ゼネコンと木材商社の強みを融合 一般流通材で実現した木造有料老人ホーム
事例⑦ ウッドエンジニアリング(神奈川県横浜市) 物件:新川崎 有料老人ホーム(神奈川県川崎市)
ウッドエンジニアリングは、140年を超える歴史を持ち、総合建設業として高い施工実績と技術力を備えた飛島建設と、木材調達ネットワークやプレカット工場、住宅事業、さらに木造・木質化に関する豊富なノウハウや調達能力を持つナイスの2社による合弁会社として2024年4月に設立された。
現在、社会全体で地球環境への配慮や持続可能性の追求が叫ばれる中、建築分野における木造化・木質化への注目が急速に高まっている。国としても脱炭素社会の実現に向けて木材利用の拡大を強力に推進しており、建築物の木造化・木質化を進めることは、単なるトレンドではなく企業の社会的責任や脱炭素への直接的な貢献へとつながる。
三門克彰代表取締役社長は「ウッドエンジニアリングは、こうした社会的な要請と発注元の環境重視のニーズを的確に捉え、木材利用の拡大とカーボンストックの実行を通じて、持続可能な社会の実現に貢献する企業として立ち上げられた。2社が持つ異なる強みを融合させ、それぞれの力を単に足し合わせるだけでなく、それを3倍、4倍といったより大きなシナジーへと高め、これまでにない価値を創出することを目指している」と話す。
ワンストップでの対応力とコストメリット
同社の最大の強みは、木造建築の企画段階から設計、資材調達、施工、そしてアフターフォローに至るまでをワンストップで対応できる体制にある。
従来の木造建築、特に中大規模の非住宅建築においては、設計事務所、資材調達業者、施工業者が個別に動くことが多く、調整コストや期間が余計にかかる傾向にあった。
しかし、ウッドエンジニアリングではナイスの木材調達・プレカット技術と、飛島建設の施工管理能力が最初から一体となっているため、スムーズかつスピーディーな事業進行が可能となる。
さらに、このワンストップ体制は明確なコストメリットを生み出す。建物を木造化・木質化することにより、RC造やS造に比べて建物全体の重量が大幅に軽量化される。これにより、基礎工事にかかる費用や、地盤改良工事の規模を縮小することが可能となる。

画像提供:平林 治 氏
RC造などの重い建物では、地盤の状況によって深い杭打ち工事が必須となるケースが多いが、軽量な木造建築であれば、杭打ちを省略して簡易的な地盤改良程度で済む場合がある。基礎や地盤に関わる土木工事の費用は建設費全体の中で大きな割合を占めるため、ここを削減できることは極めて大きなメリットとなる。また、工期の短縮という点でも、木造は非常に有利に働く。
同社がメインターゲットとして据えているのは、都市部・地方を問わず、「中低層(おおむね4階建て以下)の大規模な非住宅建築」だ。
具体的には、高齢者福祉施設、保育園、幼稚園、あるいは観光地などのホテル・宿泊施設、さらには低層の賃貸マンションなど。営業エリアとしては、現在の拠点が横浜近郊にあることから、まずは神奈川・関東近郊を主軸として展開。将来的には全国展開を視野に入れている。
飛島建設は全国に支店網を持っており、一方でナイスも全国に豊富な営業所を展開している。この両親会社のインフラを戦略的に活用し、例えば「飛島建設の支店があるエリア」かつ「ナイスの営業拠点や木材ネットワークが最も強いエリア」をターゲットに選定することで、地方での案件にも迅速に対応できる体制を整えている。
第1号物件は川崎市幸区の木造高齢者福祉施設
ウッドエンジニアリングの「第1号物件」として、2026年4月20日に竣工を迎えたのが、川崎市幸区に建設された高齢者福祉施設(有料老人ホーム、90室)だ。
同案件の土地は、もともと飛島建設の独身寮があった場所であり、その跡地利用・有効活用の一環として計画された。
建築主(オーナー・事業主)は飛島建設であり、自社の土地を社会的なニーズの高い福祉施設へと転換し、かつ新会社のフラッグシップとするために、あえて「木造での建設」が選択された。
高齢者福祉施設の開発においては、「建物の所有者(建築主)」と「実際に施設を運営する事業者(運営会社)」が異なるケースが一般的であり、同案件もその形をとっている。
そのため、設計・施工にあたっては、両者の異なる視点からの要望を満たす必要があった。
建築主の飛島建設としては、「自社の跡地利用として長期的に安定した運用を行いたい」「中大規模木造建築としての高い技術的実証と、周辺環境への配慮、脱炭素への貢献を両立させたモデルケースとしたい」といった要望を持っていた。
運営事業者としては、「高齢者福祉施設としての使いやすさ、入所者・スタッフにとっての安全性や快適性を最優先としたい」といった要望がある一方で、日々のメンテナンス性や清掃のしやすさ、長期的な修繕コストの抑制を強く意識。外装については、木質化による劣化やメンテナンスの手間を懸念し、過度な木材の露出は避け、耐久性の高い仕様を要望した。
施主・運営者の要望に応える設計・施工の工夫
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