ナマズ様供応の錦絵/災害バランスシートがあっても

ナマズ様供応の錦絵

少々、不謹慎な話から始めてみたい。江戸は世界に類を見ない火災多発都市だった。八百屋お七の振袖火事(明暦の大火)、目黒の行人坂火事をはじめ大火と呼ばれたものはあきれるほどの数にのぼる。ただ、ここで今では口にすることはとても許されないが、火事は江戸の経済に大きな役割を果していた。つまり“復興”関連の事業だ。ひとたび大火となり、何千戸と焼失すれば復興の仕事は山とある。まず数年は食うに困らない。落語にこんなくだりがある。「ハチ公よ不景気だなぁ」「こう不景気じゃ、やりきれねェ、どうだい、ちょっと火でもつけようか」「馬鹿、今日は風が弱い、もっと西風でも強く吹いてからにしろ」―。

見たことのある人も多いだろう。ナマズが地震を起こすということで、職人たちがナマズを料亭に招いて飲めや唄えの大供応を催している錦絵だ。ナマズを取り巻いているのは芸者たちに大工、左官・屋根、そしてトビ職人など。皆ニコニコ顔で「オレたちにこんなに仕事をくれてありがたい。まぁ、飲めや」などの言葉が添えてある。


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