2020.4.20

緊急事態宣言の拡大を受け 休工判断で揺れる住宅会社

緊急事態宣言の対象地域が全国へと拡大されるなか、住宅業界は建築現場を休工にすべきか否かで揺れている。大和ハウス工業では、いち早く施主の了解を前提として休工に踏み切る方針を明らかにしているが、顧客の事情も関係するだけに判断が難しい状況となっている。


緊急事態宣言が全国に拡大されてこともあり、清水建設や鹿島建設、大林組などの大手ゼネコンが相次いで全国の建設現場で工事を中断する方針を発表している。こうしたなか、住宅関連企業では、大和ハウス工業が戸建住宅も含めた全国の施工現場を対象として、5月10日まで休工とすることを決定した。

戸建住宅ではないが、大東建託でも全国1750現場の工事現場について、賃貸住宅のオーナーや入居申し込み者との協議が整ったものから工事を中断していく方針を明らかにしている。

住宅の施工現場
工事を中断すべきか否かの判断が求められている(写真はイメージ)

一方、同社以外のハウスメーカーでは、判断を迷っている部分もあるようだ。住宅の場合、発注者が個人であることが大半であるため、例えば引渡し時期が予定よりも伸びれば、賃貸住宅に住んでいる施主はその分だけ賃料を余分に支払うことになる。

また、「新型コロナウイルスの影響によって工事が遅延した場合、遅延損害金等の対象にならないため、工事を中断することで最終的には施主が損害を被ることも十分に考えられる。その当たりの救済措置が講じられない限り、一律に休工にすることは難しいのではないか」という意見も聞かれる。

この点について大和ハウス工業でも、あくまでも施主の了解を前提として休工を行おうとしており、個別の状況に対して丁寧な対応を図ろうとしている。

なお、国土交通省では、「新型コロナ感染症の影響に伴う資機材等の調達困難や感染者の発生等については、建設工事標準請負契約約款において、『不可抗力』によるものとして受注者は発注者に工期の延長を請求でき、増加する費用については受発注者が協議をして決めること」という考えを示している。

一方、「戸建住宅の現場の場合、工事を行う人の数も限らており、いわゆる“3密”のような状況になり難い」という声もある。既に多くの住宅会社では、できるだけ時間差で現場に入るように施工業者に指導しているほか、内装工事を行う場合は換気を徹底するといった対策を講じている。

徹底した感染防止策を講じながら工事を進めていくべきなのか、それとも休工の判断を下すべきなのか―。いずれにしても、施主の事情や今後の政府の方針、さらには新型コロナウイルスの感染状況なども踏まえながら、難しい判断が強いられることになりそうだ。