都市型豪雨に対する住まいの「耐水」新戦略
「都市治水」と「住宅防護」を一体で捉え直す転換期
令和8年8月の千葉豪雨をはじめ、近年、都市型水害により、ハザードマップの浸水想定区域を超える浸水被害が発生し、甚大なインフラ被害、住宅被害が広がるケースが増えている。
地球温暖化の進行などにより、激甚化する都市型豪雨を受け、国はどのように、「居住誘導区域の設定」と「水害からの安全確保」を両立させ「まちづくりを誘導」しているのか。また、東京都などの大都市を抱える自治体は、どのような内水氾濫対策を進めているのか。また、どういった建物単体、あるいはまちづくりの水害対策により、どの程度、都市型水害の被害は抑制できるのか。
「都市治水」と「住宅防護」を一体で捉え直す転換期を迎える今、住まいの「耐水」新戦略を追った。
また、都市水害への住まいの備えについて、有識者2人に聞いた。
都市型水害の増加とそのメカニズム
近年、従来のハザードマップの想定を超える短時間強雨が都市部を襲い、甚大な内水氾濫を引き起こすケースが急増している。地球温暖化に伴う大気の変化や線状降水帯の発生は、従来の河川氾濫対策だけでは防ぎきれない新たな水害リスクをもたらした。最新の気象データと被害実態から都市型水害のメカニズムを紐解く。

1.5倍に急増する猛烈な大雨
頻発する「ハザードマップ外」の浸水
近年、1時間に50㎜を超えるような猛烈な大雨の発生頻度が増加している。気象庁の統計データによると、「1時間あたり50㎜以上の雨」の最近10年間(2014~2023年)における年間平均発生回数(約330回)は、統計開始当初の10年間(1976~1985年)の平均発生回数(約226回)と比較して約1.5倍に増加している。また、「80㎜以上」は約1.7倍に増加している。特に6月から10月の出水期にかけて集中豪雨や台風に伴う水害リスクが高まり、深刻な風水害への警戒が必要とされている。
8月千葉豪雨でハザードマップ超えの浸水

特に、令和8年8月13日夕方から14日未明の千葉豪雨(令和8年8月千葉豪雨)は、都市部に短時間に豪雨が降り続ける「都市型豪雨」の怖さを印象付け、社会に大きなインパクトをもたらした。
令和8年8月千葉豪雨では、千葉市で24時間降水量364㎜(気象庁解析367㎜)、1時間降水量115㎜という観測史上1位の記録的大雨となった。
ハザードマップ(浸水想定区域)を超える浸水被害も広がった。ウェザーニューズの被害リポート分析によると、被害報告の55.7%(2人に1人以上)が浸水想定区域や低位地帯の「外」で発生していた。下水道の一般的な処理能力(約50㎜/h)の2倍にあたる100㎜/h超の猛烈な雨が短時間に降ったため、河川氾濫を前提とした従来のハザードマップの想定を超え、アンダーパスや道路の排水能力オーバーによる「内水氾濫(都市型水害)」が広域で頻発した。
その結果、千葉県内で床上浸水1996棟、床下浸水2016棟を含む計4866棟の住家被害が発生した(8月31日時点)。道路冠水等により一時約2700台の車両が立ち往生し、アンダーパス冠水やタクシー水没による死亡事故も起きた。さらに八千代ポンプ場等の浸水機能停止、千葉市での断水など都市機能・インフラにも大きな被害が出た。
線状降水帯がもたらす都市型内水氾濫のメカニズム
このような局地的な猛烈な雨がなぜ起きたのか。気象庁の「令和8年夏を対象とした異常気象分析検討会」の分析によると、記録的大雨の背景には地球温暖化に伴う大気全体の気温上昇や、上空の偏西風の大きな蛇行といった大規模な大気の流れの変化がある。
「令和8年8月千葉豪雨」では、以下の2段階のメカニズムで強烈な豪雨が発生したと分析する。
まず、房総半島付近へ流入した強固な下層暖湿気と、南下した寒冷渦に伴う強い上層寒気によって大気が極めて不安定化した。
さらに、関東内陸部の冷気層東端と暖湿気が交わることでシアーライン(局地的前線)が形成された。そこに暖湿気が乗り上げることで積乱雲が高度15㎞を超えるレベルまで次々に発達し、非常に強い線状降水帯(メソ対流システム)が形成・維持された。
地球温暖化に伴う気温上昇や水蒸気量の増加により、今後もハザードマップの想定を超えるような都市型内水氾濫や激甚な豪雨が増加する懸念は高まっている。「都市治水」と「住宅防護」を一体で捉え直す転換期を迎えていると言えそうだ。
国が進める流域治水と都市・住宅政策
激甚化する水害に対し、国はハード整備の限界を見据えた抜本的な制度改正を進めている。「流域治水」の理念のもと、立地適正化計画を通じた安全な地域への居住誘導や、治水と建築が連携した総合プロジェクトが本格始動した。
激甚化する水害リスクを踏まえ国は、制度改正を進める。2020年8月には、宅地建物取引業法(宅建業法)が改正され、浸水想定区域内における不動産取引に関して、水防法に基づく水害ハザードマップが重要事項説明の対象に加わった。
2021年2月には、「流域治水関連法案」が閣議決定された。ハード整備の加速化や治水計画の見直しに加え、上流・下流や本流・支流の流域全体を俯瞰し、流域自治体、企業、住民などのあらゆる関係者が協働して取り組む「流域治水」をより一層推進するため「流域治水関連法」を整備。新たに「浸水被害防止区域」を設定し、住宅・不動産事業者などが同地区に、住宅や要配慮者施設などを新たに建設する際は、都道府県に対して、浸水被害の安全性を証明し許可を得ることを義務付けた。
ハードの限界を克服する都市局の「防災まちづくり」
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