数値を超えた「心地よさ」と「資産価値」を生む断熱材 デコスファイバーが拓く 人と地球を健やかにする家づくり
デコス設立30周年記念 座談会

「断熱材は、性能で選ぶ時代から、〝価値〟で選ばれる時代へ。」
新聞紙をリサイクルした木質繊維系断熱材「デコスファイバー」。そのメーカーであるデコスが創業30周年を迎えた。
「断熱は施工が命」という揺るぎない思想のもと、製品から施工品質までを一貫して担保する「責任施工体制」を構築。
今、世界的な潮流である「脱炭素」や「循環型社会」の視点からもその価値が再評価されている。
30年磨き続けた強みとは何か。そして、これからの時代に住宅が果たすべき役割とは。
創業者と第一線の経営者たちが、家づくりの本質を語り合った。

参加者

安成 信次 氏
デコス(山口県下関市)代表取締役、安成工務店(同)代表取締役会長

大庭 勝 氏
マイライフ オオニワ(鹿児島県霧島市)代表取締役:施工代理店1号店

谷口 優介 氏
谷口建築(鹿児島県指宿市)代表取締役

白石 章訓 氏
Cocoonホーム(鹿児島県曽於市)代表取締役
司会 本日はデコス30周年ということで、創業者の安成社長、そしてデコスファイバー施工代理店第1号であるマイライフ オオニワの大庭社長、採用工務店である谷口建築の谷口社長、Cocoonホームの白石社長にお集まりいただきました。まずは安成社長、30年前、どのような思いでデコスを立ち上げ、セルロースファイバーという素材に辿り着いたのでしょうか。
完璧な施工を求めてたどり着いた「運命の素材」
安成 私はもともと安成工務店の2代目の経営者で、32歳の時に社長に就任しました。当時はどんな家づくりをすべきか非常に悩んでいた時期です。先代である父は大工出身で、「山から木を伐り出し、その木で家を建てる」という信念を持っていましたが、若い私はそれだけでは不十分だと感じ、父ともよく衝突していました。
そんな中、住宅の「売り方」を学ぶために住宅ディーラーの門を叩いたり、1989年には「OMソーラー」に参加しました。OMソーラーの創始者である奥村昭雄先生の思想は新鮮で、デザインや環境共生住宅の枠組みに感銘を受けましたが、実際に建ててみると冬場に期待したほどの暖かさが得られない。現場を調査してみると、当時の主流だったグラスウールの施工に隙間だらけだったことが判明したのです。
そこで「施工が完璧にできる断熱材」を必死に探しました。候補はウレタン吹き付け、ポリスチレンボードの外張り、そしてセルロースファイバーのブローイングの3つ。環境共生の観点から直感的に「これだ」と思ったのがセルロースファイバーでした。
1992年に横浜で開催されたOMソーラーの全国経営者会議で、福井県の会社がセルロースファイバーを展示しているのを見て確信を持ちました。
最初は機械を1台購入し、社内に「セルダン事業部」を作って自社施工から始めました。原価はグラスウールより数十万円高くなりましたが、現場の大工さんや監督たちが「これはいい」と惚れ込んでくれた。そこから1993年頃に、まずは自分の自宅に壁120㎜を吹き込み、天井300㎜を敷き詰め、その性能を身をもって体感したことがすべての始まりです。

数字だけで測れない
「快適性」こそがデコスの真骨頂
安成社長
第1号店と共に歩んだ
「責任施工」と「環境共生」の30年
安成 セルロースファイバーの良さを広めるためには、認定の取得が不可欠でした。メーカーに頼んでも動いてくれなかったので、自ら(一財)住宅・建築SDGs推進センター(IBECs)に工法認定を取りに行き、1997年に「デコスドライ工法」が誕生しました。さらに1999年には、全国に広めるための施工代理店制度を開始しました。その第1号店がマイライフ オオニワの大庭さんでした。2000年には、施工品質を第三者の立場で担保するため、JCA日本セルロースファイバー断熱施工協会を設立しました。
大庭 第1号店と言われると恐縮ですが、当時は本当に必死でした。私は鹿児島で断熱工事、新築・リフォーム工事など、住まいに関わる幅広い事業を営んでいますが、人口も減り、新築が建たなくなるという危機感の中にいました。そんな時、安成社長が参加されていた勉強会でデコスに出会ったのです。
最初は「断熱材を売る」という感覚ではなく、とにかく新しい事業、価値のあるものを取り入れなければ生き残れないという思いでした。1年目はわずか10tほどの取り扱い量でした。利益も出ない時期が10年以上続きましたが、安成社長が語る「環境共生」や「住む人の健康」という言葉には圧倒的な説得力がありました。他の建材メーカーが「安さ」を語る中で、デコスは「家の本質」を語っていた。その安心感があったからこそ、苦しい時期も続けてこられたのだと思います。今では年間270~280tくらいを手がけるまでになりましたが、振り返れば「先見の明」があったというより、良いものに出会えた「運」が良かったのだと感じています。

