「等級5のままでいい」と考えていた一般的なビルダーも、補助金受給や競合他社との競争力を維持するために、等級6以上への移行を迫られそうだ。特に、年間の着工数が20〜30棟規模で、これまで等級6の採用に慎重だった地域の中堅ビルダーが、GX ZEHを契機に一気に等級6を標準仕様化するようになると期待されている。

各断熱材メーカーは、この27年度の変革期を「高付加価値製品(高性能裸品、可変調湿シート、天井ブローイング、他社コラボ仕様)への本格シフト」における最大の勝負どころと位置づけている。ただ部材を売るだけでなく、UA値計算のサポートや、現場での気密・施工品質指導、他社コラボ仕様の提案といった「ビルダーの伴走者」としての総合力が、今後の市場で覇権を握るための最大の鍵となりそうだ。