建材・設備メーカーの商品開発トレンド2026 住宅の価値はどこへ向かうのか

 

ハウジング・トリビューン編集部では、毎年、主要な建材・設備メーカーを対象としたアンケートを実施し、住宅分野における商品・技術開発の最新トレンドを分析している。 今年は合計145件の回答をもとに、省エネ義務化の先を見据えたメーカー各社の戦略と、次なる開発の主戦場を明らかにする。

アンケートでは、今後、商品開発・技術開発を進めていくうえで重視するテーマについて、20の選択肢から「1番目に注力したい」、「2番目に注力したい」、「3番目に注力したい」という3つを選択してもらった。

商品開発・技術開発を進めていくうえで重視するテーマ

1番目に注力したいテーマについて最も多かったのは、高意匠の27件。次いで、省施工(人材不足対応)(20件)、省エネ(18件)と続く。

昨年の結果では省エネ、温熱環境が1位と2位を占めていた。2025年4月から新設住宅においても省エネ基準適合の義務化が始まり、さらに30年までにはZEHレベルへの引き上げも予定されている。こうした行政動向を背景に、高断熱住宅に関わるテーマへの関心が高まっていたが、足元ではその流れがひと段落し、次のテーマへと移行しつつあると推測できる。一方で高意匠は、昨年の結果では、1番目に注力したいテーマとしては7位であったが、断熱性能が「前提条件」となるなかで、他社との差別化を図るための付加価値や、住まいの心地よさを実現する要素として、注目を集めているといえそうだ。

2番目に注力したいテーマについては、省施工(人材不足対応)が22件でトップ。以下、リフォーム対応(17件)、省エネ(16件)が続く。3番目に注力したいテーマではリフォーム対応が17件で最も多かった。

1番目から3番目までの回答を合計した結果では、省施工(人材不足対応)が58件で最も多く、全体の13・4%を占める。次いで多かったのが高意匠で51件の回答があった。それ以降は、省エネ(49件)、リフォーム対応(45件)、長寿命(29件)と続く。

上位5つのテーマを昨年の結果と比較すると、昨年は5位に入っていた温熱環境が9位にランクダウン、代わって長寿命化が5位に入ってきている。

アンケートでは、それぞれの建材・設備メーカーに「2026年のイチオシ商品」も聞いている。各社のイチオシ商品と、アンケートの結果をもとに、建材・設備の最新トレンドを考察していく。

素材感やノイズレスが潮流
シンプルで落ち着く空間が好まれる

「高意匠」を今後の注力テーマにしている企業は、内装材から外装材、水廻り設備まで多岐にわたる。その中でも、大きく「素材感」と「ノイズレス」を実現する建材・設備が潮流となっている。特に高級住宅を中心に本物志向に応える商品提案が加速する。また、技術の進歩により、人工素材であっても本物さながらの質感を表現できるようになってきている。また、ノイズレスなデザインは生活感を抑えスタイリッシュな空間を実現できるだけでなく、素材感のあるデザインとも相性が良く、人気が高まっている。

阿部興業の「urushi -漆-」は、超高級住宅や迎賓館などを想定したウルトラプレミアム事業の一環として開発された木製ドアで、漆の深い艶をまとい、国産ナラ材の美しい木柄の表情が空間に高級感と落ち着きをもたらす。曲木技法を用い戸先に15度の角度を持たせてレバーレスを実現。気品ある意匠と使い心地を兼ね備えている。

東洋テックスの「cubisme(キュビスム)」は、新しく開発した多視点画像3Dモデル技術によって、杢目を際立たせ、節や照りの陰影など樹種の特徴を追求したフローリング。天然木化粧以外のフローリングでは業界初となる横溝を実現し、ピースを強調したり一枚板のように見せることができ、無垢のような表情も再現する。

大日本印刷は、高い耐傷性、耐汚染性、耐指紋性を維持しつつ、低艶と滑らかな手触りを実現した化粧シート「DNP高質感化粧シート サフマーレ マッティシモ」を推薦。より自然な風合いを求め、家具や内装のトレンドが光沢仕上げから低艶に移るなか、艶消し剤を使わずにグロス値(光沢度)を5%以下に抑え、表面の微細な凹凸の効果により、天然のシルクや木地のような滑らかな触感を実現する。

