怒涛の制度改正で住宅高断熱化が加速
次世代スタンダードの普及へ 対応急ぐ断熱材メーカー
2050年脱炭素社会の実現に向けて国を挙げた住宅高性能化への取り組みが加速している。22年に住宅性能表示制度が改正され、断熱等性能等級に5・6・7が新設された。25年4月には、すべての住宅・建築物で省エネ基準(断熱等級4)への適合義務化がスタートする。また、30年までに省エネ基準のZEHレベル(断熱等級5)への引き上げ、適合義務化が予定されている。住宅会社の間では、将来を見据え、上位等級である断熱等級5・6・7への取り組みも広がり始めている。こうした追い風が吹く断熱材業界では、次世代の断熱スタンダードの普及、新たな需要創造を目指し、ハード・ソフトの両面から提案を強化している。断熱材業界の勢力図も大きく変化していきそうだ。
住宅の省エネ性向上の点で大きなターニングポイントとなったのが2020年の「2050年カーボンニュートラル」宣言だ。
住宅分野では国土交通省、経済産業省、環境省による「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」が21年に設置され、新築住宅への省エネ基準への適合義務化、新築住宅への太陽光発電の設置義務化などの議論を進めた。同検討会がまとめたロードマップでは、30年時点で新築される住宅にZEHレベルの省エネ性が確保され、新築戸建住宅の6割に太陽光発電が導入、50年にはストック平均でこの性能が確保され、太陽光発電の導入が一般的となることなどを打ち出した。
「2050年カーボンニュートラル」を踏まえ、22年6月には改正建築物省エネ法が公布、20年に見送られた小規模住宅への省エネ基準適合が義務(25年4月施行)となった。さらにその基準が30年までにZEHレベルに引き上げられる。
また、22年には住宅性能表示制度が見直され、断熱等性能等級(以下「断熱等級」)に23年ぶりに上位等級が新設された。それまで断熱等級4(省エネ基準レベル)が最高等級であったが、新たに断熱等級5(ZEHレベル)、断熱等級6(HEAT20のG2レベル)、断熱等級7(同G3レベル)が設けられた。
ZEHレベルへの誘導を図るうえで性能表示制度にZEHレベルを設定するとともに、さらに上をいく水準を設定してトップアップを図ることが目的である。これに合わせて長期優良住宅や低炭素住宅など認定住宅の省エネ性能に係る認定基準も変更された。
こうした法制度などの改定に呼応し、大手ハウスメーカーで標準仕様を見直そうという動きが出てきている。
積水ハウスは、22年4月から、戸建住宅・賃貸住宅において、ZEHレベルの断熱等級5を標準化。積水化学工業 住宅カンパニーは、24年1月から、一般地(省エネ地域区分5~7地域)で展開する平屋・2階建ての戸建全商品(鉄骨系セキスイハイム・木質系ツーユーホーム)について断熱等級6仕様を標準化した。
また、「家は性能」を謳う一条工務店は、主力商品である「グラン・スマート」、「アイ・スマート」において、断熱等級7への対応を、23年5月から開始した。
一方、先進的なビルダーの中には、ハイエンドモデルとして断熱等級7を用意し、標準仕様は断熱等級6、もしくは6を少し超えたくらいのレベルとする動きも出てきている。
中でも大手ハウスメーカーについては、多くの企業が長期優良住宅の基準を標準にしていることを考慮すると、もはやZEHレベルはスタンダード基準であり、省エネ性能という観点で差別化を図るのであれば、断熱等級の6、さらには7へとチャレンジすることが求められそうだ。
断熱材メーカーの担当者は「全体的に住宅の断熱性能がボトムアップしているなかで、差別化として等級6.7に取り組む住宅事業者が増えてきている。影響力の強い住宅事業者が高性能化に取り組んでいることも大きい」と話す。
そして、住宅事業者の動きに呼応するように、断熱材メーカーも省エネ性能を向上させたいという企業のニーズに応えるための取り組みを加速させている。
