2024.2.15

相次ぐトレーラーハウス提案の背景に迫る

近年、各社からトレーラーハウスの提案が相次いでいる。車両扱いで設置できる場所の自由度が高いことや、基礎を伴わず土地に与える影響が少ないことが時代の流れと相まって注目されている。住宅と同等の断熱性や遮音性を持つものも多く、新たな暮らしを後押しする存在となりそうだ。

トレーラーハウスとは、車輪がついており、移動が可能な家のこと。道路運送車両法保安基準第2条の制限値である車幅2.5m、全長12.0m、高さ3.8mを超えなければ、車検付きトレーラーハウスとして自動車扱いで公道を走行できる。車両扱いのため、建築物の規制がかかる市街化調整区域でも設置できることがポイントだ。

また、制限値以上のサイズのトレーラーハウス(大型トレーラーハウス)についても、東日本大震災以降、店舗、事務所、公共施設などで利用したいという要望が増えたことから、2012年に制度改正が行われ、速度の制限や車両の前後への誘導車の配置など、運行の安全性を確保するための条件を満たせば、基準緩和の認定をしたうえで、一時的に公道を運行できるようになった。

自動車でけん引すれば場所の移動が可能なため、一時的な場所の利用などにも適している。各社は、特性を生かして、様々な用途での利用を見据える。いま、トレーラーハウス市場では、何が起きているのか、実際はどのように利用されているのか―各社に話を聞いた。

場所に縛られない最先端の暮らしに
トレーラーハウスが台頭

トレーラーハウス拡大のひとつの要因に、暮らしの多様化がある。テレワークやワーケーションといった考え方が普及するなかで、自分の好きな場所で好きなように過ごせる家としての提案が行われている。

タカショーは、デザイナーズトレーラハウス専門のパークホームズ(東京都中央区、池田昌弘代表取締役)、建築・設備・インテリアなどの整備・改善、観光地の活性化・街づくりについて調査研究する(公社)国際観光施設協会(東京都千代田区、鈴木裕会長)、ひとまちコーポレーション(東京都千代田区)などとIoT搭載型トレーラーハウス「GXホーム」を共同開発、23年2月より販売している。前述した各社は、デジタル田園都市国家構想の実現への貢献を目指すLINKED CITYの参画企業で、トレーラーハウスを活用したまちなみ形成を視野に入れる。

アールシーコアの「IMAGO X」。感性重視の住宅づくりを行う同社は塗装や内装の自由度を高めた

「GXホーム」は、住宅価格が高騰するなか、総額2000万円程度でウェルビーイングな暮らしができることをテーマに置き、スマートロックや家電IoTコントローラーなどのスマートホームデバイス、庭、屋外照明を標準装備する。同社の主力商品であるエクステリアや照明を、トレーラーハウスを通じてより広い方面にアピールしたい考えだ。

設置後に専用レールを取り付けて壁を外に出すことで床面積を拡大するスライドアウトを採用し広い床面積を確保し、サイズは全長12.0m、高さ2.4m、幅4.4mとなっている。5色の外装と2色の内装を用意しており、庭・外構まわりはグレード別に、ゴールド、シルバー、ブロンズの3つのパッケージプランから選べる。「例えば、グランピングなどでテントでの宿泊は騒音や虫が多くて眠れないという意見もある。GXホームは住環境としても日本の住まいにふさわしいものをつくっているので、そうした環境下で宿泊施設としての利用にも向いているのではないか」(髙田康平 常務執行役員)と、サイディング施工やトリプルガラス仕様のサッシを導入することで追求した快適性も強みだとする。今後は太陽光パネルや蓄電池の導入も検討している。

