リビタ “音の借景”をテーマに広尾のマンションをリノベーション
都市の交通音、環境音を心地いい背景音へ昇華
異分野協業プロジェクト「icco+c」の一環として、音環境を切り口に新たな暮らし方を提案するリノベーション住宅を東京都渋谷区広尾で展開した。
区分マンションの買取再販事業などを行うリビタは、昨年秋に「icco icco(イッコイッコ)」というブランドを立ち上げ、「一戸を唯一の住まいに」というコンセプトで、一戸ごとの特性に合わせた暮らしの提案を行っている。なかでも、同社と外部パートナーで協業する「icco+c(イッコプラスシー)」では、様々な分野の専門家とともに買取再販事業を通じて新しい暮らし方を提案する。
「icco+c」の最新物件として、東京都渋谷区広尾に竣工したのが「朝日広尾マンション」の一室だ。同物件は恵比寿エリアのオフィス街から近い場所に位置し、明治通りを走る車の交通音など都市型のノイズに囲まれた住戸となっていた。一方で、二重サッシの採用や断熱性能の大幅な向上により、「ZEH Oriented」基準を満たす省エネ住宅(BELS評価取得)を実現している。気密性も高いため、遮音性能も一定の水準を満たしており、窓を閉めれば外部の騒音は気になりにくい。しかし、リビタでは都市型の住戸で一般的な「窓を閉めて解決する」というところから一歩踏み込んで、窓を開けても快適に過ごせる住環境を目指した。そこで、音を軸に住環境を設計する「音の借景」をテーマに据えた。「窓を閉めるのは選択肢のひとつとしてはいいと思うが、都心だから窓を開けられないのは仕方ないとするのではなく、空気の循環などを考えてももう少しフラットに窓を開けられる住戸にしたかった」(分譲事業本部レジデンシャル事業部ユニット推進第1グループ 好田未来 氏)。
この新たな暮らし方を形にするため、今回は外部パートナーとして神山聴景事務所(東京都千代田区、神山健太代表取締役社長)を招き入れた。同事務所は、空間の用途や滞在体験に合わせた音環境の設計・音楽制作を行っている。普段は商業施設やオフィスなどの案件が多く、住宅を手掛けるのは初だという。商業施設などの音響設計では、不快な騒音に対して別の音を被せることで存在感を打ち消す「サウンドマスキング」の手法が一般的だが、今回は「外の音を受け入れ、調和させる」という住宅の特性に合わせたアプローチに挑戦。同物件のベランダや周辺で環境音を収録、緻密な分析を行い、住まい全体の穏やかな響きとして整える「聴景デザイン」を施した。
住戸には無指向性スピーカー「listude」を2台設置。神山聴景事務所が作成したオリジナルの音源と、外部から入る交通音や渋谷川のせせらぎが混ざり合うことで、心地よい環境音を生み出す。さらに、リビングダイニングの天井に採用した吸音材は、会話や音楽が最も心地よく聞こえる吸音率を計算し、それに適した量を充填している。リビングドアはルーバー扉を採用することで、風の流れによって各居室に音が届くような仕様にした。
音だけでなく、内装デザインにも「ノイズの調和」という考え方を反映した。1つの空間の中にモルタルやタイル、木材など多彩な建材をあえて混在させ、それぞれの素材感が持つ視覚的・触覚的なノイズを互いに中和させ、空間全体として見た時上手く調和するよう考えられている。一方で、エアコンや冷蔵庫は専用の収納スペースを設けたり、壁に埋め込むことで、ノイズを抑えている。
好田氏は「都市の音と共存しながら心地よく暮らすという提案は今後の買取再販事業における新たな可能性になった」と話す。
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