牧場の風景を建築に編む 空間と食と環境が一体化
磯沼牧場とTOKYO FARM VILLAGEの試み
東京・八王子の住宅地に囲まれた磯沼牧場。その一角に誕生した「TOKYO FARM VILLAGE」は、牧場の風景と食、そして地域の人々を結びつける新しい拠点である。設計を手がけたのは建築家・加藤渓一さん(スタジオピース一級建築士事務所)。この建築の出発点は、形ではなく「関わり方」にあった。
八王子で菓子店を経営するバーゼル代表の渡辺純氏と磯沼牧場が構想していたのは、単なる飲食店ではなく、牧場の魅力を開いたかたちで伝える場所だった。そこで求められたのが、地域の人を巻き込みながら建築をつくる手法である。加藤さんが長年続けてきた「ハンディハウスプロジェクト」は、住民参加型で建築をつくる実践であり、この思想が計画の核となった。
建築の最大のテーマは、牧場の風景をどう生かすかだった。牛が歩き、畑が広がり、遠くまで地平線が見える。その環境を主役にするため、建物はあえて低く抑え、横に伸びる構成とされた。鉄骨造による大スパンを生かし、牧場側には大きな開口部を設け、室内のどこからでも外の風景が視界に入るようにしている。さらに3.5mも張り出した深い軒が、夏の強い日差しを遮り、風を通す。テラス席は飲食店としては効率が悪いが、この場所では牛の匂いや草の香りを含んだ「空気」そのものが体験の一部となる。
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