首都圏 新・賃貸マーケット
コロナ禍で需要が変化
コロナ禍で暮らしや住宅に求めるニーズが変化する中、首都圏の賃貸住宅市場にも変化が現れている。
人口流入が減少し東京23区の需要にブレーキが掛かる一方で、家賃を抑え居住面積を広くとれる郊外エリアの需要が高まっている。
また、仕様もテレワークなどの新しい生活様式に対応したものやZEHなどの省エネ性能が高いものへの注目度が高まっている。
コロナ禍を契機に変化する首都圏の賃貸住宅マーケットを追う。
東京23区の賃貸需要が減速 郊外の需要高まる
23区で空室率が高まる
コロナ禍の人口流入減少が影響
コロナ禍で、首都圏の賃貸住宅マーケットに変化が起きている。
これまで、職住近接を求め、都心のオフィス街に近い東京23区の居住ニーズが高く、「都心一極集中」という状況だった。しかし、コロナ禍でその状況に変化が生じてきた。
首都圏の不動産マーケットに詳しいタスの藤井和之主任研究員によると、東京23区の2020年12月の賃貸住宅の空室率は、国の住宅土地統計調査のデータに基づいた推計では16%、不動産デベロッパー・管理会社公表データに基づいた推計では7.9%であり、コロナ禍に0.3%〜1.1%押し上げられた可能性が高いという。「立地の良い駅前の需要は変わらず高いが、競争力の低い駅から離れたアパートタイプの物件で空室率が高まっていると考えられる」(藤井主任研究員)。
23区の空室率の高まりは、比較的空室率が低い大手の住宅事業者からも聞かれる。大東建託では23区の空室率は「過去最悪の水準」(審査部・阿部一雄部長)だという。同社の空室率は2019年は最も高まっても0.81%だったが昨年は2.48%と3倍まで高まった。また、旭化成ホームズも2020年度の空室率は前年比で0.3〜0.5%程度悪化し2%台となっている。集合住宅事業推進部の福田浩司部長は「23区でやや需要減少の傾向が出ている」と話す。
空室率が高まっている要因について、タスの藤井和之主任研究員は「23区で賃貸住宅が供給過剰となっているため」と指摘する。コロナ禍で就職や学校進学で上京する人が減少し、23区への人口流入が減っている。総務省の人口移動報告によると、東京23区への流入人口はコロナ禍で減少し、昨年7月から今年2月まで8ヶ月連続で、転入者よりも転出者が上回る「転出超過」となった。一方で、23区での賃貸住宅の供給量は転入者が減少した数ほど減らず、結果的に供給過剰となったということだ。タスの藤井和之主任研究員の試算では、供給過剰は少なくとも約5万4000戸にものぼるという。
供給過剰の影響は、賃料にも影響を及ぼしている。タスの調査では、昨年の第3四半期から23区で賃料が下がり始め、昨年12月時点の賃料指数(2004年第一四半期を100とした比率)は東京23区で前期比マイナス1.73となった。また、アットホームの「賃貸マンション・アパート募集家賃動向」でも、昨年3月以降、23区の家賃(マンション)のうち50㎡以下の面積帯で下がる傾向にある。
東京近郊の需要が好調
テレワーク前提に住み替え
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