住宅高断熱化で断熱仕様にも顕著な変化
断熱材には大きく分けて、無機繊維系(グラスウール、ロックウールなど)、有機繊維系(セルロースファイバー、ウッドファイバーなど)、発泡プラスチック系(ビーズ法ポリスチレンフォーム、押出法ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォームなど)の3種類がある。
(独)住宅金融支援機構は、24年6月、前回調査から約6年ぶりに令和5年度の「フラット35住宅仕様実態調査」を公表。フラット35の技術基準に適合することが確認された木造軸組工法の新築一戸建て住宅を対象に、その詳細な仕様をまとめたもので、今回の調査結果からは、高断熱住宅の広がりにより、断熱材の仕様実態にも顕著な変化が見られた。
壁の断熱材の種類をみると、「グラスウール」が47.4%と最も多い。「グラスウール」は平成5年度の80.1%から減少傾向にあり、平成29年度には38.1%にまで減少していたが、今回、約10ポイントもの増加となった。次いで割合が多いのが「硬質ウレタンフォーム」(32.7%)で、調査年度ごとに増加が続いている。硬質ウレタンフォーム断熱材は、壁においては外張り断熱に使用されることが多く、付加断熱での使用も含め高断熱化の動きのなかで使用割合が増えているようだ。加えて現場発泡も含まれる。
天井又は屋根に使用される断熱材をみると、「グラスウール」の割合が最も多く45.8%を占め、次いで「硬質ウレタンフォーム」が33.8%となっている。壁と同様の傾向で、「グラスウール」は長期的な減少傾向から反転、前回調査の37.5%から45.8%に増加、「硬質ウレタンフォーム」は調査年度ごとに増加を続けている。
一方、床においては「ポリスチレンフォーム又はポリエチレンフォーム」が51.6%。前回調査から5ポイントの減少であるが、半数を占める。注目されるのが「フェノールフォーム」で、割合は14.8%と多くはないものの、前回調査までは「その他」に分類されていたものが急速に採用が広がりつつある。
壁の断熱材の種類
圧倒的シェアを誇るGW断熱材
主要3社はそれぞれのスタンスで高断熱化に対応
まずは、断熱業界において圧倒的シェアを誇るグラスウール(GW)断熱材メーカー各社の動きを見てみよう。省エネ基準義務化が半年後に迫り、断熱等級5がミニマムレベルになりつつある。各社は、次のステージを見据えて種まきをし始めている
住宅用グラスウール断熱材のマーケットは、旭ファイバーグラス、マグ・イゾベール、パラマウント硝子工業の3社で9割強のシェアを持つ。
矢野経済研究所の調査によると22年度の住宅用グラスウール断熱材の出荷量(重量換算)は、旭ファイバーグラスが9万2000t(シェア44.5%)、マグ・イゾベールが6万2000t(同30%)、パラマウント硝子工業4万2000tが(同20.3%)であった。
直近の出荷状況をみると、各社ともに、新設住宅着工の落ち込みの影響を受け面積換算では減ったが、一方で、1製品あたりの断熱材の高性能化、高密度化、重量化が進み、ほぼ前年度並みの実績を維持している。旭ファイバーグラスの営業本部 グラスウール営業支援グループ 池田昌彦グループリーダーは「断熱推奨仕様が上がったことによる増加はあるが、それよりも着工の落ち込みが大きく、8月までの出荷実績は前年比で若干落ちている」と話す。
マグ・イゾベールのマーケティング部 魚躬大輝 住宅商品戦略マネージャーは、「3月までの着工減が特に厳しく、パワービルダーの在庫余りから建て控える動きもあり大きな影響を受けた。4月以降は回復しており、8月までの出荷実績は前年比で微増」。また、パラマウント硝子工業も高性能化は進んでいるが、着工減の影響を受けて、出荷量は前年比横ばいで推移しているようだ。
断熱等級5がミニマムレベルに
住宅高性能化のニーズが高まる中で、グラスウール断熱材メーカー各社は、それぞれの戦略で新規需要の創出を目指し取り組みを強化している。24年4月にスタートする省エネ基準への適合義務化まで半年を切り、足元で特に顕著なのは、断熱等級4から5への移行の動きだ。
