New   2026.1.29

地方創生のキモは医療、教育、福祉への公費投入 地震リスク、少子化対策のためにも地方への分散を

日本総合研究所 藻谷浩介 主任研究員

 

石破内閣が「人口減少や、東京圏への一極集中の流れを変えるまでには至らなかった」とした
「地方創生2.0基本構想」の閣議決定から約半年後、高市内閣が「地方創生に関する総合戦略」を閣議決定、「強い経済」の実現を強く打ち出した。
「まち・ひと・しごと創生法」の成立から10年が経過するなか、地方創生の立ち位置、目指すべき方向性などについて、日本総合研究所の藻谷浩介主席研究員に聞いた。

日本総合研究所 藻谷浩介 主任研究員

―― 地方創生をめぐる現状をどのように見ていますか。

地方創生は、日本の政治において重要項目になっていないと感じています。つまり多くの人は関心がない。地方創生について「私には関係がない」もしくは「関係はあるが無理ではないか」に分かれているような気がし、本気で期待している人が非常に少ないと感じています。

地方から撤退すればよいと言う人もいます。住みたい人が住むのは勝手だけれども、そこにお金をかけるなという考え方です。今後、こうした地方撤退論が強まっていくと思います。

一方で、地方創生の予算が現場まで降りてきません。今、非常に多くの謎の地方創生会社やスタートアップ企業がありますが、拠点を東京に置いている企業が多い。自治体に予算を与えても、これら東京のコンサルタント会社に丸投げし、結局、東京にお金が帰ってくるシステムになっているのです。

―― 地方創生か地方撤退かという根本的なご指摘ですが、実際、一丁目一番地とされた人口減少への歯止め、東京一極集中の是正は進んでいません。

地方撤退はあり得ない、国策的に考えると東京一極集中は絶対にやめた方が良い。さまざまな元凶が東京一極集中にあることは明らかで、人口集中と予算の集中、税収の集中を改め、最初から地方にお金を使わせた方が良い、そういう結論になるのは当然です。

集中にはメリットがない。東京にしか良い仕事がないとは昭和の伝説、いわばフェイクニュースです。東京で働いている人の仕事の9割は、どこの地域にもある仕事です。飲食業や配送業は東京にしかない仕事ではなく、東京一極集中を是正して全国に人が散らばれば、それらの人の数にあわせて均等に分散するでしょう。

一方、集中のデメリットの最たるものが地震に対するリスクヘッジです。賢い企業は東西に拠点を置いています。東京にしかないというのは明らかにおかしい。米国でワシントンが潰れても国は滅びないし、シリコンバレーがなくなってもGAFAの拠点は他にもある。日本のようにすべて東京に集中させるような国は韓国だけです。大地震が起きる確率は100%です。局所的にはどこででも天災は起きるわけで、国全体で考えて分散構造にすべきです。

もう一つの人口減少について、その理由は少子化です。私はその元凶は東京だとずっと以前から指摘してきました。これだけ少子化対策を行っても出生率が1を切っている東京に若い人が集まれば減るのが当たり前です。

―― 一極集中の是正策として二地域居住や関係人口増の取り組みが進み始めました。

私は、間もなく熊本に移住します。東京には頻繁に来ますが、基本的に東京に住まなければならない理由がありません。そもそも熊本と東京は飛行機で1時間半しか離れていません。米国がベネズエラを攻撃した時、トランプ大統領はフロリダの自宅でインタビューに答えていました。空港まで行く時間を考えたら、ニューヨークから5~6時間はかかります。日本だったら、この緊急事態にフロリダにいるの?となるでしょう。

私が熊本に移住するというと「田舎に引っ込むのですか?」、「色々と不便でしょう」といった反応をされる。熊本は、はるかに住環境が良く、いくらでも仕事ができるのにです。そうした感覚自体がおかしい。そういうことも含めて、日本の地方創生はまだ入り口にさえ立っていない。

要するに、野球だったら長嶋・王だ、と思っている人は大谷には行きつきません。イチローや松井の世代を通り過ぎ、その延長に大谷が出てくるのです。同じように、団塊ジュニアの世代である50歳代が中心になってくると相当世の中は変わるでしょう。実業家の堀江貴文氏は六本木ヒルズを出て北海道に住んでいます。例えば、神戸は世界的に見ても非常に良い街で、食事の水準は高く自然も豊かです。阪神淡路大震災が起こったので、南海トラフを除けば大地震が起きる心配もない。しかし、神戸の優秀な人は灘高を出て東大へ行く。この得体の知れないメンタリティがいつまでも続くはずはありません。

東京に住む理由はなく、仕事で訪れた時はホテルに泊まればよい。こうしたライフスタイルは間違いなく増える、増えなければおかしいのです。日本は非常に良い所が多い。二地域居住はより広がっていくでしょう。二地域居住あるいは三地域居住と、もっと日本国土を広く使って、ゆったりとした時間を過ごす人がもう少し目に見えて増えてくると、地方創生に対する腰の入れ方も変わってくると思います。

人口が減るなか、二地域居住の広がりにより東京は縮小しますが関係人口は増える。こうした形へゆっくりと構造が転換していくでしょう。それは1~2年という短期ではなく、世代交代と共に進んでいく。これまで企業で役員になって、都心に戸建て住宅やタワーマンションを、と目指してきたが、その子どもたちの世代になり「バカバカしいよね」と思う人がどれだけ出てくるかです。

ただ、それではおそらく間に合いません。南海トラフ地震が発生する確率は30年以内に80%、10~15年以内に発生するという説もあります。関西圏が打撃を受けるとさらに東京集中が進むかもしれません。ところが首都直下型地震も100年を過ぎたので発生する確率が高い。また、富士山もそろそろ噴火するのではないかと言われています。東京に人が集中し膨れ上がったところに首都直下型地震が発生する、富士山が噴火するといったことが起こる可能性が十分あり得るのです。

日本の田舎は効率が良く、世界的に見ても便利でなんでもある

―― 現実問題として地方から東京へと人が集中するなか地方の活力が失われており、新たな「地方創生に関する総合戦略」では「強い経済」を前面に打ち出しました。


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