本当に環境の時代?/一石二鳥の庭づくり

本当に環境の時代?

〈庭の千草も 虫の音も 枯れて寂しくなりにけり あぁ白菊 あぁ白菊 ひとりおくれて咲きにけり〉

里見 義

酷暑の夏もようやくホコをおさめて秋風が心地よく感じられるようになってきた。庭の樹々も色づいてきた。何だかんだ言っても四季が多少なりとも感じられるのは日本人の贅沢なのだ、と思う。

最近、“庭”に関していくつかの興味深い話を別荘や中古住宅を手がける仲介業者から聞いた。築年数がかなりたち、建物もやはり古さをいなめず、チラシをばらまいても、もう一つ手応えがなかった。そこで別荘も郊外の中古住宅も、建物や敷地面積をうたうだけでなく、庭木もセールスポイントにした。別荘では敷地内の樹木をすべて調べ、それぞれに値段をつけた。唐松が何本、紅葉が何本、小梨が何本、大きな栗の木もあります。それらを植木屋さんから購入すると、この土地の樹木の総価格は500万円を超えます。土地代なんて安いものです、と言ったところ、すぐに売れた。郊外の中古住宅も同じで庭木の樹種などを表示し、秋になると金モクセイや紅葉がきれいです。カリンもカリン酒などつくれば、健康にいいですよ、をうたい文句にして売ることができたというのだ。

環境の時代と言われた21世紀もかなりの時間が過ぎた。地球規模でカーボンニュートラルが掲げられてもいる。だが現実にはどうだろう。地球温暖化は止まるどころか、悪化の一方だ。北極の氷山が溶け、集中豪雨・洪水の頻発、大規模な山火事など、いずれも地球温暖化が原因とみられている。企業にも環境経営の推進が求められ、環境効率性の追求は不可欠だ。技術力、経済力の向上で環境負荷の低減を目指さなくてはならない。資源生産性を10倍に向上させる“ファクター10”の実現も要求されている。にもかかわらず、予測を上回るスピードでの地球温暖化、いや地球沸騰化が進行する仕末。最大の環境破壊である戦争を仕掛ける不埒者らを目の当たりにすると、環境なんてお題目だけだろうと、やり切れなさが募るのだ。

だが、一般の消費者の環境に対する眼は間違いなく厳しさを増している。環境経営をおろそかにしている企業の商品には手を伸ばさないし、アナリストの評価も環境貢献企業へのポイントが髙いのは当然のこととなる。そのなかでも、環境に大きな責務を負っているのが住宅・不動産業界と言っていい。土地開発、街づくりは自然環境に手を入れる事業だ。一歩、間違えると環境破壊の汚名を着せられかねない。環境や景観にいかに配慮しているか、完成後には従前に増す美しい街となり、資産価値の髙い街になる、との具体的なデータや可視化の提示も必要になる。前述の不動産仲介業者の例などまさに新たな視点からの販売といっていいだろう。さらに最近では、樹木の持つ髙いCO2吸収量や気温上昇抑制効果など、地球環境面からのデータを示す動きも出ている。これは企業だけでなく、購入者にとっても、わが家は地球環境にこれだけ寄与している、との自慢にもなる。これからは、そういう時代になるということだ。


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