2024.8.19

猛暑で建設業の死傷者が増加 万全の熱中症対策を

10年に1度程度しか起きないような著しい高温の懸念も

猛暑の影響によるものとみられる死亡災害事故が建設業で増加していることが、厚生労働省が発表した「令和6年における労働災害発生状況について(7月速報値・累計)」で分かった。毎年夏の猛暑が常態化する中で、万全の熱中症対策が求められている。

それによると死亡災害の発生状況は、全体では前年同期比1・0%減少の299人であったが、業種別に見ると建設業が最多で同14.8%増の101人と大幅に増加。事故の型別発生状況は、墜落・転落が最多で、同19.7%増の91人であった。

また、厚労省が24年5月に公表した、23年の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)によると、職場での熱中症による死傷者(死亡・休業4日以上)は、1106人(前年比279人・34%増)であり、全体の約4割が建設業と製造業で発生している。また、熱中症による死亡者数は31人(同1人・3.3%増)であり、建設業(12人)や警備業(6人)で多く発生。建設業は19年~22年計においても業種別による熱中症の死亡者数が最も多くなっている。

戸田建設、京都プラテックが共同開発した、背負い式大型冷却デバイスの使用状況

気象庁は7月18日、1か月予報(7月20日~8月19日)を発表、特に期間の前半は、全国各地で気温が平年より高く、猛暑となる見込みだ。また、同日、全国の広範囲に「高温に関する早期天候情報」を発表。これは10年に1度程度しか起きないような著しい高温や低温、降雪量(冬季の日本海側)となる可能性が、いつもより高まっているときに、6日前までに注意を呼びかけるものだ。

建設業の中で、猛暑による死傷事故を防ぐために、より一層踏み込んだ万全の猛暑対策、熱中症対策を進める動きが出てきている。戸田建設(東京都中央区)は、京都プラテック(京都府久世郡)と共同でペルチェ素子、直流電流を流すと一方の素子の面で吸熱、他方の面で発熱する半導体熱電素子の一種を用いた背負い式大型冷却デバイスを開発した。作業により一旦深部体温が上昇すると、安全な温度に降下させるまでに時間がかかり、熱中症災害リスクが高まる。人工気象室(温度:35℃、湿度:65%RH)において、20分間の運動後の衣服内温湿度や発汗量、冷感などの変化を調査した結果、同デバイスの着用により、衣服内温湿度と発汗量の低下、暑さや不快感、蒸れ感が改善する効果を確認している。従来の熱中症対策では対応困難な酷暑環境での作業において、同デバイスは冷感を付与して快適性を向上させるだけでなく、深部体温の上昇を抑制することで、効果的で新しい熱中症対策を提供する。
三和建設(大阪市淀川区)は、建設現場にかき氷ステーションを設置し熱中症対策を強化している。約10年前、出勤前にコンビニエンスストアで氷を買う作業員の様子に当時の現場所長が気づき、「製氷機を現場に設置したらみんなの負担が軽くなるのでは」と考え、建設現場に製氷機を導入。作業員に好評で、それ以降毎夏、続けている。