2023.7.19

25年BIM図面審査開始へ環境整備が加速

PLATEU、不動産IDと連携、新産業創出へ

BIMを活用した図面審査の2025年の開始に向けた環境整備が加速している。国土交通省は、新築する建築物のほぼすべてが経る確認申請をBIMデータで行うことができるようにすることで、申請・審査の効率化を図るとともに、共通化されたBIMデータやその伝達手法を社会に共有し、BIMの可能性をさらに広げていきたい考えだ。

BIMとはコンピュータ上に作成した3次元モデルの中に、建物のさまざまな属性データを追加した統合データベース。企画から設計、積算、施工、維持管理、運営まで、建物のライフサイクル全体に及ぶあらゆる工程で、建物のさまざまな情報を有効活用するための仕組みだ。

BIMを使い、設計の早い段階で業務負荷を集中させ、建築物に関するさまざまな情報を可視化し、各種シミュレーションを実行して設計内容の検証を行うこと(フロントローディング)により、迅速に問題点の改善を図り設計の質を高められる。スケジュールの前倒しやコスト低減といった効果も期待できる。建築確認においてもBIMを活用した事例が複数公表されており、今後ますます増えることが予想されている。

一方で、確認申請図面の表現が申請者ごとに異なっていることからその標準化、また、確認審査に適したBIM閲覧用のソフトウェア(BIMビューアソフトウェア)の整備などが課題となっていた。こうした中で、国土交通省の建築BIM推進会議は23年3月、「建築BIMの将来像と工程表(増補版)」を公表した。「建築BIMの社会実装の加速化」に向け、「BIMによる建築確認の環境整備」と「データ連携環境の整備」を重要課題と位置づけ、新たに個別のタスクフォースを設置。25年度にBIM図面審査の開始を目指す方針を示した。

図1 建築BIMの将来像と工程表 検討対策について
図2 建築BIMの将来像と工程表 ロードマップ
図3 BIMによる建築確認

BIM図面審査では、BIMデータから出力されたPDF図面(従来と同様の申請図書)と共に、IFC(BIMの共通ファイルフォーマット)を参考資料として提出する。図面間の整合チェックが不要となり、審査期間の短縮に寄与することが期待されている。25年度に開始、27年度から全国展開し、さらに28年度以降、IFCデータそのものを審査に活用するBIMデータ審査の実現を目指す。審査に必要な情報が自動表示されることにより、さらなる審査の効率化が期待できる。

建築BIM推進会議の一部会である「建築確認におけるBIM活用推進協議会」は23年6月、23年度の検討成果の報告会を開催した。一般建築作業部会では、法令上必要な情報を十分に、かつ、適切に確認できる表現方法を検討。プロトタイプのBIMビューアソフトウェアに「審査ビュー」、「カラーフィルター」、「法チェック表」などの新機能を実装し審査を試行した。また、設計者がさまざまな方法により作成したBIMモデルから、審査で扱う属性を受け取り確認審査が行える手法(パラメータマッピング)について検証。申請・審査の共通化を図るために、審査に必要な標準パラメータを定め、この標準パラメータを用いてモデリングする方が合理的であることを示した。

戸建住宅等作業部会では、昨年度作成した戸建住宅サンプルモデルを改作、法的要素の視認機能を強化し、戸建住宅などの審査に適したBIMビューアソフトウェアの仕様の検討を行った。

建築BIM推進会議の委員長であり、建築確認におけるBIM活用推進協議会の会長を務める松村秀一氏(早稲田大学理工学学術院総合研究所上級研究員・研究院教授)は「BIMと共に、日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクト『PLATEU』、不動産ID化、この3つを連携させていく構想の議論も始まっている。建築自体が情報化することによって、単に建築生産のさまざまな業務の合理化にとどまらず、新しい産業を生み出していく源になっていく可能性がある。その時にBIMによる建築確認の環境整備は要となる。実用化の一歩手前のところまで来ている」と話す。
BIMの社会実装に向け環境整備が加速度的に進んでいる。新産業の創出にもつながる大きな潮流となっていきそうだ。