デコスは「家の本質」を語っていた
苦しい時期も続けてこられた
大庭社長
若手経営者が語る「デコスの圧倒的な体感差」
司会 続いて、谷口さんと白石さんにお伺いします。お二人は自らも大工経験があり、現場を熟知されています。デコスを初めて知った時の印象はいかがでしたか?
谷口 私は以前勤めていた工務店がデコスを使っていて、それが最初の出会いでした。それまで使っていたグラスウールと比べて、現場の空気が明らかに違う。施工後の静寂感や、夏場の現場の涼しさに「これは何かが違うぞ」と直感しました。「これは違う」と。
白石 私は約14年前に別の会社で「湿式」のセルロースファイバーを経験したのですが、梅雨時期に木材がカビてしまうというトラブルに直面しました。湿気対策を模索する中で、10年前に自宅を建てる際、ネットで「乾式」のデコスファイバーを見つけ、大庭さんのところに飛び込みました。
自宅をデコスファイバーで建てて驚いたのは、夏場の快適さです。鹿児島は蒸し暑いですが、驚くべきことにエアコン1台で52坪の家全体が涼しくなる。数値上の断熱性能だけでなく、調湿効果による「空気の質の差」を肌で感じました。経営者として独立した際、「お客様に嘘をつかない家づくり」をするためには、自分の家で証明されたデコスを標準仕様にするしかないと決めました。
数値では測れない
静寂と調湿がもたらす圧倒的な快適性
司会 最近はZEHや断熱等級など、数値(UA値など)が重視される傾向にあります。デコスの価値は数値だけで語れるものなのでしょうか。
安成 今、住宅業界はUA値や断熱等級といった「数値」の競争に沸いています。しかし、現場で完璧に施工されない限り、その数値は設計図上の空論に過ぎません。
デコスが歩んできた30年は、単なる断熱材の普及の歴史ではありません。それは「断熱性能は、正しい施工があって初めて完成する」という、極めて当たり前でありながら、最も困難な問いに対する挑戦の歴史でした。
デコスが創業以来、材料の販売にとどまらず「責任施工体制」に拘り続けてきたのは、住む人の一生に責任を持つという覚悟の表れです。
施工代理店制度、厳しい技術研修、そして一棟ごとに行う内部結露計算。これら「手間」の集積こそが、数値では測れない「静寂」や「調湿」といった真の心地よさを担保してきました。
数字は大事ですが、数字だけで測れない「快適性」こそがデコスの真骨頂です。音が静かであること、湿度が安定していること、これらは住んでみないとわからない。私はこれを「数値に表れない快適性」と呼んでいます。
大庭 私は初期の頃、問屋から「もっと安くて手軽な発泡系をやりませんか」と言われたこともあります。しかし、私は頑なにデコスファイバーを使い続けました。それは、安成社長の考えと、徹底した「責任施工」の体制を信じていたからです。弊社の施工スタッフはベテランが多く、デコスファイバーの品質を支える誇りを持っています。
白石 デコスは、現場で大工さんと共に作り上げる「チーム」のような感覚があります。より良い施工方法、より気密を高める工夫などを、地元の施工代理店である大庭さんのスタッフと相談しながら追求できる。この「顔の見える信頼関係」こそが、デコスの強みです。
顧客が語る「不満のない家」とペットへの影響
司会 お施主様から言われて忘れられない一言はありますか。
谷口 先日、デコスで家を建てて1年になるお客様とお会いしたのですが、ご夫婦で「こんなに不満のない家があるのか」と話している、と仰ってくださいました。
特に驚いたのが、飼っている猫の変化です。以前の住まいでは粗相をしたり、落ち着きなく走り回ったりしていたそうですが、今の家に住んでからは全く粗相がなくなり、非常にリラックスして過ごしているそうです。
人間だけでなく、動物にとってもストレスの少ない、静かで快適な環境がデコスによって作られているのだと改めて実感しました。
白石 私のお客様も同様で、特に冬場の暖かさに驚かれます。
新築祝いで集まった友人たちに「脱ぎ着できる格好で来てください」と伝えても、最初は皆さん信じてくれません。しかし、実際に室内に入ると、その圧倒的な暖かさに驚き、次々に上着を脱いで帰られます。
SNSでも「暖房なしでこの室温」といった投稿をしてくださるお客様が多く、それを見た検討中の方が「本当ですか?」と疑い半分で相談に来られるほど、デコスの性能は体験しないと信じられないレベルにあります。
住まいが「健康寿命」を延ばす
大学との共同研究で見えた科学的根拠
安成 私たちが今、最も力を入れているのが「健康」との関連性です。現在、慶應義塾大学の川久保俊准教授と共に、木の家と健康に関する継続的な研究を行っています。5年前に弊社の家に入居した30組のご夫婦の「身体年齢(バイオエイジ)」を測定したのですが、驚くべきことに5年経っても身体年齢がほとんど衰えていない、あるいは実年齢より若く保たれているという初期データが出ています。
4月に出版した本では、「もし住まいが健康寿命を5年延ばすとしたら?」という問いかけをしています。睡眠の質の向上やヒートショックの防止など、デコスの調湿・断熱性能が、住む人の寿命そのものに貢献できることが科学的に証明されつつあります。
これは単なる「断熱材」の枠を超えた、社会的価値だと言えます。
物価高騰時代を乗り越える「地産地消」と「パッシブ」の知恵
司会 現在、中東情勢の影響などで石油製品や原材料の価格が高騰し、住宅価格も上昇し続けています。この厳しい状況下で、工務店はどのように戦っていくべきでしょうか。
谷口 確かに石油系断熱材などは大幅に値上がりしています。だからこそ、できるだけ石油製品に頼らない、地域で循環する素材を使った家づくりが切実な問題になっています。地元の材料を使い、輸送コストを抑えることは、そのままカーボン削減にもつながります。
鹿児島のような暑い地域では、特に「軒」をしっかり出すことが重要です。冬は日射を取り入れ、夏は遮る。この当たり前の設計と、デコスの性能が組み合わさることで、孫の代まで「資産」として残せる家になる。
これが大手ハウスメーカーには真似できない、地元の気候を知り尽くした工務店の強みです。
白石 私も「パッシブ」な設計こそが、未来の資産価値を決めると考えています。目先の建築費だけでなく、50年先、60年先の光熱費を想像してほしい。今、月に1万円の電気代が、50年後には物価上昇で倍以上になっているかもしれません。デコスのような蓄熱性・調湿性の高い断熱材を使い、日射遮蔽をしっかり考えた家なら、将来のエネルギーコストを最小限に抑えられます。
私はお客様に「50年後の資産価値」を話します。今、家づくりにかかるコストは上がっていますが、50年後にその家が「負債」になるか「資産」になるかは、断熱性能と耐久性で決まります。デコスは木質系素材なので、家そのものが炭素を貯蔵している。50年後に孫の代がその家に住む時、あるいは売却する時、トップクラスの性能を維持し続けることが、真のコストパフォーマンスだと思っています。

