「生産」と「育成」の両立を 森林管理の専門的知見が必要

 

「伐れば儲かる」条件が整う

先日訪問した産地は、域内に有力国産材工場(製材・集成材)や木質バイオマス発電所、チップ工場が立地していて国産材原木に対して旺盛な需要があり、いくつもの伐採業者が活発な木材生産活動を展開していた。
ある会合でそのうちの1社の幹部と隣の席になり、最近の状況を尋ねると、需要の受け皿がある効果はやはり大きく、生産量は右肩上がり、売上も堅調に推移しているとのことであった。

最近は伐採業者の多くが高性能林業機械を駆使した生産システムを導入していて、ハイペースでの木材生産が可能になっている。ただし、いくら生産量を増やしても原木を受け入れてくれるところがなければ売上にはつながらない。

その点、この地域は売り先を心配する必要はなく、話を聞いた幹部も「めぐまれている」と口元をほころばせた。工場や発電所が進出してきたのは最近10年ほどの間のことで、「以前に比べてだいぶ仕事がしやすくなった」と幹部の口調は終始滑らかであった。

生産だけでは林業は成立しない

発電燃料として集荷された原木。国産材に対して旺盛な需要が生まれている

ヨーロッパのフォレスター。森林を適切に管理するには専門的な知見が欠かせない

林業とはどんな営みかと問われれば、私は「木を育て続けること」あるいは「森を育み続けること」だと答える。歴史で明らかなように、木の成長速度を無視した過剰な木材生産を続けていると、森はなくなってしまう。森がなければ林業はできない。林業は生産のことだけを考えているのでは成り立たないのである。だから、林業経営においては、森を育み続ける意志を持つことが不可欠だと考えている。

だが、木材生産を生業とする伐採業者は生産重視の姿勢になりがちだし、原料や燃料がなければ事業が成り立たないメーカーや発電所も立場は同じで、「安定供給」の名のもとに生産拡大を求める意識が強く働く。資源が充実し、需要もある状況下ではそうしたベクトルが当たり前に強まる。

もちろん、生産・加工側の立場にあっても、森を育む、すなわち資源育成の必要性を認識している向きがないわけではない。今は政策的に主伐再造林が推進されているが、10年ほど前までは間伐による資源育成が重視されていた。その頃までに林業に新規参入した業者の中には「森づくり」の熱意を強く抱いている人が多い。古くからの林業会社でも「山がなければ仕事ができない」のだからと、森づくりの重要性を強く認識している経営者は少なからずいる。

ただし、そのような認識で組織が一枚岩になっているとは限らない。資源が成熟し、国産材の需要が増えてくると「伐れば伐るほど儲かる」のだからと生産重視の意見が台頭しがちになる。低収入が指摘されている林業界でも、強力な生産体制を敷くことで「儲かっている」業者が近年はかなり出てきている。ならば「オレも」と意気込む向きが出てくるのは当然で、「育成」重視派と「生産」重視派の意見が組織内で対立し、袂を分かつケースも出てくる。

安心して「儲け」られる条件整備を


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