誰もが主体的にキッチンを選ぶ時代へ
阿古真理氏「日本の台所とキッチン 一〇〇年物語」(平凡社)
作家・生活史研究家の阿古真理氏は、著書「日本の台所とキッチン 一〇〇年物語」で、近現代の日本の台所およびキッチンの歴史を探るとともに、現代におけるキッチンの問題を提起している。
執筆を通して見えてきた日本のキッチンに対する考えを聞いた。
理想のキッチンを求めて1年3ヶ月
―日本のキッチンの歴史としても、住宅史としても読み応えのある本でした。あらためてキッチンというテーマに取り組んだ理由を教えてください。

私は、この15年ほど食文化を研究しているのですが、その中でスープ作家の有賀薫さん、料理人でレシピ文化研究家の伊藤尚子さんと出会い、2018年に3人で「新しいカテイカ研究会」という活動を始めました。その有賀さんが19年に「ミングル」というコンパクトキッチンを開発しました。950㎜角のテーブルの中央にIHの一口コンロを埋め込み、下に食洗機を付け、ダイニングテーブルも兼ねたものです。このキッチンを使い始めてから、有賀さんの夫は積極的に食事の準備や片付けをするようになったそうです。そうした友人の活動を横で見ていて、「では、私にとっての理想のキッチンとは何だろう」と考え、ノートに絵を書き始めました。
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