目先の建築費だけでなく
50年先の光熱費を想像してほしい
白石社長
「使い捨て」から「循環・再利用」できる家へ
大庭 自然素材のもう一つの強みは「再利用(リユース)」ができることです。熊本の震災後の仮設住宅では、デコスを一度吹き込んだものを回収し、再利用するという取り組みも行われました。これはウレタンや発泡系断熱材では絶対に不可能なことです。
白石 昔の日本の家は、土壁や木、瓦など、住まなくなっても最後は自然に帰る素材でできていました。
今の工業化住宅は、数十年後に解体する時、最終的には廃棄物として処理されてしまいます。私たちは「孫が住み継ぎたい」と思えるような、あるいは「もし解体しても自然に帰る、または再利用できる」ような、循環型の家づくりを目指すべきです。
30〜40年前の家をリフォームしたいとは思いませんが、100年前の古民家なら「直して住みたい」と思いますよね。デコスを使っている家づくりには、その「残したくなる価値」が備わっている。これを地域の若い世代にどう伝えていくかが、私たちのこれからの挑戦です。
「カーボンネガティブ」という圧倒的な環境性能
司会 ライフサイクルカーボン削減という観点からも、デコスファイバーは改めて注目され始めています。
安成 30年前に私たちが始めた「自然素材による高断熱」が、今ようやく時代のスタンダードになりつつある。カーボンニュートラルやSDGsが叫ばれる現代において、セルロースファイバーは間違いなく主役になる素材だと確信しています。
デコスが歩んできた30年は、常に「本物」を追求する歴史でした。今、ようやく時代が追いついてきたと感じるのは、国交省などが「建設住宅中長期ビジョン」の検討を始めるなど、業界全体が「脱炭素」へと大きく舵を切ったことです。
特に注目すべきは、居住時の省エネだけでなく、建てる時にどれだけCO2を排出するかという「アップフロント・カーボン」の議論です。
デコスでは、CFP(カーボンフットプリント)の見える化や、EPD(環境製品宣言)取得などに業界に先駆けて取り組んできました。私たちが計算したところ、地域工務店が作る自然素材の家は、一般的な工業化住宅に比べて建設時のCO2排出量を15%以上削減できるという結果が出ています。
これからは、大手メーカーのような「工業化住宅」ではなく、地域の職人が手でつくる「地域産業としての住宅」が日の目を見る時代です。カーボンオフセットの価値が明確になれば、地元の木を使い、デコスファイバーのような自然素材の断熱材を使う工務店の家が、社会的にも高い評価を受けるようになるでしょう。
特筆すべきは、新聞紙のリサイクルによる炭素固定量(16.9㎏-CO2/袋)が製造時の排出量(7.1㎏-CO2/袋)を大きく上回る「カーボンネガティブ」という圧倒的な環境性能です。このエビデンスは、脱炭素が急務である中大規模木造建築などのBtoB市場においても、強力な武器となります。30年前から変わらぬ「本質」の追求が、今、地球規模の課題を解決する実装フェーズへと突入しています。

