どうなる2021年の住宅マーケット①

インタビュー(住宅市場 / ストック市場 / 防災対策 /コロナ対策 / 住宅生産の合理化・省施工化 / 新しい暮らし方・住まい方)

2021年の幕が上がった。
コロナ一色であったといっていい2020年を経て、新たな年はどのような一年になるのだろうか。
人口減少、少子・高齢化、環境対策への強い要請など社会的な環境変化に加え、新型コロナウイルスの蔓延は住生活産業に劇的な変化を促そうとしている。
新設住宅着工はいよいよ70万戸時代に突入しそうで、新築をベースとした市場はその姿を大きく変えつつあり、既存住宅の取引量が増大している。
また、東京一極集中にストップがかかり、郊外への移住が顕在化し始めた。
一方、環境対策や自然災害対策などにより、省エネや耐震など住宅の性能向上はこれまで以上に強く求められそうだ。
特に空き家問題も踏まえ、既存住宅の利活用、更新が大きな課題となっている。
戸建からマンション、既存住宅流通、移住住替え、省エネや災害対策など、成長の鍵はどこにあるのか──。


【住宅市場】税制改正や経済対策が住宅着工を後押し 住産業活性化の原点の年に

新型コロナ感染拡大の影響で着工戸数の大幅減少が見込まれる中、2021年の住宅市場はどうなるのか。50年のカーボンニュートラル達成向け住宅の省エネ化は待ったなしだ。21年の住宅産業の展望を、(一社)住宅生産団体連合会の阿部俊則会長に聞いた。


(一社)住宅生産団体連合会
阿部俊則 会長

──2021年の住宅着工をどう見ていますか。

2020年は新型コロナウイルス感染拡大で本当に大変な年でした。しかし、長い目で見ると、この年があったからこそ、変わるきっかけになったと言える年だったかもしれません。働き方改革がその一例です。会社に来ることは大切ですが、出社しなくても、仕事はうまく回ります。テレワークが徹底するきっかけになったのが2020年だったのではないでしょうか。一般消費者からすると、住宅について真剣に考える年であったように思えます。

コロナ禍で緊急事態宣言の発出による外出自粛などもあり、家にいる時間が増えました。テレワークをしていると今まであまり気にしなかった家の狭さや、風呂など水回りを変えたいといったように、家の中でどうやって過ごすかということを、家族と真剣に考えるきっかけになった年だったのではないでしょうか。

2019年10月の消費増税で、住宅取得に慎重になっていた潜在需要がありました。コロナをきっかけに家について真剣に考える消費者の需要を顕在化させ、新築戸建ての受注はコロナ禍で先行き不透明ではありますが足元では戻りつつあります。

当初はリーマンショックのような住宅へのダメージも懸念されていましたが、あの時は、不動産価格は完全に下落し、収入も落ち込み、完全に住宅市場は冷え込んでいました。立ち直るまでにも結構時間がかかりました。
今回は、あの時とは違う気がします。ただ、着工数でみると2020年は80万戸前後が見込まれており、我慢の年ではありました。受注は戻りつつあります。

さらに2021年度税制改正では、住宅ローン減税の入居期限の2022年末までの延長や対象床面積条件の40㎡以上への緩和が盛り込まれています。また、省エネ性能に優れた住宅購入に対しては最大で100万円相当のポイントが付与される「グリーン住宅ポイント」制度も創設されました。税制改正や経済対策が住宅消費を後押しし、2021年の戸建の住宅着工が回復できればと思っています。

ただ、賃貸住宅は厳しい状態が続くことを心配しています。グリーン住宅ポイントでは、賃貸住宅のトップランナー基準に適合する高い省エネ性能を有する、全ての住戸の床面積が40㎡以上の賃貸住宅に戸当たり10万ポイントが付与されます。この経済対策が刺激になり、着工回復につながることを期待しています。

──2050年までのカーボンニュートラルに向けて2021年は元年の年なります。住宅産業にとっては、どんな1年になりますか。

日本の環境技術は1990年代世界でトップクラスでしたが、今では遅れをとっています。再生エネルギーは欧州で30%を超えています。2050年までのカーボンニュートラルに向けてようやく動き出しましたが、その間にあまりにも世界が進み過ぎて、日本が停滞し、完全に追い越されてしまっているという状態です。


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