一方で、インフラに依存しない新しい暮らし方の実証を進める企業もある。MUJI HOUSEは、23年3月より、インフラを公共のライフラインに依存しないモバイル住宅「インフラゼロでも暮らせる家」の実証実験「ゼロ・プロジェクト」を開始している。郊外の暮らしに視線が向けられるなか、インフラが整っていない地域で自然を壊さずに暮らせる家が必要ではないかという発想で始まったゼロ・プロジェクト。住宅建築時に必要となる基礎も自然破壊につながる恐れがあるとして、基礎工事を伴わない移動式住宅で実証を進めている。①インフラ・ゼロ、②カーボン・ゼロ、③リビングコスト・ゼロ、④災害リスクゼロの4つの「ゼロ」に向けて、インフラユニットに搭載した太陽光発電システム、蓄電池、水循環システムなどを活用し、目標達成を図る。

アールシーコアは、厚さ70㎜の国産杉材を使用したトレーラーハウスで、アウトドア事業者などから人気を得る。同社は、ログ小屋「IMAGO」シリーズから、トレーラーハウスタイプの「IMAGO iter(イマーゴ・イーテル)」、「IMAGO X(イマーゴ・エックス)」を21年10月に販売開始している。

「IMAGO iter」が床面積6.51㎡のコンパクトタイプで、「IMAGO X」は床面積11.27㎡。価格は、「IMAGO iter」の木屋根で386万円~。

据え置きタイプの「IMAGO」が発売から5年で550台を超え、21年の4月~8月にかけては売り上げが前年の2倍を記録したことから、新たな試みとして活用場所を広げられるトレーラーハウスタイプを発売。「アウトドアスキルの高い方と話をしたときに、キャンピングカーでの宿泊はつまらないという意見があった」(BESS事業本部ブランディング本部 木村伸責任者)と、遊び心を再提案する商品として敢えて機能性には特化せずに、未塗装の小屋だけの販売とし、購入した人がDIYなどで自由に手を加えられる余地を残した。

移動には、けん引免許を要するため、ビジネス利用での引き合いが多いが、ログ小屋のトレーラーハウスは話題性が高く、発表時には幅広いメディアに取り上げられた。それをきっかけに、同社のログハウスや固定型のIMAGOへ興味を持ったエンドユーザーからの問い合わせもあり、コロナ禍での同社のPRにつながったとする。

ログ小屋だからこその木を感じられる空間や、目を引く外観により、サービスエリアでのフード販売や、キャンプ練習場の受付などに採用されており、24年1月末時点で62台の販売実績がある。

一方で、同社の感性を重視した独自の住宅コンセプトには、根強いファンも存在する。「当社のログハウスとログ小屋を建てていただいたお客様で、将来は夫婦で日本全国を旅したいと、トレーラーハウスを購入してくださった方もいる。現在は、趣味の部屋として庭に置いているが、地域の方が興味を示し交流の場にもなっている」(BESS事業本部ブランディング本部 松島綾子主任)と、アウトドア好きな顧客層にマッチした商品ともいえそうだ。

頻発する震災にトレーラーハウスが活躍?!

自然災害が多発化、激甚化するなかで注目されるのが、応急仮設住宅としての活用可能性だ。
災害で住まいに住めなくなった人への応急住宅は、アパートなどの空室を利用した賃貸型応急住宅(みなし仮設)と、新たに被災地に建設する建設型応急仮設住宅の大きく2つに分類される。そのうち、建設型応急仮設住宅のなかでも移動式木造住宅が存在感を現し始めている。

例えば、(一社)日本ムービングハウス協会は、石川県からの要請を受け、令和6年能登半島地震の被災地へ仮設住宅を提供している。ムービングハウスをはじめとする移動式木造住宅は、建てたい場所に基礎をつくり、工場で製造した住宅をトラックなどで搬送して設置する。被災地では、2018年に災害救助法に基づく応急仮設住宅として採用されて以降、各地で利用されている。

車両ではなく、建築確認申請に基づく建築物であり、トレーラーハウスとは異なるが、移動式木造住宅のように既につくられた住宅を設置する方法が、仮設住宅の選択肢として関心を集めている。同じく移動式木造住宅を扱う(一社)日本モバイル建築協会も、能登半島地震の被災地へ向けた提供の準備を進めている。「賃貸型応急住宅は被災地から離れていることが多く、仮設住宅への入居を望む被災者は多い。一方で、現場で仮設住宅を建設するとなると職人不足や、職人の宿泊施設が足りないという問題がある。今後の大災害に備えるためにも移動式木造住宅は必要」(長坂俊成 代表理事)。

