2022.6.8

三井不動産、築50年の賃貸集合住宅をリファイニングで再生

新築に近い賃料を実現

三井不動産は、青木茂建築工房と手がけた第6号目となるリファイニング建築物件「シャトレ信濃町」(東京都新宿区)を竣工した。新築に近い賃料設定を実現。全国で増加する老朽化不動産の再生手法として注目を集めそうだ。


「シャトレ信濃町」内観のBefore、After

リファイニングとは、青木茂氏が提唱する再生建築の手法。銀行からの長期借入を実現するために、徹底した躯体の調査・補修および補強を行った上で、設備や内観を新築同等に再生する。竣工後には建築済証を取得する。建替えと比較して工事費の低減、工期の短縮が可能で、高い事業性を実現。既存躯体を再利用することでCO2削減にも寄与する。また、リファイニング建築の場合、建築基準法の緩和措置があるため、現状の建物規模が維持できる。さらに、法定耐用年を超えても、再度の確認申請の提出、検査済証の提出など、一定の条件をクリアすることで、新築同等の長期借り入れが可能になる。

三井不動産は2016年から、青木茂建築工房と共同し、リファイニング建築を活用した「老朽化不動産コンサルティングサービス」を展開する。単に建築の再生を図るだけでなく、三井不動産グループの連携により、不動産全般のコンサルティング、商品企画、賃貸管理運営など、事業的な再生までサポートする。「シャトレ信濃町」以前にも、都内で5件の賃貸集合住宅をリファイニング建築の手法で再生。そのすべての物件で、周辺の家賃相場と比較して95%の賃料設定を実現。入居率も95%以上を維持している。

賃貸市場のニーズを捉えた間取り構成に変更

「シャトレ信濃町」では既存躯体を補修、補強したうえで84%を再利用。建替えと比較して、CO2を72%削減することが判明している。また、従前は各階3LDKを3戸配置する構成だったが、現代のすまいのニーズや、周辺の賃貸マーケットニーズに対応するため、各階1LDK~2LDKを5戸配置した多彩なバリエーションを設けた間取り構成に変更。従来の20戸から35戸に部屋数を増やし、事業性能の向上および安定稼働の実現を図った。

一般的なブレースを使用する耐震補強では、間取りの制約が大きくなり、眺望性、意匠性も阻害するため、独自の耐震補強計画を検討、実施した。従来、コンクリート製だったバルコニーの手すりを撤去し、ポリカーボネート製の手すりを設置。また、室内のコンクリート製の仕切りも撤去し、大幅な軽量化を図った。さらに、各居室の新たな間取りを考慮して適切に構造補強を行った。

「シャトレ信濃町」のオーナーは、「このエリアでは、建て替えると、建築規模が小さくなり、5階建程度に制限される。部屋数も減り、賃貸マンションの採算性は悪化する。リファイニングを選択することで、現状の建物規模を維持できた。また、工事費用は、建て替えと比較して3割程度抑えられ、工期も建替えであれば3年はかかるところ、13カ月に短縮できた。経営する側としてのメリットは大きい」と話す。なお、「シャトレ信濃町」には、7月下旬まで期間限定のリファイニング建築サロン兼モデルルームを開設。設計のポイントやリファイニング建築の過程などを見学できる。