落語「千両みかん」/価格明解に
落語「千両みかん」
「千両みかん」という落語がある。『大商人の若旦那が病床についた。名医の診断は心深く憂うことを叶えてやること。それが出来なければ死を待つだけ。番頭が苦労の末に聞き出したのが「みかんが食べたい」。だが頃は真夏、どの八百屋に行ってもあるはずがない。それでも教えられ行き着いたのが蜜柑問屋。とっておきのみかんを真冬のうちに専用の蔵に閉じこめてある、という。半年ぶりに開けた扉。だが、積み上げたみかん箱の中身は腐敗、原形をとどめない。ただ、奥の箱に一つだけ、つややかなみかんがあった。「お値段は?」「千両です」「そんな法外な」。番頭は店に戻って大旦那に報告。大旦那は息子の命が千両で買えるなら安いものだと購入を即断。十両を盗めば首が飛ぶ時代に百人分の死罪と釣り合うみかん一つ。若旦那は大喜こびで、一房ずつ口へ。全部で十房。一房食べるごとに百両、二百両…と消えて行く様子を呆然と見守る番頭。七房を食べたところで、番頭に残り三房は両親と番頭さんに、と手渡された。番頭はつくづく考える。近いうちに自分がのれん分けしてもらっても旦那からの独立資金は三十両か五十両だ。若旦那がくだされたみかん一房百両にはとてもおよばない。番頭はみかん三房を持ってどこかに消えた―』
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