小さな家で提案する豊かさと循環の形「mini stock」住宅シリーズ展開
ネイティブディメンションズ 一級建築士事務所 代表 鈴木 淳 氏
新潟市の設計事務所ネイティブディメンションズの鈴木淳代表は、08年の独立以来、延床面積15坪~22坪ほどのコンパクト住宅を専門とし、小さい空間での豊かな暮らしを提案し続けている。全国の住宅事業者から注目を集める「小さな家」づくりへのこだわりを聞いた。
──全国の住宅事業者がコンパクト住宅の事例見学に訪れ、小さい家づくりを学びたいという問い合わせも多いと伺いました。そもそも、コンパクト住宅の設計に特化しようと考えたきっかけは何だったのでしょうか。

ネイティブディメンションズ 一級建築士事務所 代表 鈴木 淳 氏
[略歴]
1973年、新潟市生まれ。地場工務店、ゼネコンでの数寄屋建築、ツーバイフォー工法などの設計経験を経て、2008年に独立。木造の小さな家に特化し、小さい家ながらも高耐震で光熱費の少ない住まいを提案している。2018年には地元建築事業者と共同で、勉強会「住学(すがく)」を創設。現在、新潟県建築士会新潟支部支部長、新木造住宅技術研究協議会(新住協)新潟支部副支部長を務める。
2008年に独立して初めて、自分の強みがないことに気付きました。組織の中にいた時は自分の設計に自信があったのですが、いざ一人になってみると、それは会社があってこそのものだと痛感したのです。何を強みにしていくかを自分なりに突き詰めて考えた結果、たどり着いたのが「小さな家」でした。
18年前の当時は、注文住宅といえば延床面積40坪ほどが新潟県の平均値でした。しかし、子どもがいる家庭であっても、成長すれば家を出ていくのが当たり前で、最終的には夫婦二人暮らしになる。それなのに、なぜみんな「nLDK」という枠組みで大きな家を建てるのか。私自身、親からは成人後は一緒に住まないと言われていました。実家の空いた部屋を見て「これは一体何の役に立つのだろう」と感じていた実体験が重なり、大きな家に疑問を感じていました。
上野千鶴子氏の著書からも影響
脱nLDKのアンサーを求めて
また、社会学者上野千鶴子氏の『家族を容れるハコ 家族を超えるハコ』(2002年、平凡社)という本にも大きな影響を受けました。この本の内容は、建築家に対して非常に辛辣です。インターネットが普及し、家族がそれぞれ別の世界と繋がっている時代に、建築家はいまだに40〜50年前のnLDKという固定概念から抜け出せていないからです。どんなにデザインが奇抜でも、結局はnLDKという枠の中に収まっている。この固定概念こそが、暮らしを窮屈にしているのではないかという上野先生の批評は、私に深く響きました。そして、その問いに対する自分なりのアンサーを建築で表現したい、と強く思うようになったのです。
──御社のコンパクト住宅ブランド「mini stock(ミニストック)」の特徴を教えてください。
大きな特徴の1つは個室がないことです。「家族団らん」という言葉が形骸化している現代だからこそ、あえて個室をなくすことで、新しい家族の距離感を作ろうとしています。
性能面では、電気・ガスを含めた月々の光熱費が2万円以下に収まることを絶対ルールにしています。今は「断熱等級7」や「G3」といった性能の数値の競争になりがちですが、私はそうした数値に興味はなく、「十分に快適で、かつ光熱費が安く済む」という、ちょうどいいバランスを追求しています。家を小さくすれば自ずと空調負荷も減るため、過剰な設備投資をしなくても高い快適性を維持できるのです。この光熱費ルールがあるため、大きくても22坪ほどが限界で、一番小さいのは15坪ほどです。
設計面では、掃除のしやすさを重視しています。私は掃除が嫌いなのですが、部屋が汚れているのはもっと嫌いです。造作家具を建築本体と一体化させ、家具と壁の間の微妙な隙間をなくしたり、平らな部分を連続させたりするなどの工夫をし、掃除がしやすい空間づくりを心がけています。
また、小さな家だからこそ、収納にもこだわっています。大きな箱があれば何でも入ると思われがちですが、それは単なる「他人任せ」の設計です。私は家を「十徳ナイフ」のように捉えています。或る一つの段差が、収納にもなり、ベンチにもなり、時にはテーブルにもなる。住み手に「自由に使ってください」と投げるのではなく、プロとして「こういう使い方ができますよ」という多機能な提案を詰め込むのが私のスタイルです。
現在の価格は、設計費プラス建物本体価格3300万円ほどです。どんなにローコストで新築住宅を建てたとしても、光熱費が高ければ30年間の総支払い総額が増える。住宅ローンが約30年として、お客様にはその30年間の光熱費を加えた総額で検討してくださいと伝えています。「ミニストック」の場合、光熱費が月約2万円で年間では約15万円、30年で多く見積もって約500万円。30年間合計で総額3800万円となります。
2023年に自邸も建築
「めちゃくちゃ住みやすい」
──これまでどのような方々が設計を依頼されてきたのでしょうか。
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