東京2020オリ・パラ成功のカギはパラリンピックが握る
障がい者スポーツの記事がようやくスポーツ面に、の社会変化
東京2020パラリンピックまで半年を切った。8月25日から9月6日までの13日間、22競技、539種目に4400人の選手が参加する。世界からこれだけ多くの障がい者を短期間に受け入れるのは日本にとってもちろん初めてのこと。競技会場、選手村はもとより、街中でのアクセシビリテイの重要度がバリアフリーを基本にいやがうえにも高まる。「ハード、ソフト両面でガイドラインを作り準備を進めているが、難問が次から次へと押し寄せる。例えば、車いすにしても一台、一台なら対応するすべもあるが、グループでの移動や、宿泊への対応の視点が抜けてしまう」と語るのは、オリ・パラ組織委員会のパラリンピック・ゲームズ・オフイサー、パラリンピック統括室長の中南久志さん。エレベーター一つにしたって籠が狭く、大行列になりかねないし、通路にしても、トイレにしてもそう。IPC の承認を得て、「アクセシビリテイ・ガイドライン」を作成し、それに基づき競技施設や選手村の整備を進めているが、既存施設の多い競技会場や街なかの民間施設は改修が大変で、そう簡単にはいかない。それでも、「空港、鉄道、ホテルなどいろいろなところにお願いに回っており、理解を得られる場面も増えている」と着実な進展に手ごたえを感じている様子。
そして何よりもうれしいのは、パラリンピックへのわが国での理解が急速に高まっていることだという。「以前はTVコマーシャルで障がい者アスリートを取り上げるなどということはありえず、差別につながるような意識で見られもしたが、今はどんどん放映されているし、障がい者スポーツの魅力を伝える番組も増えている」とし、「メデイアもそう。かつて障がい者スポーツの記事は社会面や文化面だったのが、今はちゃんとスポーツ面で扱ってもらえる」と社会の障がい者スポーツを見る目が大きく変わってきていることを素直に喜ぶ。今、組織委員会の職員数は2月時点で約3000人、大会時には8000人に増え、ボランテイアも11万人以上が見込まれている。「この人たちが大会に携わり、運営のノウハウを取得することの意味は大きい。これこそまさに東京オリ・パラの何よりのレガシーであり、収穫といっていいのかもしれない」とも。そして、このいわば選手との接遇ともいえるソフト面でのアクセシビリテイについても大会スタッフ、ボランテイアなどサポートの基礎的な内容について障がい当事者団体などを含む関係者の参画のもと「サポートガイド基礎編」を作成しており、「心のバリアフリー拡充に向け、幅広い業界で指針として自主的に活用してほしい」と、レガシーへの意気込みをみせる。
ある人に言わせると、東京2020オリ・パラの成功のカギはパラリンピックが握っているとも。なぜなら、障がい者の人たちは、健常者の人たちの明日の姿なのだからと。確かに、年齢を重ねるごとに、手足は弱まり、耳は遠くなり、目も白内障や緑内障になっていく。障がい者の領域に入ってくるというわけだ。パラリンピックの成功こそが、誰もが生き生きとした人生を送ることができる社会、すなわち「共生社会」の実現を目指せたということにつながる。未来に何が残せるかーー。パラリンピックの役割は重い。
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