2023.1.11

積水ハウス「5本の樹」計画で新たな展開

企業や組織、教育機関と連携、自然の影響を検証

積水ハウスは「都市の生物多様性フォーラム」を開催し、仲井嘉浩社長は、「『5本の樹』計画の活動による効果を数値化し公表したところ新たな展開に広がっている」と報告した。様々な企業や組織、教育機関などと新たな取り組みを展開していく。

都市緑化機構のSEGES認定を受けた企業緑地

同社は、2001年から「5本の樹」計画として、日本全域で都市の住宅地に緑のネットワークを作り、生物多様性保全を推進している。“3本は鳥のために、2本は蝶のために、地域の在来樹種を”という思いを込め、日本古来の里山を手本として、その地域の気候風土・鳥や蝶などと相性のよい在来樹種を中心とした植栽を提案するプロジェクトだ。2001年の事業開始からの累積で植栽本数は1810万本(2022年1月時点)となった。また「5本の樹」計画の効果検証として、2019年から琉球大学久保田研究室・シンクネイチャーと共同検証を実施。2021年に、生物多様性保全効果の実効性を、樹木本数・樹種・位置データと生態系に関するビッグデータを用いて、世界で初めて都市の生物多様性の定量評価の仕組みを構築し、「ネイチャー・ポジティブ方法論」として公開した。様々な企業や組織、教育機関から反響があり、「予想外の嬉しい展開」(仲井社長)に発展しつつある。

横浜市の小学校の環境教育の出前講座に参画。講師として、樹木医などの植栽や造園の知識・資格を持つ同社社員が出張授業を行う

その一つは、(公財)都市緑化機構との連携だ。「5本の樹」計画による都市の生物多様性保全推進活動の知見とネイチャー・ポジティブ方法論を同機構に提供する。同機構は、社会、環境に貢献し、良好に維持されている企業緑地とその取り組みを第三者評価により認定する制度「SEGES(社会・環境貢献緑地評価システム)」を2005年から運用している。今回、ネイチャー・ポジティブ方法論を用いて、全国87カ所のSEGES認定緑地を評価し、各地の生物多様性への貢献程度や、生物多様性の保全ポテンシャルの可視化を試みる。また、「自然と触れ合うことで、子供たちの情操教育に役立つことが期待できる」(仲井社長)ため、教育関係者からの関心も高い。同社の生物多様性保全の取り組みの経験を生かし、長野県上田市や神奈川県横浜市などと連携し、未来を担う子どもたちの環境教育の推進を支援する。

さらに、東京大学大学院農学生命科学研究科の曽我昌史 准教授と生物多様性と健康に関する共同研究を開始した。都市の自然環境や生物多様性が人の健康や幸せに対してどのような効果をもたらすのかを検証する。生物多様性豊かな庭における身近な自然とのふれあいが、居住者の自然に対する態度・行動及び健康に及ぼす影響を総合的に検証する試みは世界初となる。