農作業で都市生活者のストレス低減を 住宅分野での活用に期待
順天堂大学大学院医学研究科 緩和医療学 協力研究員 千葉吉史 氏
人は自然に接すると精神的な癒しを得られると言われている。こうしたことから、我々は部屋に植物を置いたり、週末にピクニックや山登りに行く人もいるが、順天堂大学大学院医学研究科 緩和医療学の千葉吉史 協力研究員は、農作業も精神的な癒しで高い効果が見込めるという。千葉研究員が取り組む実証研究の成果などから、農作業が精神にもたらす効果と、住宅分野での活用の可能性について聞いた。
順天堂大学大学院医学研究科 緩和医療学 協力研究員
千葉吉史 氏
2004年 京都大学大学院農学研究科博士前期課程修了、同後期課程単位取得満期退学。
2016年10月より順天堂大学大学院医学研究科緩和医療学研究室研究員。
農業法人・農業コンサル会社の美和リーフ・アグリコンサル代表取締役も務める。
アグリヒーリングと住まい【前編】
──千葉研究員はアグリヒーリングについての研究に取り組んでおられますが、そもそも、これはどういったものでしょうか?
農作業を通じて、心と身体の健康の回復を図るもので、私が提唱のうえ、体系化し、順天堂大学緩和医療研究室の皆様のお力添えで実証を行ってきました。草花の手入れを通じて心と身体の健康の回復を図る「園芸療法」という考え方がありますが、これを数値化して発展させたイメージです。単に自然の中に身を置くのではなく、農作業というかたちで積極的に自然と関わることで癒しを得ようというものです。
日本では、精神疾患で多くの社会的損失が生じています。少し前のデータですが、2011年で、うつ病による社会損失は3兆900億5000万円、統合失調症は2兆7743億8100万円、不安障害は2兆3931億7000万円であり、これらを合わせると精神疾患の損失は8兆円を超えます。さらに、コロナ禍で様々なかたちで精神的ストレスを感じる人が増えているため、精神疾患による社会的損失は増していますが、私はこうした社会的損失をアグリヒーリングによって少なくしていけるのではないかと考えています。
心にストレスを抱えることによる個々の辛さや、損失は企業でも問題となっています。社員が働けなくなり長期の休暇を申請したり、会社を辞めれば、損失になります。こうしたことから、最近は社員のウェルビーイングを重視した経営を行う企業が増えており、福利厚生の一つとして、アグリヒーリングを活用する動きも出てきています。
──アグリヒーリングの癒し効果について、具体的に教えてください。
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