データを鵜呑みにしたプロジェクトは危ない 綿密なフィージビリティ調査が不可欠

利用期を迎える国産材を活用して林業の成長産業化に導くにはどのような取り組みが求められているのか。林材ライターの赤堀楠雄氏が地域で芽生える国産材活用の事例をルポする。

利用可能な資源量を把握する

国内の森林資源は年々増加していて、林野庁の調査によると、2017年時点の蓄積量(立木材積)は約52億㎥に達している。年間の増加量は約7000万㎥で、立木から丸太への利用率を60~70%としても、年間木材需要(8000万㎥程度)の過半を資源の増加分だけでまかなえる計算になる。

だが、これはあくまでも統計上の数値であることに留意しなければならない。

山の木を伐採するには所有者との調整や伐採届の提出、人員・機械の手配など、さまざまなプロセスが必要で、そこに木が立っているからといってすぐに利用できるものではない。傾斜が急だったり、アクセスが悪かったりすると、資源はあっても利用は困難だと判断しなければならないケースも出てくる。

ところが、林野庁や地方自治体の林務セクションから、増加する資源を利用する必要性が盛んにアナウンスされていることを受け、木材業界や建築業界では、大型工場を整備したり、大型建設プロジェクトを立ち上げれば、必要な量の木材が簡単に手当てできると踏んでいる向きが多いように見受けられる。

地域の森林資源を当てにした事業を立ち上げる際には、必要な量を本当に調達できるのかのフィージビリティ調査を自ら行うことが必要になる。

生産を担ってくれる林業関係者との顔つなぎも欠かせない。それなのに見通しが甘く、根回しも不十分なまま事業をスタートさせてしまい、走り出した後に運営に苦慮するケースが跡を絶たない。


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