住宅の質向上が冬の死亡リスクを低減 外気温低下よりも室温低下が影響
奈良県立医科大学 疫学・予防医学教室 教授 佐伯圭吾 氏
健康と住まい【前編】
住まいの温熱環境が住まい手の健康を大きく左右することが、近年の研究成果から分かり始めている。奈良県立医科大学の佐伯圭吾教授は、「住宅業界の関係者が思っている以上に、住まいのクオリティを高めることにより、冬の死亡リスクの低減効果が期待できる」と話す。
奈良県立医科大学 疫学・予防医学教室 教授
佐伯 圭吾氏
1999年に自治医科大学医学部を卒業後、奈良県の十津川村、曽爾村で地域医療に従事。その後、奈良県立医科大学疫学・予防医学教室にて、住環境が健康に及ぼす影響に関する疫学研究を実施している。
──温熱環境と健康の関係について教えてください。
私の専門は、疫学・予防医学で、約10年以上前から住環境の温度が、どのように心血管疾患などと関連しているのか関心を持ち研究を進めてきました。結論から言えば、住宅に携わっている方が考えている以上に、健康に与える住宅の重要性は大きいと疫学・予防医学の関係者は考えています。例えば、よくニュースで「今日はこういう気候なので注意してください」というコメントが聞かれるのは夏です。35℃以上の高温になると熱中症を予防するために、「外出しないで家にいて下さい」と注意喚起されます。家がシールドになって夏の暑さから守ってくれるわけです。
一方で、秋から冬にかけて「寒さに注意をしてください」とはあまり聞きません。私の認識では、冬に寒いから外出しないで家にいても、ちゃんと寒さから健康を守ってはくれない。多くの住宅が、冬の寒さから住む人の健康を守るだけのクオリティになっていないのではないか、という問題意識から研究をスタートしました。実は外が暑くて亡くなる人の数と、外が寒くて亡くなる人の数を比べると圧倒的に多いのは寒い方です。実際に、2019年人口動態統計から、月別総死亡数の推移を見ると、明らかに、春、夏に低く、冬に高いことが分かります。6月の約10万人に対して、最も多い1月は約14万人で、4割も多くなっています。
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