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2021.12.21

【2021年重大ニュース 新時代のターニングポイント】オリンピック・パラリンピックが開催

コンセプトは“レガシーの未来への継承” 木造建築、先端技術活用が動き出す

東京オリンピック・パラリンピックの基本コンセプトの一つが「未来への継承」。全都道府県から木材を集めて活用した競技場、最新技術を導入した環境配慮の選手村など、これらのレガシーをどう引き継いでいくのかが問われている。


東京オリンピックが7月23日〜8月8日、東京パラリンピックが8月24日〜9月5日にわたって開催された。東京オリ・パラは、色々な点でこれまでの大会とは異なるものとなった。

コロナ禍で一年延期されての開催に、中止や再延期など世論を分ける反対論が開会式後もやむことはなかった。オリンピックは90%以上の会場で、パラリンピックは原則無観客で行われた。感染予防対策のためにバブル方式が採用され、多くの選手団が選手村などから出ることができず、せっかく日本の文化を世界に発信しようにも難しい状況に。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が掲げた基本コンセプトは”全員が自己ベスト”、”多様性と調和”、”未来への継承”という3つ。このうち”未来への継承”では、「成熟国家となった日本が世界にポジティブな変革を促し、それらをレガシーとして未来へ継承していく」と謳った。

木の文化を受け継ぎ引き継ぐ
全国のスギやカラマツを使用

形が残るレガシーの一つが新・国立競技場だろう。開会式・閉会式が行われるメインスタジアムで、いわば東京オリンピック・パラリンピックの顔とも呼べる施設だ。当初、英のザハ・ハディド氏の設計案が選ばれたものの、費用や工期が問題視されて白紙に。デザインコンペがやり直され、隈研吾氏のデザインに決定した。

「杜のスタジアム」をコンセプトとする新・国立競技場は、地上5階・地下2階建てで高さは約47m、延べ床面積は約19万2000㎡で、約6万席の観客席を持つ。

その大きな特徴が”木のぬくもり”だ。屋根や軒庇、梁、また、ラウンジやテラス、壁や天井などにふんだんに木材が使用された。使用した約2000㎥分の杉やカラマツは全47都道府県から集められた。伝統的な木造建築のアレンジという点からは、受け継いできたレガシーを次代につなげたといっていいだろう。

施設整備では、国立競技場よりも多い約2600㎥を使用した有明体操競技場をはじめ、約800㎥の有明アリーナなど、多くの施設で木をふんだんに使った。選手村の交流施設であるビレッジプラザでは約1300㎥を活用したが、全国の63自治体から約4万本の木材が提供され、大会終了後には大会エンブレムの焼き印を押して各自治体に返却された。

水素活用やAEMSなど環境時代の先進のまちづくりも

HARUMI FLAGは、隣接地の水素ステーションから各街区の純水素型燃料電池へ水素を供給する

東京オリ・パラのための施設としては、選手村として活用された「HARUMI FLAG」が大きな注目を集めた。大手デベロッパーなど特定建築者11社による都内最大級の複合開発で、約13㏊の広大な敷地に5632戸の分譲住宅、賃貸住宅、商業施設、保育施設、介護住宅など24棟を整備、人口約1万2000人の街が新たに誕生した。

その大きな特徴の一つが環境への配慮。地域植生や経年変化に配慮した緑地計画を行い、在来種の比率を60%確保する植栽計画とした。また、水素エネルギーの活用も大きなポイント。各街区に設置される純水素型燃料電池に周辺の水素ステーションから水素を供給、共用部電力として使用する。また、AEMS(地域エネルギーマネジメントシステム)によってエリア全体のエネルギー需給状況を把握、さまざまなエネルギー削減や最適化を目指す。全住戸にエネファームを導入、自給率の高い住宅により20%以上の省エネ効果を実現する。

こうした取り組みにより、「LEED-ND計画認証」のGOLD認証、「SITES予備認証」のGOLD認証、「ABINC ADVANCE」、「CASBEE−街区」のSランクと、数々の環境認証を取得した。

「HARUMI FLAG」は、水素活用やAEMSの導入など、環境時代の新たな要素がふんだんに盛り込まれた先進モデルともいえ、これからの街づくりに着実に受け継がれていくレガシーといえる。

インフラという点では、東京オリ・パラにより交通インフラにも変化の萌芽があった。2020年に新駅として「高輪ゲートウェイ」(JR山手線)と「虎ノ門ヒルズ」(東京メトロ日比谷線)が開業したが、交通インフラの充実は鉄道だけではない。東京オリンピック・パラリンピックには間に合わなかったものの、都心部と臨海部を結ぶ「東京BRT(Bus Rapid Transit)」がプレ運行の段階に入っている。バスを連結した形状で、連節バス、ICカードシステム、道路改良などで路面電車と比較して遜色のない輸送力と機能を持ち、かつ柔軟性を備えた都市交通システムだ。

2022年 これからどうなる

次代を見据えレガシーを形に

2020年末に「2050年カーボンニュートラル」が宣言されて以降、「脱炭素」をめぐる取り組みが急ピッチで進んでいる。

住宅・建築分野では省エネ化の加速、再生可能エネルギーの導入拡大、木材の活用推進などが打ち出され、その施策が相次いで打ち出されている。このうち木材活用は、ウッドショックを契機に外材に頼る状況から国産材活用へ見直す動きが加速する。さらに木促法の改正も大きなターニングポイントいえる。脱炭素社会実現のために建築物の木造化を推進するという姿勢を前面に出し、それまでの公共建築物から一般建築物までも含めて取り組みを加速させる。そんななかで生まれた新・国立競技場は、木造建築物の一つの象徴といえるだろう。

また、先に岸田総理大臣が目玉政策の一つとして「デジタル田園都市国家構想」を打ち出した。

地方からデジタルの実装を進め、地方と都市の差を縮め、都市の活力と地方のゆとりの両方を享受できるようにしていこうというもの。施策としてローカルGの活用、スマートシティの社会実装、テレワークの推進、デジタル化による消防・防災の高度化、高齢者等に向けたデジタル活用支援の推進など、“デジタル”を軸にさまざまな取り組みが進められる。暮らしのあり方、まちのあり方、そして住まいのあり方も大きく変わりそうだ。

トヨタ自動車が進める「ウーブンシティ」、埼玉県久喜市での産学官連携の「ブリッジライフプラットフォーム構想」と、先端技術を活用した新たなまちづくりが進んでいる。エネルギー、交通、通信など暮らしを支えるインフラに最先端のテクノロジーが導入され、利便性だけでなく、環境にやさしく、多様な人が暮らしやすいまちが姿を現そうとしている。

東京オリンピック・パラリンピックを通じ、次の時代に残そうとしたレガシーは、コロナ禍で十分に世界に発信できたとはいえない。2022年は、これらを具体的な形に残す、そんな年になりそうだ。


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