既存の素材生かしてグランピング体験を提供
女性視点でデザイン 宿泊と食事も充実
福岡県福津市西福間の浜辺の「グランピング福岡 ぶどうの樹〜海風と波の音」は、多くの若い人で賑わうトレンドの場だ。だが、かつては浜辺の防風林の松林にゴミの不法投棄があったりと、決していい環境とはいえなかった。
それを変革させたのは、同じ浜辺沿いにある福岡県遠賀郡岡垣町「グラノ24K ぶどうの樹」(小役丸秀一社長)だった。同じ波辺につながる西福間も海の美しい風景を繋ぎたいという思いから、福津市と地域の住民との協議会を立ち上げ、地域に貢献できるものならということで、2013年に浜辺に面してチャペルのあるウエディングスペース、海の観える寿司店、ブッフェレストラン、ビヤガーデン、カフェなどを作った。土地は一部が市のもの、一部が森林組合のものを借り受けたものだ。

また浜辺の清掃を毎週行い美しい砂浜を蘇らせた。地元の人が散策をして、ゆっくり海を見ながらコーヒーを飲んでもらうことを想定したものだ。
地元の魚を提供する寿司店は特に人気だ。カウンターの向こうがガラス張りになっていて、美しい浜辺と海が見渡せる。

ウエディングスペースはすぐ目の前が浜辺で、新郎新婦が式を挙げれば、そのまま浜辺に駆け出すという、お洒落でユニークな趣向。都会では絶対できないアィデアでコンテンツは抜群だった。
ところが、ウエディングスペースが不人気だった。岡垣町の「ぶどうの樹」には宿泊施設があるが、福津市では宿泊施設がないので式の関係者が泊まれない。バスもないことからタクシーで来るしかない。結婚式を挙げるのは、年間にせいぜい50数組で不調だった。
そこから宿泊施設の構想が持ち上がった。新規企画・商品開発を担当する加悦典子さんが提案し、実際に社長、加悦さん、スタッフと国内で人気というグランピングの現地に体験視察を実施した。しかし、満足度の高い宿泊と食事はなかなかなかった。これなら「ぶどうの樹」の実績とノウハウを生かせば、優れたグランピングができると判断した。もともと旅館を営んでいたのでノウハウを生かせる。

加悦さんは、食育体験のワークショップを「ぶどうの樹」で実施してきた経験がある。そこで出会ったのがベルギー製の「ドムアップ」。森の中に宙に浮く形で設営するもので、冬場でも使えると提案し、福津市でプレゼンをした。
ベルギー製で森の木を傷めずにドーム型のテントを吊るすことができるが、海岸には大木がなかったので電柱をたてて吊るすことにした。これが始まり。ロフトのあるコテージ4棟、さらに、地域の銀行の融資を受けてテント8つを設置した。幸い水道や電気は、地域には通っていた。
もうひとつ画期的なのは、このプロジェクトは加悦さんのほかに店舗開発とデザインの2名との女性チームでまとめたことだ。女性の視点が生かされて、食べるところから部屋までカラフルに色彩設計もされて個性豊かなデザインがほどこされている。食器からアメニティ、シャワー、トイレまで、過不足なく揃っている。女性や子供連れでも使いやすく寛げ安心できる空間を作り上げた。

こうしてオープンをしたのだが、なんと、初日に台風が来てテント3棟が飛ぶというアクシデントに見舞われる。またテントは仮設のために県の条例で3か月しか運営できない。
そこで加悦さんは、福津市に、今、グランピングにムーブメントが来ている地域振興のチャンスと話をした。建築許可を取れるよう基礎工事を行い、若者に人気のあるキャンプ用品ブランドのDODと契約し、タケノコテント5棟を取り入れた。さらに、アネックス4棟、コテージ4棟、ツリードーム1棟を生み出し、こうして年間を通して営業できるようにした。
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ハウジング・トリビューンVol.618(2021年7号)
特集:
SDGs、脱炭素達成に向け脚光
国産材を取り巻く環境は近年、劇的に変化している。
伐採期を迎えた国産材を積極的に活用しようという機運が高まり、また、SDGs、脱炭素といった観点からも国産材に脚光が集まる。
さらに、新型コロナ感染拡大の影響で、外材の輸入が滞り、外材が高騰、不足する逼迫した状況の中で国産材へのシフトが加速する。
こうした中で、持続可能な形で国産材活用を推進していこうとする住宅事業者などの取り組みも活発化しつつある。
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