こうしたなか、トレーラーハウスを応急仮設住宅に利用する取り組みも進んでいる。

志賀町に応急仮設住宅として納品されたカンバーランド・ジャパンの「グランデ」

カンバーランド・ジャパン(長野県長野市、原田英世 代表取締役)は、これまで280台のトレーラーハウスを被災地へ納品しており、2018年の西日本豪雨災害の際には10台を仮設住宅として提供している。

令和6年能登半島地震では、住居用モデルの「コンフォートキャビン」1台を感染対策・福祉避難所として志賀町へ、店舗用モデルの「カタリナ」2台を能登町へ設置している。さらに、日本RVトレーラーハウス協会が石川県より依頼を受け、同社の「グランデ」20台の設置を1月26日より開始している。

石川県知事、副知事、復興副大臣と面談し、トレーラーハウスの活用方法を説明、被災自治体への災害時のアドバイザーなどからの提案と重なったこともあり、採用が決まった。

「グランデ」は、高速道路輸送や災害従事車両としての認定を取得した大型トレーラーハウスで、「仮設住宅として利用するには吸気・換気、化学物質、温熱環境、構造について日本の一定の基準をクリアする必要がある」(原田代表)というように、住宅の基準(建築基準)をクリアしていることが強みだ。幅3.4m、長さは10m、11m、12mの3つを揃えており、価格は1050万円~。災害発生時に1名~8名の宿泊を想定して作られたモデルで、オプションで床暖房やバリアフリーにも対応する。

ミサワホームの「ムーブコア」。災害利用を見越したタイプには間仕切りのカーテンやモジュールファニチャーを用意

ミサワホームは、これまでも応急仮設住宅の建設に関わるなど、災害時の暮らしに焦点を当ててきた。また、長年にわたり行っている南極の昭和基地での建物建設のサポートで、厳しい環境下で耐えられる断熱性能や強い構造体などの知見を積み重ねてきた。こうした知見と、「南極移動基地ユニット」を設計したことなどから着想を得て、日常にも災害時にも使用できるフェーズフリートレーラーハウス「MOVE CORE(ムーブコア)」を開発、23年9月に発売した。

「ムーブコア」は、同社独自の木質パネル接着工法や、可変性に優れた乾式内装などにより軽量化を図ったほか、断熱性能はUa値0.59W/㎡・K、遮音性能は等級Dr—35と、戸建住宅と同等レベルの住宅性能を実現している。

宿泊施設などを主な利用用途に見据えたタイプと、仮設住宅などでの利用を見越したタイプの2つを用意しており、宿泊施設のタイプでは、同社の住宅コンセプトのひとつである収納空間「蔵」を設け、後ろにある小扉から荷物を出し入れできるようにした。「蔵」上部の小上がりは、寝室として使ったり、端に腰かけてくつろぐことができる。

一方、仮設住宅のタイプでは、衛星アンテナや、蓄電池の用意、設置後の太陽光パネルの取付けなど災害時に役立つ設備を充実させたことに加え、天井材は繊維系の軽量で貼り換えしやすいものを採用した。また食料などを貯蔵できるモジュールファニチャーなどを用意、モジュールファニチャーは、ミニテーブルやベッドとしても使える。間仕切りカーテンを設置するなどプライバシーの確保も重視する「仮設住宅への入居は、子育て世帯や高齢者世帯など配慮が必要な方々が優先されやすいが、そうした世帯はプライバシーの確保が困難な状況下でのストレスがたまりやすく、仮設住宅から少し離れて休める場所は必要とされている」(今野明子MJWOOD技術課長)と、仮設住宅地の休憩所などへの利用も見込む。昨年9月の発売から現在までに、100件以上の問い合わせが来ており、能登半島地震の被災地ボランティアの休憩所や調査員の会議室としての利用相談もある。

また、行政などに対しては、公園の一角に設置し、普段はキャンプ場や市民が自由に使える趣味の部屋として貸出し、災害時には避難所とする方法などを訴求していきたいという。

