ワコール、2018年度から宿泊事業に参入 京都の宿泊施設不足、空き家問題の解決へ
新規事業への挑戦で伸び悩む国内市場売上をカバーも
下着メーカー大手のワコール(京都市南区、塚本能交代表取締役社長)が2018年度から宿泊事業に参入する。参入によって慢性的な宿泊施設不足や、空き家などの問題の解決に加えて、京町家の保全などに貢献していく。あわせて、下着の国内の売り上げが伸び悩むなかで宿泊事業の参入により本業以外での収益確保を狙う。
「京町家」は京都の伝統的な住宅のひとつだ。京都市では京町家について「1950年(昭和25年)以前に伝統的木造軸組工法で建てられた木造家屋」と定義しているが、一般的な定義はさまざまで、正式に統一化はされていない。この伝統的建築物として価値の高い京町家が、近年減少し続けている。理由のひとつが高齢化による住人の減少や後継ぎ不足。京都市の調査では現存する町家の1割以上が空き家になっていることがわかっている。
こうした京町家の現状の解消に貢献すべく、京都に本社を構える下着メーカー大手のワコールは宿泊事業への参入を決めた。同社総合企画室 広報・宣伝部 広報・宣伝課の山本圭奈子氏は「本業とのシナジー効果はあまり見込めないが、京都に長い間本社を構える企業として何か力になりたかった」と話す。
事業は、グループ会社で東京・青山の複合文化施設スパイラルを運営するワコールアートセンターと連携して行う。ワコールは行政や地元不動産会社を介した物件所有者との賃貸借交渉や契約業務、施工業者の選定、宿泊事業の運営全般を担当。一方、リノベーションに関するデザイン、各種サービスなどのディレクション業務はワコールアートセンターが担当する。
具体的には、空き家になっている京町家の所有者から10~15年間京町家を借り、同社がリノベーションを施し簡易宿泊施設として運営する。賃貸借期間終了後には物件をそのままオーナーに無償で返却。オーナーに返却することが前提のため、返却後に住居として使用できるように配慮したリノベーションを行っている。山本氏は「京町家の良さを感じて住み繋いでもらいたい」と話す。
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