需給調整がもたらす住宅の価値 再エネ主力化の切り札「DR」
制御の主導権をめぐるプレイヤーの新たな挑戦が広がる
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーの導入が急速に進む一方、天候に左右される再エネの拡大は電力の需給バランスを崩すリスクを孕んでいる。
この課題の解決策として注目されるのが、需要側が電力使用量を調整するデマンドレスポンス(DR)だ。
国内電力消費の約3割を占める住宅分野の役割は大きく、これまでの手動による「行動変容型」から、ユーザーに負担をかけない「機器制御型(自動制御)」まで、さまざまなサービスが提供され始めている。
需給調整市場での低圧リソース解禁などを背景に、
さまざまなプレイヤーによる新たなビジネスモデルの構築も始まった。
住まいに新たな価値を生むDRは、将来的に大きなビジネスへとつながる可能性を秘めており、制御の主導権をめぐるプレイヤーの挑戦が続く。
DRをめぐるプレイヤーの最新の動きとともにデコ活の一環でDRを推進する環境省の堀越・デコ活応援隊隊長補佐にDR拡大のポイントを聞いた。
節電だけでは不十分!
住まいに期待されるDRの役割
デマンドレスポンス(DR)の取り組みが住宅分野で広がりつつある。
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、国は再生可能エネルギーを「主力電源」と位置づけ、「最優先かつ最大限に拡大する」方針を打ち出している。第7次エネルギー基本計画は、2040年時点の電源構成において再エネを現在の2倍程度に引き上げるという高い目標を掲げ、太陽光発電を中心にその導入を強く進めている。
ただ、再エネ拡大には電気の需要と供給を一致させる「同時同量」の問題がつきまとう。発電量と使用量を一致させなければ電気の周波数が乱れ、エリア全体の大規模停電「ブラックアウト」を引き起こす可能性がある。再エネの中心である太陽光発電は、昼と夜、天候や季節などに大きく左右される。例えば、好天に恵まれた春・秋は、太陽光発電による電気を使いきれないという状況が起こり、需給のバランスが崩れることになる。
そこで電力会社が行っているのが「出力抑制」だ。電力会社が発電事業者に対して、太陽光発電などの発電を一時的に停止・抑制することを指示する仕組みである。離島以外では、2018年に九州電力管内で初めて実施、今年3月に東京電力管内で実施されたことで、全国すべてのエリアで出力抑制が実施されることになった。再エネ導入を加速させる一方で、その電気が余るという状況が発生しているのである。
需要をコントロールするDR、VPPの技術
再エネの普及拡大は、需給のコントロールとセットで進めていかなければならない。そこで広がりつつある取り組みがDRやバーチャルパワープラント(VPP)だ。
DRとは、電気の需要と供給のバランスを保つために電気の使い方を調整する仕組みのこと。国内の総電力使用量に占める家庭部門使用量の割合は3割弱。つまり住宅における電気の使用量の調整=DRの導入が非常に重要となる。
DRは、大きく「下げDR」と「上げDR」に分けられる。下げDRは、電気の需要が増え供給が足りなくなりそうな時に行われる。例えば、真夏にエアコンの設定温度を少し上げるという節電はDRでもある。逆に上げDRは、晴れた日の昼間など太陽光発電が多く電気が余りそうな時に行われる。通常夜間に行うエコキュートの湯沸かしを昼間に行う、EVの充電を昼間に行うなど、あえて一定の時間に電気を使う行動を指す。
また、DRは、その手法により「行動変容型DR」、「機器制御型DR」、「機器設定型DR」に分類される。(一社)日本電機工業会(JEMA)では、行動変容型DRを「需要家がDR実施を判断する」、機器制御型DRを「小売電気事業者がDR実施を判断・実行する」、機器設定型DRを「需要家がDR実施を判断、需要家以外(小売電気事業者、アグリゲーター、機器メーカーなど)が実行する」と整理している。行動変容型DRはDRの確度・予見性が低い、機器制御型DRはシステム構築が必要なためコストが大きい、機器設定型DRは確度・予見性は高いがシステム構築にコストがかかる、とそれぞれに課題がある。
ただ、一つの家庭には太陽光発電、蓄電池やEV、さまざまな設備機器や家電があるが、住宅一戸では小さな調整力しか持たない。その調整力を束ねることで大きな調整力とする技術がバーチャルパワープラント(VPP=仮想発電所)だ。分散するエネルギーリソースをIoT技術により束ね、仮想的に発電所と同様に機能させるシステムを指す。住宅におけるDRを調整力として生かす重要な技術だ。
国が強く後押し
実証や補助で普及拡大へ
国は、このDRの導入、普及拡大にさまざまな施策を行ってきている。
経済産業省は、2011年度から現在まで、さまざまな実証事業を展開、当初の節電から電力市場での価値創出のビジネスモデル構築へと取り組みを高度化してきた。環境省は、脱炭素行動を促す「デコ活」の一環として取り組みを進め、2024年度から再エネ余剰電力を活用する実証事業を続けている。また、DRの制御対象となる機器について、その制御方法などについて省庁・業界団体での議論も進められてきた。
一方、DRの普及拡大の支援策も手厚く行われている。2022年度に資源エネルギー庁が節電を目的とした「電気利用効率化促進対策事業」(節電プログラム事業)で行動変容型DRを支援。近年は、行動変容型DRから機器制御型DRへと補助金の枠組みが変化、例えば、2025年度補正予算による「再生可能エネルギー導入拡大・分散型エネルギーリソース導入支援事業」では、新規導入のDR対応可能な蓄電池システムを対象に、DRアグリゲーターとのDR契約、指定された期間のDR実証への参加などを要件に蓄電容量1kWhあたり3.45万円、上限60万円を補助する。3月24日に交付申請がスタートしたが、申請額が予算に達したため5月29日に公募は終了した。

百花繚乱のDRサービス
社会課題解決から生まれる新たなビジネス
電気会社は独自サービスを展開
市場連動型プランで価値創出も
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