国交省、不動産のESG投資で報告書
開示情報は具体的な取り組み、客観的な数値を
不動産のESG投資の促進を検討している国土交通省の有識者委員会が6月25日、報告書をまとめた。
投資の判断材料で重視されるESGに関する企業の非財務情報は抽象的なケースも多い。
報告書では情報開示のあり方として、客観評価できる数値が望ましいとすると同時に、現時点では数値化が難しい地域社会や災害対応などは定性的でも有用とした。
近年、投資家がESG(環境・社会・ガバナンス)の視点で投資先を選ぶ「ESG投資」の動きが世界的に高まっている。国は、不動産でもESGの概念を取り入れた投資を活発にし、不動産取引の安定化を図りたい考え。このため、国内の実情や社会的課題に応じた不動産へのESG投資を促進する上での留意点や方向性などを報告書で示した。
ESGの概念を使って不動産投資に仕向けるためには、他の株式などと同様、企業が開示する非財務情報を投資家は大きな手掛かりにする。ただ、現状では、どんな情報を開示すれば、ESG投資として有益なのかといった明確なルールがあるわけではない。報告書では各企業等の取組みとして「情報開示のあり方」に触れた。
ESG投資に関する情報を十分活用するためには、「開示される情報の量や比較容易性が求められる」と指摘。情報は「客観評価できるような数値が望ましい」としながら「地域社会や災害対応など現時点で数値化が難しい分野は定性的な情報開示も有用」と明記した。ただ、データ入手などの課題もあることから、2015年に金融安定理事会が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)の提言も配慮するなど、「多角的な視点から真摯に検討すべき」という点も盛り込んだ。
実際にESGを意識した取組みをする際、環境や社会という抽象性から、どういった内容の情報を具体的に開示すればいいかわかりづらさもある。報告書では「環境」へのインパクトとして省エネ性能等の向上を挙げた。具体の取組みとして、CASBEE認証やZEBなどを紹介。「社会」のインパクトでは、今年5月から始まった「CASBEEウェルネスオフィス」などによる健康性・快適性の向上の他、地域社会・経済への寄与、災害、超少子高齢化への対応を盛り込んだ。
ESG投資はSDGsの実現に向け注目されているが、民間の果たす役割が大きい。このため、国は税制や補助制度などの政策支援などで部分的に関わることになりそうだ。
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