LIXILの高性能窓「TW」は、フレームの露出を極限まで抑えることで、高い断熱性能とスリムな意匠を両立している。アルミ樹脂複合サッシの強みを最大限生かし、従来の樹脂窓と比べガラス面積を約30%拡大。景色や光を最大限に取り込む。クレセントなどのパーツもデザインのスマートさと操作性にこだわっている。

アイジー工業は、遠目にはフラットに見えるが、近づくとシャープなラインが見える「SP-ガルノート」を推す。丁寧な暮らしや自然体の住まい方を志向するナチュラル層を主なターゲットに設定し、金属素材だからこそできる繊細さを表現した。鋼板の厚みを薄くすることで、機能性を保ったまま高いコストパフォーマンスを実現している。

ミラタップの「インヴィエラ ビルトイン冷蔵庫」は、同社初のオリジナル家電として5月に発売。ミニマルデザインと生産効率化により、13万8000円(税込)~というリーズナブルな価格を実現する。面材(仕上げ材)は付属しておらず、自由な面材と組み合わせられ、カップボードと同じ面材・サイズ感にすれば、生活感が出がちな冷蔵庫の存在感を消したノイズレスな空間にすることができる。

人材不足への対応は喫緊の課題
プレカット・パネル化で施工効率向上へ

建設業界では、就労条件などを背景に就業者の減少が続いており、担い手の確保が慢性的な課題となっている。24年4月より開始した時間外労働の上限規制なども重なり、建材・設備商品において省施工・省力化で効率よく施工できることは必須要件となりつつある。

カネカケンテックは、「断熱材割付システム カネライトフォーム プレカット」を提案。断熱材をプレカットして納品することで、現場での工期短縮、加工費や廃棄処理費の削減を実現し、生産性を向上する。

ビスダックジャパンの「『在来軸組六工種』パネル構法」は、在来工法の六工種(床・外壁・間仕切・天井・小屋・屋根)をパネル化し、仕口と組み合わせたもので、断熱材だけでなく電気配線も内蔵し、超短工期を実現する。施工も簡単なため、熟練工が不足している現場でも採用しやすい。

また、サンゲツが推薦する「イノパネル」は、壁紙と石膏ボードが一体化した新建材で、足元では主にオフィスや商業施設など非住宅分野の施工性向上へ活躍が期待される。乾燥待ちが発生するパテ工程や、作業音が発生しやすいビス打ち工程が不要なため、スケジュール調整がしやすく工期短縮につながる。

省エネ市場はエネマネと脱炭素への貢献がポイントに

2025年4月の省エネ基準適合義務化、そして30年のZEHレベルへの引き上げを控え、高断熱住宅を実現する性能の建材・設備が整備されてきた。こうしたなか、省エネの分野では、さらなる高断熱を目指す住宅事業者に向けた提案が進む一方、素材の環境配慮(脱炭素化)や、AI・IoTを活用した家全体のエネルギー最適化まで視野に入れた提案を行う企業が増えている。

旭ファイバーグラスのイチオシ商品は、国内で初めて、建築用真空断熱材のJIS認証を取得した「VIP‐Build」。熱伝導率は初期性能0.004(W/m・K)と非常に高い断熱性能を有しており、16㎜との薄さで内張りによる断熱施工や既存住宅の断熱改修でも高い性能を確保できる点が特徴で、断熱材の新たな可能性を切り拓く。

オーウェンスコーニング・アジアパシフィックは、植物由来バインダーと90%以上のリサイクルガラスを使用し健康と環境に配慮した断熱材「エコタッチ」を薦める。最高水準のVOC安全性と難燃性フィルム梱包で室内の空気環境に配慮。撥水加工で結露を防ぎ初期性能を長期維持する。

BASF INOAC ポリウレタンの木造住宅向け現場発泡硬質ウレタン断熱材「FOAMLITE Bio Meguru SL-50e」は、国内業界で初めて植物由来の原料を使用しバイオマスマークを取得している。

社会的なライフサイクルカーボン削減の要請などもあり、住宅のガス・電気といったエネルギーの削減だけでなく、製造時や運用時に発生するCO2の抑制により、環境保護に貢献する商品が存在感を強める。

