建材・住設の1兆円巨大メーカー誕生へ YKK AP 堀秀充 代表取締役会長が語るPHS統合の全貌と「生活向上産業」への転換
2025年11月17日、YKKは、パナソニック ホールディングス(PHD)が所有するパナソニック ハウジングソリューションズ(PHS)の株式のうち80%を取得しグループ化すると発表した。
これにより建材・住宅設備の1兆円総合メーカーが誕生する。どのようなシナジー創出、未来を描いているのか。
PHSとの経営統合をリードしたYKK APの堀秀充会長(YKK取締役)に聞いた。
―― PHSとの経営統合、グループ化の発表は、住宅業界、建材・設備業界に大きな衝撃を与え、多くの関心を集めています。
非常に驚いたという声を各方面からいただいています。しかし実は、YKK APとパナソニックとの関係は今に始まったことではありません。2002年頃には、当時の松下電工とYKK APで「MY」という業務提携をしていた実績もあります。
YKK APの社員、取引先からはポジティブな反応が多いです。TDY(TOTO・DAIKEN・YKK AP)の提携では、資本関係がないためクロスセル(相互販売)はしておりませんが、今回はPHS商品を販売できることを、特に流通事業者は評価しています。
一方で、パナソニック側には不安の声があることも事実です。PHSとの経営統合の発表後、PHSの社員集会に我々が出席して様々な質問を受けてきました。
今後とも丁寧に、真摯に不安の解消に向けての説明、取り組みは継続して行っていきます。
―― PHSとの経営統合に至るまでの経緯について教えてください。
YKK APは2024年1月にヘルスケア関連商品・サービスの企画・開発・販売を行う新会社を立ち上げましたが、最初はそのヘルスケア関係での協力をPHSに持ち掛けたのが始まりです。そこでYKK APはこういうことをやっていますということを全部お見せしようと、PHSの山田昌司社長を黒部にお招きして、樹脂窓の生産ラインなど、普段は外部の方には見せないところも含めて我々の施設を視察していただきました。
その後、山田社長と私との2人だけでの話し合いなどを経て、2024年11月にPHDの楠見雄規社長と山田社長のお2人がYKKにお見えになり、YKKの猿丸雅之会長(当時)と私が対応しました。そこで正式にPHSの株式譲渡の打診がありました。
その後、M&Aの知見を持つ、YKKの社外取締役や監査役などに意見を求め、ポジティブな反応を得たことで私は進める決断をしました。YKKのオーナーであり、相談役の吉田忠裕が好意的な反応を示したことも大きな後押しとなりました。

「窓」の限界を「水回り」で打破
ショールームが生むリフォームの新たな動機付け
―― 市場環境なども踏まえて、何がPHSとの経営統合の決め手となったのでしょうか。
一つは、今後リフォーム事業を伸ばしていく上で、PHSが持つキッチンはじめ、トイレ、バスなどの水回りの商品、また、顧客との接点であるショールームなどが非常に魅力的であったということです。
YKK APは住宅用窓、また、ビル用サッシ・カーテンウォールで高いシェアを持っています。特に新築の戸建て住宅は非常に得意なのですが、新築市場は伸び悩んでいます。住宅用窓のシェアを今の約50%を超えて、60%、70%と伸ばしていくことは簡単ではありません。当然のこととしてリフォーム事業を伸ばそうと、市場開拓を進めていますが、窓の交換需要は限られています。実際には、リフォームで窓が売れているのではなく、増築・改築をするときに、窓も取り換えようと新築と同じような形で売れているだけです。国の補助事業の後押しもあり、内窓をつけるリフォームの需要は増えていますが、純粋に窓を取り替えようというニーズはまだほとんどないのが現実です。
一方で、先日、PHSのショールームを視察しましたが、キッチンを見る顧客の反応と、YKK APのショールームで窓を見る顧客の反応を比べると明らかに違うことに気づきました。PHSのショールームでは、お母さんと娘さんらしき2人がキッチンを見ていましたが、そのキッチンを自宅に設置した際の生活シーンが頭に浮かんでいるのか、高さはどうだ、色はどうだと、楽しそうに話している。会話の中に憧れや期待を感じ取ることができました。リフォームではキッチン、フローリング、水回りが優先され、窓は後回しになる傾向があり、この現実にずっと危機感を持っていました。
