CLT活用拡大 勝機はどこに?

4、5階建ての中層建築から住宅まで

非住宅、住宅分野に関わらず、CLT活用が広がっている。各社は、CLTの何を強みに、新たなビジネスチャンスを掘り起こし、市場を開拓しようとしているのか。

2050年脱炭素の実現に向けて、再生可能な循環資源である「木材」を建築物に積極的に利用しようとする機運が高まっている。木造建築とすることで、長期間炭素を大気に戻さず建物内に固定化(貯蔵)できるため、脱炭素への寄与が期待されている。

ただし、2021年の日本の建築着工床面積の現状を見ると、低層住宅以外の非住宅・中高層建築物の木造率は6%と低い状況にある。

人口減少や住宅ストックの充実により中長期的には、新設住宅着工が減少していく見通しの中で、木造化率の低い非住宅・中高層建築物での木造化を進め、新たな木材需要を創出していくことが重要になっており、近年、非住宅・中高層建築物での木材利用を促進する法律、技術、環境などの整備が進む。

こうした中で、特に、非住宅・中高層建築物での木材利用において注目を集めるのが、ひき板(ラミナ)を繊維方向が直交するように積層接着した新たな建築材料、CLT(直行集成板)だ。

「コンクリート造などと比べてコンクリートの養生期間が不要であるため、工期の短縮が期待できる」、「建物の重量が軽くなり、基礎工事の簡素化が図れる」といった強みを持つ。また、コンクリートに比べて断熱性が高く、床や壁にパネルとして使用すれば、高い断熱性能を確保できる。

国土交通省、林野庁が2014年に「CLTの普及に向けたロードマップ」を共同で作成するなど、国を挙げてCLT普及に取り組む。2021年3月には、このロードマップをバージョンアップし、2025年度までの新たな道筋を示した。「CLTの認知度が低い」、「コスト面の優位性が低い」、「需要に応じたタイムリーな供給を行えていない」、「CLTの活用範囲が狭い」といった現状の課題を挙げ、それぞれの課題に対して2025年度までに、「国民にCLTの魅力やその活用の社会的意義などが広く理解される」、「CLT製品価格が7万~8万円/㎥となり、他工法と比べコスト面でのデメリットが解消される」、「全国どこでも、需要者からのリクエストに対して安定的に供給される体制が整備される」、「幅広い範囲の建築物、構造物等でCLTの活用が進む」ことなどを目指す。

建築物木造化の強力な追い風が吹く中で、住宅、非住宅を問わず、活用が拡大している。ゼネコンなどが木造化推進の一環として大規模建築でCLTを活用する動きはあったが、ここにきて4階建て、5階建ての中層建築や住宅の分野においても、CLTを活用して差別化につなげようとする動きが目立ち始めている。

CLT建築の普及へ
新たな構法、設計ツールを開発

岡山県に拠点を置くハウスビルダー、ライフデザイン・カバヤは2017年に大学教育機関や民間企業らと共同で、オリジナル接合金物を用いた独自のCLT工法「LC‐core構法」を開発した。壁倍率換算20倍相当の壁耐力を実現でき、建築物のコア部分にCLTを効果的に配置することで、CLTの設置枚数を抑えながら開放的な空間を創出できる。また、CLTを現しで使用できるようにするため、接合金物は露出しないように工夫している。


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