New   2025.11.4

テダソチマ 空き家の解体時に出る廃材を活用 再生品の販売収益を解体費の補助へ

 

福島県須賀川市でまちづくり事業などを行うテダソチマ(大木和彦 代表取締役)は、地域の空き家を解体するときに出た廃材を再利用することで、解体費用の負担を軽減する「すかがわ廃材プロジェクト」を始動した。

空き家には様々な状態のものがあるが、管理不全一歩手前の空き家は買い手が付かず、再流通が難しいケースも多い。その際に大きなネックとなるのが、高額な解体費用の負担だ。

テダソチマが主宰する「すかがわ廃材プロジェクト」は、解体予定の空き家から再利用できる廃材を回収し、加工・製品化することで、販売収益の一部を解体費用の補助に使用することを目指す取り組みだ。

プロジェクトでは、空き家所有者に通常の解体費に1~2割程度を上乗せして支払ってもらい、その費用の範囲で資材回収と加工を実施。新たな製品として付加価値を高めたうえで販売し、収益の一部を所有者に還元するスキームを検討している。上乗せ分は解体に手間がかかるため。例えば、住宅に使われている建築資材をそのまま活用する場合、住宅を組み立てるときと全く逆の工程になるように手順を踏んで解体する必要がある。その場合、通常の解体から約3倍の費用が掛かるとされている。プロジェクトチームでは、現行の解体工程を大きく変えずに進める方針だが、それでも多少の手間が増えるため、1~2割の上乗せすることを考える。

今回対象となるのは、須賀川市内の築60年以上の木造2階建て住宅(延べ約300㎡)。現在、解体と資材回収が進行中で、年明け以降に回収資材を使ったサンプル商品づくりに着手する。

とはいえ、実際にその範囲でどこまで対応できるかは未知数だ。1棟の空き家からどれだけの廃材が回収でき、加工品としてどの程度の売上が見込めるのかを検証することが今回の肝となる。そこで、産業廃棄物の総重量と再利用予定の木材重量を測り、使える廃材の量を把握。さらに、再利用予定の廃材は写真で記録し、どのような製品に再生したのかをリスト化していく。販売価格や収益もまとめ、まずは人件費などを除外して「解体費に対してどの程度の収益が見込めるか」を明らかにすることを最低限のゴールとしている。そのうえで、プロジェクト完遂後にスキームを再検討する予定だ。

解体する築60年の物件

プロジェクトメンバーは、テダソチマをはじめ、建築資材のリユースに詳しいReLink(本多栄亮 代表社員)、解体事業者のミライアーク(笹沼佳克 代表取締役)、県内で家具や雑貨などを制作する専門家3名――レントウトア・ファニチャーアンドファブリックの伊藤寛樹代表、かわらまち木工舎の中山由紀子代表、伏見屋ガラス店の三保谷泰輔代表――が加わる。普段はそれぞれが独自に空き家や廃材の課題解決に取り組んでいる専門家が、チームとして連携することで新たなビジネスモデルの創出を目指す。参加メンバーはいずれも、空き家解決や廃材活用に強い思いを持つ。例えば、廃材回収に積極的な解体業者は少ないが、ミライアークはメンバーの要望に応じて必要な廃材を残す形で解体しており、この協力体制がプロジェクトの根幹を支えている。再生品の販売は、まず各専門家が持つ販売ルートを活用しつつ、将来的にはプロジェクト全体としての販売チャネル構築を検討中だ。廃材を活用した商品をどのようにブランディングし、流通させるかが今後のテーマとなる。木材だけでなく、ガラスや金属部品など空き家に存在するあらゆる素材を対象とし、建材以外にも食器や家具など、廃材の特性を生かした多様な製品に再生する方針だ。空き家から出る、現在では入手困難な資材を再活用することで、地域の伝統や価値を受け継ぎ、循環型社会の実現を目指す。

また、廃材を使ったDIY教室も開催予定。テダソチマと共にプロジェクトを進めるダイゴビレッジの木下亮 代表取締役は「地域の人に興味を持ってもらうきっかけをつくりたい」という。

空き家バンクの運営で見えた
解体できない空き家の実態


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