今回の両社の統合により、リフォーム市場でのクロスセルの機会が生まれ、新たな提案ができるようになる。リフォームには向かない窓の致命的な欠点を打破できるのではないかと期待しています。
例えば、PHSのショールームから入ってくる顧客にアプローチして、PHSが持つ、水回りの商品やフローリングなどに加えて、我々が持つ、窓をはじめ、玄関ドアやエクステリアなども含めたパッケージのリフォーム提案をしやすくなります。
また、断熱リフォームの可能性も広がります。ZEHを上回る新たな省エネ住宅の基準として「GX ZEH」が打ち出され、住宅の高断熱化が進んでいます。両社の商品を組み合わせれば、ばらばらにリフォーム提案を行うのではなく、1回で断熱リフォームの提案を行うことができます。営業効率も上がり、販管費も抑えられます。
新築市場が縮小し、リフォーム市場が拡大していく中で、水回り事業は今後も高い成長性が期待できます。PHSの商品ラインアップにも大きな可能性を見出しています。特にトイレ温水洗浄便座の「アラウーノ」などの水回りの商品は、もっと市場シェアを獲得できると考えています。
YKKグループにとっての2034年は、創業100周年を迎える重要な節目の年ですが、その創業100周年を考えたときに、本当に国内でYKK APが生き残る道があるのか。今までは新築でシェアを順調に上げてきたため、新築住宅着工戸数が100万戸から80万戸に落ちているという感覚を当社の社員はあまり持っていません。シェアは右肩上がりで伸びていくという感覚しかなく、ある程度でシェアが止まり、新築住宅着工戸数が落ちてきた時の、本当の“落ち”をまだ経験していません。新築中心の事業モデルから脱却し、YKK APを持続的に発展させていくには、新たな切り口でリフォーム事業を拡大していく必要があります。今回の両社の経営統合によりその突破口を開いていけると考えています。
標準リフォームをメニュー化
5000万戸のリノベ需要を掘り起こす
―― リフォーム市場の拡大に向けて鍵になるのが、将来のリフォームを見越した、リフォームのしやすい住宅部品、システムの開発です。今回の経営統合により、両社を合わせると住宅部品の7~8割をカバーできるという強みを生かせば、将来のリフォームのしやすさも考えた住宅部品、システムの開発もできるかもしれません。
将来のリフォームのしやすさも考えた住宅部品、システムを開発することはできると思います。回転寿司店が顧客の食べたいものを聞いてそのネタをすぐに出すといったように、標準リフォームをメニュー化することはぜひやっていきたいと考えています。
構造躯体まで壊すようなリフォームは、新築と変わらないコスト、施工の手間がかかります。どの部分がどれぐらいの耐用年数を持ち、どれぐらいで交換する必要があるのかを計算して当初に新築住宅を建てることが本当は一番いいと思います。
マンションでは、何年後にどのようなリフォーム、コストが必要になるのかを管理組合や管理会社が計算してくれる仕組みが整備されていますが、戸建て住宅については住まい手に任せっぱなしで、そうした仕組みがほとんど整備されていません。近年は、新築時に一定の耐震性能、省エネ性能などを確保し、公的な機関が審査してお墨付きを与えることで、将来の売却時に最低限の資産価値を保障する仕組みなどが普及しつつあります。そうした仕組みが広がっていけば中古住宅・リフォーム市場はもっと活性化していくと思います。
2050年に向けて質の高い住宅ストックを形成するためには、現在の6000万戸の住宅ストックのうち5000万戸を建て替えるか大規模リノベーションする必要があります。大地震が来ても倒壊しない、高断熱で快適に健康に住める家を残していくには、年間20万戸、その内訳として新築10万戸、大型リノベーション10万戸のペースで住宅の質を向上させる必要があります。
オフサイト建築と共同購買で
高騰する住宅価格に挑む
―― もともと御社は、大型パネル事業を展開するウッドステーションに出資しています。また、今回のPHSのグループ化によりテクノビームなどの構造躯体もラインアップに加わります。構造躯体を扱うことができる強みをどのように生かしていく考えでしょうか。
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