公共建築に地域材を使う(上)
さまざまな工夫で課題に対応(3)
利用期を迎える国産材を活用して林業の成長産業化に導くにはどのような取り組みが求められているのか。林材ライターの赤堀楠雄氏が地域で芽生える国産材活用の事例をルポする。
山形県鶴岡市が分離発注で地域材を調達
事業期間に制限がある公共建築物の整備に当たり、地域産の木材をスムーズに調達するにはどうすればいいのか。山形県鶴岡市では、建築工事と木材調達を分けて発注する、いわゆる“分離発注”方式を採用することにより、林業への利益還元、木材の品質確保、タイムリーな木材調達を実現している。
契機となったのは、2005年度に策定した「つるおかの森再生構想」である。内閣府から地域再生計画として認定されたこの構想では、市域の73%を占める森林を適性に整備・保全していくためには「木材資源が循環する仕組みをつくる必要がある」とし、その先導的役割を果たすためとして、①公共建築に地域産木材を率先して利用する、②木材を分離発注によって調達する──との方針を打ち出したのである。
設計・番付・加工を市がコーディネート
木材を分離発注すれば、設計・施工のスケジュールとは別に事業期間を設定でき、伐採や製材、乾燥などに要するリードタイムを適切に確保できる。さらに、木材の調達価格を市の裁量で決定し、林業経営に適切な利益を還元することも可能になる。
そうした効果を実現するため、市の建築課では、建設プランの構築に深く関わり、地域の木材供給体制に即した内容で建物が設計されるように設計・施工業者に働きかけている。さらに基本設計を踏まえて木材の調達内容を見積もった上で、大工の木拾い結果に基づく細かな調整作業を逐一、仲立ちし、無理や無駄が生じないようにしている。
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