2023.6.22

ライフデザイン・カバヤ、狭小地向けのCLT工法を開発

東京・世田谷で第1号棟、柱のない大空間を創出

同社が運営する、CLTフランチャイズネットワーク本部「日本CLT技術研究所」は、狭小地向けCLT建築の新工法を開発した。都市部の店舗などの需要を掘り起こしていく考えだ。

CLT建築は、CLTの資材置き場を確保する必要があり、これまで地方の広い敷地面を活用して建てられることが多かった。日本CLT技術研究所は、CLTの一層の活用拡大、林業の活性化、脱炭素社会の実現への貢献を目指し、2021年9月からCLTの特性を最大限に生かした新工法の開発に着手、このほど狭小地向けのCLT建築の新工法「LC-gate(エルシーゲート)構法」の実用化に至った。CLTパネル工法に、RC造や鉄骨造で一般的に使われるラーメン構造を掛け合わせ、門型架構の薄厚ラーメン構造とした構法だ。開口方向の耐力壁を一切必要としないため、柱型も出ず、間口の開口を大きく確保でき、限られた空案を最大限に利用できる。また、建物の内側から施工でき、かつ接合剛性が高い、専用の「基礎-壁接合金物」、「梁-壁接合金物」も新たに開発した。

「LC-gate 構法」の採用1棟目となる店舗「G a r a g ehouse 上馬」の竣工写真
カフェの1階には、柱の内大空間を生かしてヴィンテージのトレーラーを設置した

この新工法「LC-gate(エルシーゲート)構法」を採用した1棟目となる店舗が23年5月、東京都世田谷区上馬5丁目で完成した。日本CLT技術研究所の加盟企業であるエー・ディー・アンドシー(荒川浩司社長)が設計・施行・管理を担当。林野庁の令和4年度「CLT活用建築物等実証事業」を活用した。敷地⾯積が約70㎡(18.6坪)、間⼝が5.1mの狭小地における同店舗は、45分準耐⽕建築物で設計、防耐火規制が厳しい都市部だが、内外装をCLTの現し仕上げとし、木の香りが⼼地よい空間を実現した。カフェとして運営される店舗で、施主は付加価値の創出のため、ヴィンテージのトレーラーを店舗内に設置したいという要望を持っていた。当初、鉄骨造や在来木造でも設計したが、柱型や耐力壁があることで空間を有効に活用しにくく、柱型のないすっきりとした間取りが可能な「LC-gate(エルシーゲート)構法」が採用された。

都市部の建築では、短工期、敷地いっぱいに建設することが求められるため、今回は、工場で内外装をオフサイト(プレセット)製造した。都市部狭小地では、隣接する建物との幅がほとんどないため、建てた後に外壁施工の確認やメンテナンスができないことが課題となる。そのため、事前に実寸大のCLTパネルを用いて、工場でプレセットしたCLTの外壁で防水性の検証を行った。さらに、大型のCLTパネルの搬入および建て方を効率よく進めるために、BIMを用いて施工シミュレーションを繰り返し行った。同店舗の建築では前面道路の交通量が多いことや伝染が多く通っていることなどの条件をクリアするために、BIMを活用してクレーンの配置やトラックを搬入する時間をあらかじめ決めた。建て方は7日間で終了。道路の専有許可が各日6時間という制約があり、工程に余裕を持たせたが、事後検証の結果、最短4日間で建て方が可能であることも分かった。