マグ・イゾベールでは、同社の商品を組み合わせた、エリアごとの断熱推奨仕様のモデルプラン(仕様基準ルート、計算ルート)をつくり、冊子「ソリューションガイド」にまとめ配布している。「ここにきて特に断熱等級5、誘導基準の仕様基準への問い合わせ、要望が爆発的に増えている」という。
仕様基準を用いることで、開口部比率は考慮せず、天井、外壁、床など部位ごとに示された抵抗値をクリアすれば、仕様基準のみの適合確認のみで計算は不要となる。魚躬 住宅商品戦略マネージャーは、「断熱等級6以上になると、計算ルートで性能値を証明する必要があり、揃える書類も膨大な数にのぼる。評価機関で評価を受けるためのリードタイムもかかる。省エネ基準の義務化以降、申請する側も、評価する側も環境が整うまでの数年は、ある程度の件数の住宅を販売し、実務レベルで業務負荷を減らそうとすれば、落としどころは仕様基準の採用という選択になるのではないか」とみる。
旭ファイバーグラスの池田グループリーダーは、「30年まで対応できるということもあり、ミニマムレベルが断熱等級5になりつつある。仕様基準を見ても、窓はより高性能なものに変える必要はあるが、断熱材は、等級4と5に大差はなく、取り組むハードルは高くはない。壁には、厚さ105㎜、熱抵抗値2.7㎡・K/Wの一般品のグラスウール断熱材を充填すればクリアできる。当社では天井用の等級5仕様基準対応製品もラインナップしている」と話す。
パラマウント硝子工業では、出荷状況を品種別に見ると、昨年と比べて、袋入り製品の密度10Kから16Kへ、16Kから24Kへと移行が進み、高性能品が伸びている。住宅高性能化のニーズの高まりを受けて、特に袋入りの高性能グラスウール断熱材「ハウスロンZERO」の引き合いも増えている。温暖地(4~7地域)において、断熱等級5・6や、HEAT20のG1、G2の基準を満たす断熱材の仕様に最適な商品だ。
一方、断熱等級5の仕様基準に対応する商品の拡充も図る。2×4工法の壁用の商品や在来軸組構法の屋根用の商品などを揃え、今後増えると見込まれる断熱等級5を目指すビルダーに訴求していきたい考えだ。
断熱材の高性能化を進める一方で、低密度品の統廃合も進める。グラスウールは多くのバリエーションを揃えていることが強みであるが、同時に安定供給の面から生産のキャパシティとの兼ね合いが重要でありどのように統廃合を進めていくかが一つの課題となっている。
例えば、パラマウント硝子工業では「ハウスロンZERO」など高性能品の生産体制の増強、安定供給の実現に向けて、低性能品、10Kの「ハウスロン」を24年6月、14品種から4品種に統廃合した。
旭ファイバーグラスは、23年10月からグラスウール製品の品種構成及び在庫運用の変更を発表。より高性能商品へのシフトを行った。建材トップランナー制度など国の方針、高性能品が充実するなか製造キャパシティとのバランスなどもあり、生産ラインの修繕のタイミングで一挙に製品ラインアップを整理した。
マグ・イゾベールも、顧客からの要望が断熱性能の高い商品に大きくシフトしている状況を踏まえ、商品シリーズの見直しを実施、24年2月、10Kの「ポリカット」シリーズの一部商品の販売を終了した。
上位等級6・7へ対応
新需要創出へ、仕込みの時期
グラスウール断熱材メーカー各社が現在注力するのは、断熱等級の上位等級6・7への対応だ。30年にZEH水準の断熱等級5の義務化がスタートすれば、断熱等級5ですらも差別化は難しくなり、上位等級の6以上が次世代のスタンダートなる可能性は高いと見られている。断熱材メーカーでは「現状では新築住宅の約7割が等級4、2割5分が等級5、残りが等級6となっている。等級7の家はまだ1%にも満たない。これが30年には新築の約6割が等級5、3割が等級6、1割が等級7となっていくのではないか」とみる声もある。こうしたなかで、メーカー各社はそれぞれのスタンスで上位等級への対応に向け、ハード、ソフトの両面で取り組みを強化している。
