世帯数の減少によって住宅施策も重要な転換期を迎えるのではないか
国土交通省 住宅局 住宅生産課 宿本 尚吾 課長
売り側の問題にも着目し、既存住宅の流通量の問題を考える
―現状と目指すべき将来像について、もう少し見方を変えてみることも必要になりそうですね。
現在、既存住宅の流通を促すための取り組みを進めていますが、これまでは主に既存住宅を買う側の問題に注目してきました。新築に比べると不安や不満が多く、そこを解消することで流通を活性化しようとしてきたでのす。こうした取り組みが重要であることは間違いありませんが、少し視点を変えてみると違う課題も浮き彫りになってきます。
2018年の住宅・土地統計調査や住民基本台帳人口移動報告などをもとに推計すると、1年間に居住者が退去した持家は約59万戸ありました。そもそも、この59万戸が全て流通にまわったとしても、アメリカやイギリスのような流通量は確保できません。
なおかつ、約59万戸のうち、約22.9万戸は賃貸住宅などへ転居しています。このなかには、転勤などによって持家はそのままにして、新たに賃貸を借りた方々などが含まれています。こうした方々が持家を売却するとは考え難い。
さらに約8.1万戸は単身者が自宅で死亡したもので、約20.4万戸は単身者が福祉施設などに入居したものとなっています。こうしたケースでも持家を売却して、流通市場にまわるいうことは少ないと予想できます。将来的に空き家になっていくリスクも抱えています。
残りは、新築住宅を取得したケースが約5.4万戸、既存住宅を購入したケースが約4.1万戸、既存住宅を相続したものが約4.1万戸。こうした事例であれば、従前の持家を売却することもあるでしょう。
日本の既存住宅の流通量は、年間15~16万戸ですが、今、説明した数字を見ていくと、そもそも市場に“売り物”として出てくる住宅が少ないと考えられます。買う側の問題だけでなく、売る側、すなわち既存住宅を供給する側の問題が流通量の増加を阻んでいる可能性があるのです。
例えば、リバースモーゲージなどを活用して、高齢者の方々が住宅を担保に資金を得て豊かな暮らしをすごし、亡くなった後は適切に住宅が処理され、使えるものは流通に乗っていくような仕組みが構築されていけば、空き家の発生リスクを抑制しながら、既存住宅流通量も増やしていける可能性があります。 こうした点にも留意しながら、世帯数が減少していくという大きな変化を捉えながら、様々な社会課題の解決に寄与するような住宅施策を検討していくつもりです。
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