全長6.14m、全高3.78m、全幅2.49mで、価格は800万~。同モデルプランでは、外構も更地に戻しやすい乾式を用いている。

今後は、「災害時の使用を考えると、オフグリッドは一つの課題となる。給排水など、ライフラインに繋がずに活用できるような方法も検討していきたい」(今野課長)とした。

サンワカンパニーの「モバイルクラスコ」は、高いデザイン性が魅力だ

サンワカンパニーは、工場生産による重量鉄骨構造のモジュラー建築「CLASCO(クラスコ)」の技術を応用した「mobileCLASCO(モバイルクラスコ)」を21年6月より販売している。「クラスコ」は、通常の建築物と同等の断熱性や耐震性をもちながら、工場生産により一般建築よりも施工負担が少ないことなどから23年の売上は1.5億円を超える人気商品。しかし、20年にコロナウイルスが流行した影響で宿泊施設や賃貸などとしての活用が多かった「クラスコ」の販売量が一時的に低下、建築申請なしでより気軽に、建築が制限される市街化調整区域などでも利用できる新たな商品としてトレーラーハウスの開発に乗り出した。

特に、3密回避で釣りやキャンプなど自然が豊かな場所でのレジャーに需要が増えるなか、トレーラーハウスへ注目度の高まりを感じ、同社の強みであるデザイン性の高さをトレーラーハウスに反映できないかと考えた。「モバイルクラスコ」は、他社にないスタイリッシュなデザインを売り出す。室外機や給湯器などの設備はルーバーで目隠しをした設備スペースに収納、オプションのオリジナルエプロンを取り付ければ、設置後にタイヤやシャーシを隠すこともできる。出入り口は車両の後ろ側に設置し、ポーチスペースをつくることで、庇を不要にした。また、モバイルクラスコに併せて開発したオリジナルのサンドイッチパネルを採用し、断熱性能を確保、軽量でデザイン性の高い外壁とした。色は、シルバーとメタルブラックで、自然のなかでも、都会の街並みにも調和する色を選んだ。内装にも同社の建材や設備を使用し、統一感を出す。照明やコンセント、換気扇などの最低限の設備を標準搭載し、コンパクトキッチンやトイレ、シャワーブースが装備されたプランの提案やオプションでエアコンや収納ボックスなどの設置も行う。価格は、ベーシックプランが530万円~、水回り設備のついたオフィスプランが580万円~で、室内面積は9.53㎡と13.66㎡の2タイプで用意している。

使用用途は事務所や店舗としての採用が多いそうだが、災害時などでの活用も視野に入れる。給排水の工事や電気工事ができる場所であれば、現地で他社の太陽光発電設備や蓄電池、給排水タンクと組み合わせた使用ができる。「トレーラーハウスは、使用後の撤去のしやすさも特徴の一つ。建築における基礎が不要なため、即座に元の土地へ戻すことができる」(スペースデザイン事業部・濱田広一部長)と、学校の校庭など、もとの土地を再び使用する予定がある場合には基礎の設置がいらないトレーラーハウスが向いているのではないかとする。

現時点での販売台数は5台だが、昨年行った「クラスコ」と「モバイルクラスコ」を同時にPRしたセミナーの反響が良く、問い合わせ件数が増加傾向にあるという。セミナーは、設計事務所やデベロッパー向けに開催したもので、設置した土地での需要がなくなっても、ほかの土地へ移動して使えることからスクラップ&ビルドではない持続可能な建物としてSDGsなどの観点でも訴求を行った。今後も半年に一回程度セミナーを実施し、認知度拡大を目指す。

コロナ禍でのアウトドア需要の高まりにより、アウトドア初心者でも快適に過ごせる施設としてトレーラーハウスを宿泊施設として導入するケースが増えている。一方で、仮設住宅としての利用など新しい用途への活用も広がりをみせており、今後も様々な場面での利用が予想される。トレーラーハウスを置くことで人の集まる場所を提供することができ、地域活性化やなどにもつながりそうだ。トレーラーハウスの活躍に期待が高まる。