アクリアαの改良版
性能は維持したま低密度に
旭ファイバーグラスは、断熱性能が高い「アクリアα」シリーズを持つ。超細繊維の採用により、厚さ105㎜、密度36Kで、熱伝導率0.0032W/(ⅿ・K)、熱抵抗値3.3㎡・K/Wを達成する。これは温暖地の5~7地域において断熱等級6までは付加断熱なしの充填断熱だけで対応できるレベルである。「5~7地域については、付加断熱なしで断熱等級6まで達成できる仕様を提案している」(池田グループリーダー)。住宅高断熱化のニーズの高まりを受けて、アクリア全体に占める「アクリアα」シリーズの割合は増えてきている。
さらに、等級6・7の市場開拓に向けて、アクリアαの熱伝導率0.032の性能は維持したまま、更に繊維を細くして低密度商品の開発に成功。アクリアαの改良版として2024年中にも発売する計画だ。従来は、4.5尺(1370㎜)の長さの短尺品であったが、「柱間にギチギチにつめて短尺品を継いでくのは施工面で大変で課題があった」という。改良版は2倍の長さの9尺(2740㎜)の長尺品となる。「1枚でポンと入れることができるので施工性が向上する」。
より使いやすくして上位等級を普及さるための商品と位置付ける。「ビルダーに協力してもらい数件の実案件でテスト施工を行い評判は良かった。出荷状況を見て将来的には、上位等級向けの提案としては、袋入りのアクリアαから、改良版の方に移行していくことも検討している」という。
また、天井の上位等級向けの対応として、天井断熱用のグラスウールのブロー商品の見直しも進めている。「吹込みをした方が、隙間なく施工でき、厚みもコントロールしやすくなる」と新商品を来年発売する計画だ。
真空断熱材「VIP‐Build」
等級7仕様を検討、実物件で採用
また、23年5月に販売を開始した真空断熱材「VIP‐Build(ビップビルド)」も上位等級達成に向け強力な武器になる新カテゴリーの断熱材として注目されている。
これまでにない断熱材のカテゴリーであるだけに、コストと施工性に課題があるが、厚さ16㎜と薄いことが大きな特徴であり、熱抵抗値4.0、熱伝導率0.004と非常に高い性能を持ち、使い方次第でコストや手間を抑えながらも高い性能を発揮できる可能性があり、この部分にメリットを感じて工務店やゼネコン、一般施主からの問い合わせが多く寄せられている。
現在はテスト販売の状況で、リフォームなどで部分的に使ってみたいというニーズが多い。土地が狭い都市部などで狭小住宅が増えるなか、外に付加するとなるとさらに家が狭くなる可能性もあることから、できるだけ現在の壁厚を変えずに性能を高めたいというニーズもある。
VIP‐Buildとアクリアαを組み合わせ、断熱等級7仕様の検討も進めている。VIP‐Buildを床、屋根、天井、壁、どこで使うのが最適なのか、コストとのバランスを見て断熱等級7仕様を用意する。施主の要望を受けて、1棟実物件を建てる案件も進行している。断熱等級7仕様を用意して、本格販売できる状況に持っていきたい考えだ。
独自に「等級6 ”+”」を推奨
「壁の中に収めたい」に対応
マグ・イゾベールは24年4月、防湿層がついていない、いわゆる”裸”の高性能グラスウール断熱材「イゾベール・コンフォート」シリーズに、105㎜厚で熱伝導率0.032(λ32)、熱抵抗値3.3という最高水準の性能を持つ新商品を発売した。従来品と同じく植物由来の結合剤(グリーンバインダー)を使用、環境負荷を低減した。また、グリーンバインダーを使用した上で、簡単にたわんだりしない”コシ”の強さも実現。施工がしやすくしっかり性能を発揮する。