一方で、25年度の「子育てグリーン住宅支援事業」では、GX志向型住宅が新設され、住宅業界には住まい全体でエネルギーを賢く制御することが求められてきている。

シャープエネルギーソリューションは、太陽光・蓄電池・エコキュート・V2Hに加え、エアコンや冷蔵庫などの家電まで統合し、家庭全体のエネルギーを自動で最適制御する「Eeeコネクトシステム」をイチオシ。発電した電気を効率良く自家消費することができ、台風などで気象警報が発令されると、蓄電池だけでなくEVにも充電することで停電に備えられる「気象警報連携」にも対応する。

また、ノーリツの「自然冷媒ハイブリッド給湯機「HPHB R290」は、独自の学習運転「スマート制御」機能の予測精度向上により、高い省エネ性と環境性能を備えた給湯機。環境負荷の低いノンフロン自然冷媒R290を国内で唯一採用しており、製品運用時のCO2削減にも力を入れている。

高まる自家発電自家消費のニーズに応えるべく、創電商品の提案も相次ぐ。DMM.comの「DMM.make Roofia Tier」は、太陽光パネルの効率的な設置と導入しやすい価格帯を実現する金属横葺屋根材。同社の太陽光発電システム「DMM.make solar」を同時購入し、屋根に穴をあけない「掴み金具」で施工することを条件に「漏水保証10年」を付帯することができ、パネル設置に起因する漏水リスクを物理的・制度的に解消する。

新設着工の低迷でリフォーム向けの提案に勢い

国土交通省の発表によると、25年度の新設住宅着工戸数は前年度比12.9%減の71万1171戸となった。リーマンショック直後、09年度の77万5277戸を大きく下回り、1962年度の60万3090戸に次ぐ低水準だ。こうしたなか、リフォーム市場への注目度が高まっている。例えば、新たな住生活基本計画では、既存住宅の流通と質向上を目的として「既存住宅取引及びリフォームの市場規模」を23年の16.9兆円から35年に20兆円まで拡大する計画が掲げられている。

YKK APのイチオシ商品である樹脂製内窓「ウチリモ」は、窓枠をスリム化し、室内側へ持ち出す構造を採用することで、取り付け部の見込み寸法が 最小39㎜(FIX窓は45㎜)あれば設置可能とした内窓。昨年夏に発売して以降、好調な引き合いを得ている。今年に入り、内開き窓・開き窓テラス・FIX窓のプロジェクト窓を追加し、フルラインアップで様々な用途に対応できる体制を整えた。

永大産業は、今年6月に発売予定の薄型リフォーム用上貼りフロア「カバーリエ」の提案に力を入れる。既存の床を剥がさず上から貼るだけで簡単にリフォームができる。厚さ1・8㎜の薄型設計のため、サッシの枠との段差ができにくく、建具下部や見切りなどとも干渉しない。

リンナイの「ECO ONE X5 Plug-in Model」は、電源に屋外コンセントを利用する100Vコンセントプラグを採用した、専用電源工事不要のハイブリッド給湯器。基礎工事・電気工事が不要のため、従来の給湯器から容易に取り替えられる。

健康管理や睡眠サポートなど住んで健康に近づく家に注目

住宅に求められる役割は、単なる「住む場所」から、健康的な暮らしを支える空間へと広がっている。近年は、睡眠の質や日々の体調管理への関心が高まっており、住環境を通じて、居住者の健康維持や質の高い睡眠をサポートする提案も増えている。

TOTOのウォシュレット一体形便器「ネオレストLS-W」は、ウォシュレットに内蔵した便スキャンセンサーで落下中の便をスキャンし、便の形(硬さ)・色・量を自動で計測。いつも通りにトイレを使うだけで、簡単にデータを取得でき、自身の健康チェックに役立てられる。

オーデリックの「LC-FREE CIRCADIAN サーカディアン自動調光・調色」は、起床時刻と就寝時刻をセットするだけで自然光の周期を自動で再現する照明。生体リズムを整え、健康的な生活をサポートする。

住宅性能の底上げが進む一方で、市場では意匠性や施工性、健康への配慮など、住まいの付加価値を高める提案への関心が高まっている。加えて、人材不足や脱炭素化、既存住宅活用といった社会的要請への対応も不可欠となっており、建材・設備メーカーには多面的な価値提案が求められる時代に入った。各社の商品・技術開発の方向性は、こうした住宅市場の変化を色濃く映し出している。