2023.4.17

国交省、インスペクションの活用促進へ4つの方向性

宅建業法改正から5年で実施率は上昇

国土交通省は社会資本整備審議会産業分科会不動産部会を開催。インスペクションの活用促進などを盛り込んだ宅地建物取引業法の全面改正から5年が経つことから、既存住宅流通市場の活性化や売主・買主が安心して取引できる市場環境の整備を図るため、これまでの施行状況などを踏まえた今後の見直しの方向性を示した。

同省が2022年に実施した消費者・宅建業者向けアンケートによると、インスペクション実施率(戸建のみ)は売却経験者44.6%(2016年調査では15.3%)、購入経験者30.6%(同7.2%)と、法施行前の2016年調査の実施率から伸びていることが判明。宅建事業者の74.1%が「一律にあっせん無」と回答。従業員人数規模が101人以上の場合、一律にあっせん無としている割合が低くなる。一方、あっせんを受けた人のうち「希望していなかったが、宅建業者の説明や説得を聞いてあっせんを依頼し受けた」が36.2%であった。また、建物状況調査について「とても満足」、「満足」合計で78.5%となっており、約8割が建物状況調査を実施することのメリットを感じていることも分かった。一方、実施しなかった理由について、取り壊しやリフォームが決まっていたことなどを除くと、「早く売買したかった」(29.2%)、「費用負担を避けたかった」(35.3%)などが上位であった。

4つの方向性で見直しを検討

こうした状況を踏まえて、見直しの方向性として4つの方向性を示した。一つは、「宅建業者の環境整備・実効性強化」。さらなる普及促進に向けて、宅建業者によるあっせんを拡大していくため、事業者が取り組みやすくなる環境整備や、制度の実効性の強化として、どのような方策が考えられるかを検討する。見直し案として、あっせん「無」とする場合、媒介契約書にあっせん「無」の理由を記載することなどを挙げる。

2つ目は、「建物状況調査の意義・効果」。費用に見合う効果が宅建業者・消費者双方に浸透していない現状に対して、実施しないことによるリスクや、それを回避する効果など、建物状況調査の意義・効果について、改めて整理が必要ではないかを検討。築年数など、物件の特性ごとに場合分けをして、意義・効果を整理し、実施メリット強化の観点で、インセンティブの付与などの支援策などを検討する。

3つ目は、「類似する調査・検査」各種検査について、趣旨・目的などの違いを踏まえた内容・項目となっている一方、分かりづらいといった指摘があるため、各種検査について、どのような対応が考えられるかを議論。建物状況調査と瑕疵保険の検査など、類似する調査・検査を1回で効率的に実施できる検査事業者に宅建業者・消費者がアクセスしやすくなるよう、「既存住宅状況調査技術者検索サイト」を改善して、検査の実施フローなどを分かりやすくする、といった案が示された。

4つ目は、「共同住宅」。マンションにおける建物状況調査の実施を拡大するため、共用部分について、現在行われている既往の調査(建築基準法の定期報告や大規模修繕に係る調査など)に併せて建物状況調査を実施し、その結果の活用を促進していくことなどを検討する。