同社が独自に推奨する、年中快適な室温に保てる全館冷暖房のある住宅に最適な断熱性能「等級6”+”」を始めとする高断熱住宅におすすめの商品だ。上位等級が設定されて以降、住宅事業者からは「今後どのレベルを目指すべきか」という声が多く出ている。最高等級である等級7の実現にはコスト、費用対効果、技術的な難易度などさまざまなハードルがある。特に全国で付加断熱が必須になることは大きな違いだ。一方、等級6までであれば5~7地域で高性能グラスウールの充填断熱だけでも対応が可能であり、従来の延長線上で考えることができる。そこから等級7の間にワンクッションを置くというのが「等級6 ”+”」の一つの考え方だ。
もう一つ重要なのが、実際に建設した住宅がどのような住宅なのかということだ。
等級6を24時間全館空調に必須な断熱レベルと位置づけ、そこに少し「+(プラス)」することでより少ないエネルギーで快適な暮らしを実現することができる。つまり一番コストパフォーマンスが良い断熱レベルを「等級6”+”」と、「まず、ここを目指してみませんか」と打ち出しているのである。「+」には付加価値がプラスされるという意味合いも込めている。具体的な「等級6”+”」の目安は5~7地域でUA値0.4前後と、等級6の同0.46を少し上回るレベルだ。
「等級6以上は、外皮性能を証明するのに計算することが必須になる。その際、施工上、少し難易度が高い付加断熱がハードルになる。なるべく壁の中で、収まるようにしたいというニーズが増えていくことは間違いない」。そこでおすすめの商品として、イゾベール・コンフォートのλ32を中心に推奨断熱仕様に落とし込み、冊子「ソリューションガイド」を作成した。
上位等級の市場開拓に向け開発した商品であり、発売当初は、主に北海道エリアでの需要を想定していたが、実際には、北海道以南のエリアでも需要は伸びている。「何とか壁の中で収めたいという需要にヒットしたのは、我々の狙い通りで、フラッグシップ商品として十分に役割を果たしている。過去の新商品と比較しても発売開始後、販売は順調に伸びている」と手ごたえをつかむ。
現代型住宅トレンドモデル
平屋などで断熱仕様を提示
「ソリューションガイド」の中では、現代の住宅モデルを想定し、エリア毎の断熱推奨仕様を示す「現代型住宅トレンドモデル」というユニークな取り組みにも挑戦した。いわゆる各建材メーカーなどが示す推奨断熱仕様は、住宅の立地条件や自然環境に応じて最適な技術を用いて設計することで、エネルギー消費を大幅に減らす「自立循環型住宅」、4LDK、約120㎡の真南を向いた2階建ての仮想のプランを元に試算されている。
魚躬 住宅商品戦略マネージャーは、「各社が同じ自立循環型住宅というモデルを元に断熱仕様を試算するので比較しやすいが、現在の戸建て住宅の主流のプランとはズレが生じ、オーバースペック気味になっていることは否めない。世帯人数の減少が進み、必要十分な住まいの大きさやレイアウトが変わってきている」と説明する。
そこで、現代型住宅トレンドモデルでは、現在のトレンドに合わせて平屋住宅、ハーフビルトインガレージの2階建て住宅、都市型3階建て住宅の3つのプランをつくり、エリアごとに推奨断熱仕様を示した。併せて、同社HP上に「外皮性能U値計算ツール」を用意した。
簡易版はスマホ・タブレットにも対応しており、各部位の断熱材の厚さと熱伝導率を入力するだけでUA値を算出・算出結果から推奨商品を自動提案する。「この計算ツールでのシミュレーションで、何か証明が付与されるわけではないが、比較検討した結果がリアルタイムですぐに分かり、施主に提案しながら最適な断熱仕様の”あたり”をつけることがきる」。
現代型住宅トレンドモデルでは、平屋住宅のプランにおいて、5~7地域で、「等級6”+”」を、外壁はイゾベール・コンフォートのλ32の充填だけでクリアできることを示したことが一つのポイントとなっている。「自立循環型住宅では、充填断熱のみで『等級6”+”』をクリアすることはできないが、約73㎡規模の平屋住宅であれば難しくない。施主にこうしたシミュレーション結果を見せながら、『さらに付加断熱にすることで、窓を大きくできますよ』といった提案をすることもできる。上位等級に取り組むための知見の獲得、提案の幅を広げるためのツールとして使ってもらえれば」と話す。
