2019.9.24

住宅業界でグリーンボンドの発行が相次ぐ

大建工業や三井不動産が資金調達に活用

住宅・不動産業界でグリーンボンド(環境債)の発行が相次いでいる。大建工業と三井不動産が今年9月に相次いで発行を予定するなど、環境配慮に基づいた事業資金調達の取り組みが拡大している。


グリーンボンド(GB)とは、環境に配慮した事業(再生可能エネルギー、省エネルギー、電気自動車など)の資金を集めるために、事業者が発行する債券のこと。

日本でのGB発行額は大きく増加傾向にある(下図参照)。ESG(環境・社会・ガバナンス)経営の一環としてGBの活用に注目する企業が増えていることなどが、急拡大の理由だ。

こうしたなかで、住宅・不動産業界でも、GBを発行し事業の資金調達に活かす動きが相次いでいる。大建工業は今年9月に、50億円のGBを発行する予定だ。国内建材業界でGBを発行するのは初となる。未利用資源や再生資源、循環利用が可能な木質資源などを主原料とする素材(ダイライト、ダイロートン、インシュレーションボード)を生産する岡山工場・高萩工場の改修資金の調達にGBを活用する。

三井不動産もESG経営の一環として、GBの活用に乗り出す。今年3月に竣工した「日本橋室町三井タワー(日本橋室町三丁目地区第一種市街地再開発事業 A地区)」の保留床取得資金のリファイナンスのため、9月に500億円のGBを発行する予定だ。日本橋室町三井タワーは、日本橋室町地区の再開発の一環として建築された複合施設で、最新のエネルギーマネジメントの取り組みを採用している。

このほか、省エネ住宅の普及を促す住宅ローン商品の提供でもGBの活用が進む。(独)住宅金融支援機構は省エネ性の高い住宅を対象にした「フラット35S」を提供するための資金調達に、グリーンボンドの活用を開始している。今年の1月と7月に発行を行い、それぞれ100億円を調達した。

機関投資家の中でESGが投資の大きな判断材料となりつつあるため、日本でもESGに配慮した経営が求められてきている。そのなかで、住宅・不動産事業者は省エネ住宅などの観点から環境分野(E)での取り組みに親和性が高いと言えるだろう。それだけに、住宅・不動産事業者がESG経営を進めていくにあたり、環境に配慮した事業を対象に発行を行うGBの活用は、今後さらに加速していく可能性が高そうだ。

国内グリーンボンド発行額推移