【2022年の“注目”住宅マーケット:居場所づくり】コロナ禍を経て選択肢が広がる

コロナ禍を経て生まれる新しい暮らし方 移住、多拠点居住、ワーケーションなど選択肢が広がる

移住や多拠点居住、ワーケーションといった動きがじわり広がりつつある。新型コロナウイルスのパンデミックにより、人々の価値観がドラスティックに変わるなか、新たな“暮らし方”が大きく広がりそうだ。


移住・定住の動きが着実に広がりつつある。NPO法人ふるさと回帰支援センターへの来訪者・問い合わせ件数は年々増加、2010年に6020件であったものが、2015に急増して2万1584件、2019年には4万9401件と5万件弱に達している。2020年はコロナ禍の影響があったものの3万8320件だ。

図1 1都6県の人口移動の推移  出典:厚生労働省「人口動態調査」

こうした動きに拍車をかけているのが、テレワークが普及したことで都市部の職場に通勤しなくてもよい状況が生まれたこと。場所に捉われない働き方が広がるなかで、郊外や地方で暮らしたいといったニーズが強まった。同センターでも、テレワーク移住に関する相談が増え、地方移住が身近なものとなっているとみている。

移住の動きで注目されるのは、やはり全国の人口の1割が集中する東京都からの転出だ。厚生労働省の「人口動態調査」によると、2020年5月に東京都の転出者数が初めて転入者数を上回る“転出超過”となり、7月から8カ月連続の転出超過、2021年も5月から10月まで6カ月連続の転出超過が続く。東京都からの人口流出は明らかだ。(図1)

コロナ禍で在宅勤務が増えたことによって通勤時間を考慮する必要がなくなり、より居住環境の良い場所を求める人が増えてきた。ただ、これは地方移住というよりは近郊移住・郊外移住と呼べる流れだ。月に数回の出社も無理なくでき、都市部の利便性も享受できる郊外への移住が中心となっている。

東京近隣県の人の動きをみると、埼玉県は昨年の5月以降一貫して転入増加が続き、3~4月を除くと毎月1000~2000人の増加となっている。千葉県、神奈川県もほぼ毎月の転入増加で、茨城、栃木、群馬は人数こそ2~3桁台なものの、やはりこの1年半は転入増加の傾向だ。

ふるさと回帰支援センターの「移住希望地ランキング」(上位20道府県)をみると、2020年は神奈川県が前年の欄外から9位、群馬県が15位から10位、茨城県が欄外から12位、栃木県が欄外から13位と、東京近隣県がランクアップしている。同センターでは「コロナ禍を受けた変化が大きく表れた部分の一つ」とみている。

郊外の住宅市場は活況を呈し、分譲住宅の開発が相次ぐ。ミニ開発だけでなく、大手企業によるまとまった開発も少なくないなか、土地の取得が難しくなるなど、ブームの様相を呈している。

郊外移住はテレワークの継続、広がりが大きなカギを握っていよう。(公財)日本生産性本部の「働く人の意識調査」によると、「コロナ禍収束後もテレワークを行いたいか」に「そう思う」と回答した人は31.6%、「どちらかと言えばそう思う」を加えると71.6%に達する。

社会的に働き方改革が進むなか、近郊・郊外の住宅需要は引き続き期待の市場と言えそうだ。

生活重視の価値観の広がりで
地方への本格移住が加速するか


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