また、旭ファイバーグラスも、より現在主流の住宅プランに即した断熱仕様の見直しを検討している。池田グループリーダーによると、例えば、開口部比率は、住宅高性能化が進む中で、断熱等級が高くなるほど小さくなる傾向がある。
自立循環型住宅では開口部比率10.8%とされているが、現在の戸建住宅では平均8%台に下がってきているという。「断熱建材協議会での議論、検討なども踏まえて、現在主流で建てられている住宅プランに合わせた断熱仕様の提案に変えていきたい。ビルダーにとって施工負荷、コストの低減にもつながり、上位等級により取り組みやすくなる」。
ピンクのグラスウールを本州に
北海道ナンバー1の実績をPR
北海道や東北エリアという寒冷地において高性能グラスウール断熱材「太陽SUN」でトップシェアを誇るパラマウント硝子工業は、寒冷地での実績の多さを強みに、温暖地での等級6・7といった上位等級に対するニーズに応えようとしている。その中心商品となるのが、フラッグシップ商品の「太陽SUNR」だ。
同商品は「太陽SUN」の上位製品で、防湿層なしのいわゆる”裸”のグラスウール断熱材で、ピンクの色が目印だ。
その施工には防湿気密シートを別張りする必要があるが、別張りは壁内に隙間ができにくく、その隙間の確認もしやすい、筋交いなどの施工がしやすいといった断熱・気密に対する施工精度のメリットもある。寒冷地ではそうした防湿層なしのグラスウール断熱材+別張りの防湿気密シートによる施工が一般的であり、同社は寒冷地で普及するこの仕様を温暖地でも広げていきたい考えだ。「上位等級の創設により、断熱等級7のハードルは高いが、何とか断熱等級6には挑戦しようという流れが大きくなってきている。北海道でナンバー1の実績を持ち、長年支持され続け、高断熱に詳しい当社がおすすめするのが、裸のグラスウール断熱材『太陽SUNシリーズ』」と「太陽SUNR」の拡販に力を入れていく。また、「せっかく断熱等級6以上7未満を目指すのであれば、気密へのこだわりや、調湿という新しい世界に行くこともできる」ということを口説き文句にしている。
「太陽SUNR」を温暖地で普及させていくにあたり、必要となる商材が別張りシートなどの気密部材だ。同社では気密関連部材など周辺部材を見直し、断熱+防湿気密をセットとして提案していく。これまでも気密関連部材は取り扱ってきたが、あらためて整理し、商品力の強化、カタログなどの整備を行った。
また、新たに酒井化学工業とコラボして、関東、関西、九州など高温多湿なエリアを想定した、可変調湿気密シート「太陽SUNR調湿すかっとシートプレミアム」を製品化、23年7月に発売した。
夏に蒸し暑い外気が壁に中で溜まり、エアコンなどにより冷やされた室内側の冷気が触れることで、壁の中で結露が起こる壁の中で結露が起こる”夏型結露”対策となるもので、低湿時は室内から壁内への湿気の移動を防いで冬型結露を、また、シート表面の湿度が高くなると透湿機能が働き壁内の余分な湿気を室内に逃がして夏型結露を防止する働きをする。同社では、高気密・高断熱化を図った上で夏型結露を防ぐ工法として、太陽SUNRと太陽SUNR調湿すかっとシートプレミアムを推奨している。
等級6への取り組みについては、2019年に福島県須賀川市の本社・長沼工場に建設した、快適な温熱環境を実現した断熱体感棟「パラマン館」が大きな武器になっている。屋根・天井、壁、床に「太陽SUNR」を使用し、UA値0・30と、断熱等級6以上7未満のレベルを実現した高性能住宅だ。館内ではグラスウールの特徴などを紹介するさまざまな展示を行っている。24時間換気を採用し、エアコンを自動設定で稼働させており、インスタグラムで温熱環境や冷暖房消費量を発信している。そして、やはり一番はグラスウールのみでの高い断熱効果を体感できることが、大きな説得力となっている。
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