民法改正で何が変わる?

問われる建築時の性能管理能力

2020年4月の民法改正により、これまで使用されてきた「瑕疵」が「契約不適合」という分かりやすい言葉に言い換えられた。
これにより、消費者が契約時に約束された性能や品質に対してより敏感になり、厳しい目が向けられることも予想される。
住宅事業者には、どのような対応が求められているのか。

「契約不適合」が明文化
契約時の品質、性能設定が重要に

改正民法が2020年4月に施行された。今回、「債権」に関する部分の、大まかには契約に関係するルールが改正されており、住宅建築に関する契約にも大きな影響を与えそうだ。改正民法では、これまでの「瑕疵」という言葉が原則撤廃された。改正前の民法における瑕疵とは、判例で、「契約の内容に適合していないこと」を意味するものとして理解されていたが、今回の民法改正により、「目的物の種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないとき(契約不適合)」と明文化された。

民法改正がもたらす影響について住宅建築業界の法制度に詳しい匠総合法律事務所の秋野卓生代表社員弁護士は、「民法のように基本法になるほど、改正のインパクトは大きい」としつつ、「『品質』や『契約不適合』という言葉に関連付けて、民法改正により即、『自社の品質基準を持たなければいけない』、あるいは『品質検査を実施しなければならない』といったことをあおり、ビジネスに結び付けようとする動きもみられるが、これは間違い。『瑕疵』が『契約不適合』に変わることで、住宅事業者が顧客に対して負う責任の範囲が広くなるわけではない。民法改正以前から性能、品質管理をしっかり行うことで、瑕疵発生のリスクを低減できることに変わりはない。リスク低減のために、自社の品質基準をつくり、品質検査を行い、品質を高めていくことはいいことだが、民法改正により、それらのことをしなければいけないと言い切ってしまうことは間違いであり、由々しき問題」と指摘する。

では、住宅事業者には、どのような対応が求められるのか。秋野弁護士は、民法が定めるルールについて、当事者間の「特約」として設けている「請負契約書」と、「請負契約約款」を改正民法の規定に即した形で準備しておく必要があると指摘する。

具体的には、請負契約書を書き換え、「目的物の種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないとき」には、「別添の保証書に従い、受注者に対し相当の期間を定めて本契約の目的物の補修による履行の追完請求をすることができる」といった文言を入れることを推奨する。施主は、何か契約上のトラブルが発生した際には、この条文を確認して工務店に対してクレームを入れることになる。「今回の改正では、この条文が格段に分かりやすくなり、種類、品質、数量の契約不適合によって責任追及されるケースが多くなると予測している」(秋野弁護士)。

契約不適合の種類、品質、数量とは


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