地域で循環する素材を使った
家づくりが切実な問題に
谷口社長
地域工務店のネットワークと「学び」の継続
大庭 私は30年以上にわたり鹿児島で、工務店の経営者などを対象に、これからの家づくりに役立つ情報を提供する勉強会を開催してきました。白石さんや谷口さんもその勉強会を通じて知り合った仲間です。鹿児島では、若い工務店経営者同士が情報を共有し、切磋琢磨する良い文化が生まれていると感じています。お互いにライバルではありますが、良い家を残したいという志は同じです。
安成 大庭さんが30年以上続けてこられた勉強会が、今こうして次世代の花を咲かせているのは本当に感慨深いです。単なる「モノ売り」ではなく、ライフスタイルそのものを提案し、地域社会に貢献する。デコスファイバーを扱うことが、その工務店のアイデンティティとなり、ひいては地球環境を守ることにつながる。
未来の住宅は、もっとコンパクトで、もっと豊かで、もっと自然と共生するものになるはずです。物価が上がっているからこそ、本当に価値のあるものに投資する。その選択肢として、デコスファイバーという30年変わらない「本質的な答え」を、これからも皆さんと共に提供し続けていきたいと考えています。

https://www.decos.co.jp/decos30
※1 「デコスドライ工法施工代理店制度」。セルロースファイバー断熱材「デコスファイバー」の性能を最大限に発揮させるため、認定を受けた断熱施工技術者が、責任を持って施工品質を担保する仕組み。全国の施工代理店が適正密度を確実に再現し、施工不良を防ぐことで、木造住宅の内部結露被害に対する20年保証を支える、再現性の高い施工品質を提供する。施工代理店は全国に約60社。
※2 『「ながいきゆたか」になる家づくりの本』(風土社)
※3 建物や製品の「ライフサイクル」の最初期段階で発生する温室効果ガスの排出量のこと。具体的には、建物が完成して使い始める前(=アップフロント)までに、材料の調達、輸送、そして建設・製造工程で排出される炭素(二酸化炭素など)を指す。
※4 商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでの「一生(ライフサイクル)」の間に排出される温室効果ガスの総量を、CO2量に換算して表示する仕組みのこと。「足跡(フットプリント)」という言葉の通り、その製品が地球に残した炭素の重みを可視化する。
※5 製品の原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでの「一生(ライフサイクル)」における環境負荷を、国際規格(ISO 14025)に基づいて定量的に開示する仕組み。CFPは「温室効果ガス(温暖化)」に特化しているが、EPDはより多角的な環境影響を評価する。




